統合失調症 schizophrenia

 

定義

ICD10(抜粋)

「分裂病性の障害は、一般的には、思考と知覚の根本的で独特な歪曲、および不適切なあるいは鈍麻した感情によって特徴づけられる。

認知障害もあるが、意識の清明さと知的能力は保たれる。

この障害には、正常な人間に個性・独自性・自己方向性といった感覚を与えるもっとも根本的な諸機能の障害が含まれる。

説明的な妄想の発展、幻聴、知覚障害もみられる。

発病初期の困惑、日常的状況が患者だけに向けられた悪意との確信も出現する。

特徴的な思考障害もみられる。

気分の浅薄さ、気まぐれ、不適切さも示される。

両価性と意欲障害が緩慢さや拒絶や昏迷として現れる。

緊張病性症候群も出現しうる。

発病は急性で、重篤な行動障害を伴っていたり、潜行性で奇妙な考えや振舞いが徐々に進行したりする。

障害の経過もきわめて多様であり、決して慢性化や荒廃が避けられないわけではない。

ある割合で完全寛解、あるいはほぼ完全寛解といった転帰にいたる。

男女同程度に罹患するが、女性は発病が遅い傾向がある。」

 

太田先生によると…

統合失調症とは思春期青年期に好発する人格、思考、感情、行動、興味関心、対人関係に障害をきたす疾患。いわゆる陽性症状〈妄想、幻覚、思考障害、自我障害など〉、陰性症状(引きこもり、感情の平板化、無関心など)、対人関係(偏狭かつ極端な敏感さ)によってあらわされる。

シュナイダーによると診断は経過による診断、症状による診断、関係による診断とそれぞれの見地においてなされる。とされている。

 

 

 

 

 

 

 

成因

1)    過程モデル:未知の脳内の原因で、主として遺伝因に規定された内因によって病的過程が自立的に進行して発病に至ると考えるのが過程モデルである。

 

2)          脆弱性・ストレスモデル

 

3)    神経発達論的成因仮説:生育早期に軽微で静止的な脳損傷が生じた場合、その脳部位があまり機能していない若年の時期にはそれに伴う機能異常は顕在化しない。しかし、正常な神経発達・成熟の過程としてその脳部位の機能が発現される成人初期になると、はじめてそれに伴う機能異常が顕在化し、その病理的役割が解発され、臨床的に発病と認められる。

 

4)    遺伝素因

 

病前性格

·        精神分裂病患者には特有の病前性格がみられることが多い。

·        非社交的、無口、内向的、控え目、真面目などの内閉性を基本とし、敏感性と鈍感性を種々の程度に合わせ持つ分裂病質schizoid(クレッチマーKretschimer)であり、遺伝的に規定された発病脆弱性を反映している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

統合失調症の診断基準

DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院.高橋三郎ら訳 より引用

A. 特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、各は、1ヶ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在。

(1) 妄想

(2) 幻覚

(3) 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)

(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動

(5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如

妄想が奇異なものであったり、幻聴が患者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準あの症状1つを満たすだけでよい。

B. 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。

C. 期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1ヶ月(または治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(たとえば、風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D. 分裂感情障害と気分障害の除外:分裂感情障害と気分障害、精神病性の特徴を伴うものが以下の理由で除外されていること。

(1) 活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症している。

(2) 活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い。

E. 物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)、または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

F. 広汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、精神分裂病の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる。

 

 

 

症状

 

<表現面>

 病初期・増悪期

   ・周囲との奇妙な違和感

   ・周囲からみて、様子が違う

             よそよそしい

             ふさぎこんでいる

             部屋に閉じこもるといった様呈

   ・不眠

   ・周囲に対する過敏な反応

   ・猜疑心が強くなる

   ・口数が減る

   ・果てには昏迷状態

   ・意味不明の言動

   ・それまでに見られない粗暴な行為

   ・理由のわからない突発的な家出・自殺

   ・特有な体験有り

       人をよせつけず、硬い冷たい顔つき(プレコックス感)を感じそれを直感的

       に感じられるようになる。

 

 慢性期

   ・ADLや周りの出来事への関心が乏しくなる

   ・何もしないで家の中にいるようになる

     → 他者との関係が過敏で傷つきやすくなり、外出、他者との接触をさけ、自

       分の内に閉じこもろうとする。

   ・接触・内的体験・幻聴による独り言・独笑は多い

   ・「荒廃した状態」という患者は減少

 

   社会・家庭生活が可能な場合

    考え方が一方的

    譲らない頑固さ

    協調性のある行動がとれない

 

 

 

<精神症状>

 (感情)

 急性期・増悪期

   ・他人を寄せ付けない

   ・不安で緊張した硬い表情

   ・おびえる

   ・感情の表現がぎことなくなる(自覚症状あり)

 慢性期

   ・感情の表出ますます乏しくなる

   ・不機嫌で人を寄せ付けない

   ・児戯的爽状を示す

 (思考)

   ・思考の形式・まとまりが悪くなる

   ・論旨のつながりが不明瞭

   ・周囲に理解できず、何をいいたいのか伝わってこない(連合弛緩)

   ・増悪期は自覚症状あり

   → これらが進むと滅裂思考・言語新作となる

 (意志発動面)

 急性期・増悪期

   ・意志発動低下より

      ADLできなくなる

      極端な場合、昏迷状態や無言・拒絶

      ある動機に対し正反対の動機が出現より、初めの動機を実行に移す事を妨

      げられる。これは表現面では行為の途絶である

   ・意志発動亢進により

      行動にまとまりをかいた突飛な行動を示す

 慢性期

   今までの症状は薄れ、意欲低下の状態

   極端な場合、終日自室で何もしない

   無為・自閉生活

 

 

 

 

 

 

<内的体験>

 幻聴

   ・人間の声が多い

   ・行動が支配され、拒絶や自殺の原因につながる

   ・対話性幻聴

       他人の声が自分に呼びかけてくる

       他人と他人が自分のことを話している

     → これに応答の独語がある(幻聴に語り掛ける)

 

 幻聴の内容

     干渉や悪口が多い

     独笑

     自分の考えが人に筒抜けな気がする

 

 類似の症状

     思考化声

     本を読むと声が先に読んでしまう

     被害的意味付けをもった体感幻覚

     幻視は少ない

 

 妄想

   被害妄想 関係妄想 注察妄想 迫害妄想 など被害的な内容が多い

   噂したり、被害を与えてくるものは他人という特徴

   周囲へ疑い深くなり行動面の問題出現

  形式面

   病初期

     「周りの雰囲気が変わった」「周囲がよそよそしい」といった妄想様気分

     妄想着想 心の中の考えや確信がふと思い浮かぶ

     妄想知覚 ある知覚された現象に妄想的な意味付けをする

 

 自我意識障害

   病初期

     自己と外界の間に不気味な対立が生じていると認識される

     作為体験(させられ体験)

      他者の何者かによって自己の行動があやつられ、させられてしまうと感じる

 

  思考面

     思考吹入 : 外から考えが吹きこまれる

     思考干渉 : 他者によって考えが干渉される

     思考伝播 : 自分の考えが不特定多数の他人に知れわたってしまう

 

 

 急性期と慢性期での精神症状の相違

  急性期 : 活発な幻覚や妄想に支配され、誰の目にも異様と見える精神症状や

         行動が特徴

 

  慢性期 : 思考の脈略は断片的となり、何もせずに終日ぼんやりしている無為、

         あるいは自分の殻に閉じこもる自閉と呼ばれる様体が特徴

 

*統合失調症では、急性・増悪期と慢性期ではかなり症状が違っている。

  その違いをはっきりと認識する事が大切である。

 

特徴

感情鈍麻と敏感性の混在が統合失調症の感情障害の一つの特徴

 

統合失調症にない症状

 意識障害

 身体症状およい検査所見の異常

 

統合失調症の病型

1.      単純型分裂病

     発症年齢 : 20歳前後に緩徐に発病し、徐々に進行

     基本症状 : 陰性症状

 

   陰性症状は徐々に深刻化し、対人関係は貧困化し、社会的引きこもり、社会的孤立が現れ学業面および職業面での機能低下は顕著となってくる

 

2.      破瓜型

発症年齢 : 20歳前後の青年期に発症 緩徐 進行性

      基本症状 : 能動性減退 感情鈍麻 対人接触の障害

      予後    : 不良 高度の人格障害に陥る

   感情の平板化、独語 空笑 しかめ顔 かい奇的行動 気まぐれ行為 徘徊 児

   戯的爽快

   はっきりとした寛解期がなく慢性の経過をとる

 

  DSMWでは 解体型

 

3.      緊張型

      発症年齢 : 20歳前後の若年に急性に発症

      基本症状 : 意欲・行動面の異常からなる緊張病症候群を呈し、病勢増悪

               を繰り返し 周期性の経過をとる

 

      緊張病症候群

          緊張病性興奮  了解不能な運動暴発 衝動行為 自傷行為

          緊張病性昏迷  一切の自発運動がない カタレプシー

          急性致死性緊張病  激しい自律神経症状を示し、極期には意識が

          混濁し死の転帰をとる原因不明の急性神経病

 

4.      妄想型

     発症年齢 : 30歳以降

     基本症状 : 顕著な妄想 幻聴 認知機能や感情は比較的保たれている

   被害妄想が発展し、首尾一貫した一つの主題を中心にまとまった妄想構築を

   形成する。

宗教団体を形成して、自らを救世主と称したりする。

 

5.      残遺型分裂病

     統合失調症を経過した後に陽性症状が消退し、陰性症状が前景にたつ慢

     性期の精神分裂病

 

評価方法・治療方法

 診断 病歴聴取 : 病前の性格の特徴 生活歴 既往歴 家族歴

     面接および行動観察 : プレコックス感 だらしない身なり 興奮 無言無動

                     異様な姿勢

 

 鑑別診断

       症状を含む器質性精神障害

       器質精神病

       脳炎による精神運動興奮が緊張病

       脳炎後遺症の寡動 運動減少などのパーキンソン症状や幻覚妄想型精

       神分裂病

       前頭葉腫瘍による自発性欠如 抑制欠如 高等感情鈍麻などが破瓜型

       分裂病

       症状精神病

           SLE

           クッシング症候群   意識障害がなければ分裂病

       精神作用物質使用による精神および行動の障害

         覚醒剤

         コカイン

         フェンシクリジン

         アルコール幻覚症

       てんかん

       気分障害

         統合失調症にみられる気分障害は主要症状に比べて持続は短い

 

 

治療方法

    薬物療法主体

       抗精神病薬の治療効果

        鎮静効果

        抗異常体験(抗幻覚妄想)効果

        賦活(抗自閉)効果

 

       急性期

         デカン酸ハロぺリドール

         デカン酸フルフェナジン   を注射

          副作用 : パーキンソン症候群(錐体外路系)

          →抗パーキンソン薬を併用

         ブチロフェロン誘導体

         フェノチアジン誘導体

          → 鎮静作用 抗幻覚妄想作用

         ベンゾイソキサゾール誘導体 リスペリドン

          → 陰性症状にたいする効果大 今の薬物療法の中での主体となっ

             ている。

  作業療法 : 急性の症状が消退してから、社会復帰のための生活指導

合併症

   なし

   → 精神病に関しては合併症はない

      統合失調症は精神病のなかでも最も重い病気であるため、その他の病気

      の合併症という概念もありえない

 

予後

    完全寛解 25

    不完全寛解 25

    軽快  25

    未治  25

 

    予後に影響する因子

      発病の状況 : 急性に始まるものは緩徐に発病したものより予後がよい

                急性発症でも最初から思考障害が顕著なものは予後不良

      発症年齢 性差  : 若年発症 男性の方が予後は悪い

      病前性格 : 定型的な分裂気質 分裂病質のものは予後が悪い

               循環性格や協調性性格が混合していると予後は良い

     発病から治療までの期間 : 発病後早期治療は予後がよい

     知能 : 高いものほど予後は良い

     病像 : 陽性症状の持続の短い方が予後が良い

           気分の障害を伴う場合もよい

           エピソードの間欠期に機能状態が良いものが予後が良い

           残遺症状が少ないほうが予後が良い

     脳の構造 神経学的機能 : 構造に異常がないほうが予後が良い

     家族歴 : 気分障害の家族歴があるものは予後良い

            精神分裂病の家族歴があるものは予後悪い

     病型 : 単純型 破瓜型 予後悪い

           緊張病 寛解しやすい

           妄想型 その中間

 

  症状が精神分裂病として非定型てきなものほど治療効果はよく、基礎症状の著明な定型的なものほど予後は悪い

 

 

 

おまけのコメント

 

分裂病質(分裂病質人格障害、schizoid personality disorder)とは

 分裂病の無関心、無感動、疏通性のとぼしさが薄められた形であらわれた状態とい

える。何をしても喜びや感動がとぼしく、他人との交流も少なく、たとえ家族とも親密な関係を持とうとしない。称賛にも批判にも関心がなく、社会的習慣にも超然としている。せまい範囲で立派な仕事もするが、人づきあいを好まず(気をつかいすぎて疲れるためではなく)、淋しいとも思わない。

分裂気質とはこのような人でもう少し軽い、健常のひとの気質のこと。

 

それに対し、循環気質や協調性性格の方が関心、関係性などにおいて気質的にいいのは当然の事でしょう。だから分裂病質や、分裂病気質の人より、予後が良いといわれています。