10章.「無輸血手術」を読んでの感想。



   これまで何度か引用させていただいた「無輸血手術」ですが、詳しく紹介させていただきます。まず著者

ですが、大鐘稔彦さんと仰る外科医の先生で「エホバの証人」の手術を無輸血で67例手がけた方です。この

本ではご自分がどのようにして医者となったか、そしてどのようにエホバの証人の手術に関わるようになった

か、そしてエホバの証人の患者の症例をいくつか挙げて、どのように無輸血で行ったかがつぶさに書かれて

います。


   まず最初の読後の感想は「エホバの証人の手術は外科医にとって大きな精神的プレッシャーがあるの

だなあ」ということでした。どんなに誓約書を貰っていたとしても、やはり失敗はしたくないというのは人として

当然のことであろうし、また医学の道にいる者としては至極当然のことであるわけで、大変なご苦労だったこと

だろうと思った。そしてこれだけの手術数を重ねられたのは、ひとえに著者の努力の賜物で素晴らしいことだ

とも思いました。普通、外科医というのは専門があり、それ以外の手術はなかなかしないものだそうなのです

が、彼はいろんな手術部位に対応するため10年以上、他の大学病院に毎週通い勉強されていたそうです。


   著者がどうしてエホバの証人の手術をそれだけ行うことができたか、それにはいくつか理由がある。まず

第一に彼は外科医であるのと同時に院長であったため、手術を行うかどうかの判断や責任を彼が下すことが

できた、という点を挙げなければならないでしょう。事実、彼はある事情により他の病院へと移らざるを得なく

なるのだが、その病院ではエホバの証人の手術を二度断っている。それは移動した病院では一外科医にす

ぎなかったので責任を取れる立場になかったためです。(手術は外科医だけでは行えない。麻酔科の協力な

くしては決して行えないからである)


   理由の二つ目はこの本の156頁に書かれているので引用したいと思います。

多くの医者が”証人”の手術を断る理由は次のいずれかであろう。

(1)輸血なくしては絶対的に不可能な手術である。

(2)輸血なしでも凌げるかもしれないが、絶対に大丈夫だとは言い切れない。その”万が一の時”に輸血が出

きないというのでは手術に踏み切れない。

ここ文章で分かるように、多くの医者は(2)の状況をもっとも嫌う。なぜならば打てるべき手段があるのに、そ

の手段を使えずに患者が死んでしまうことは絶対に避けたいからです。しかし、大鐘医師は違いました。彼は

(2)の手術であっても引き受け、その多くを成功させることができたというわけです。


   彼は本の最後の方で「エホバの証人は自前の病院と外科医を育てるべき」だと主張しています。現実の

問題としてエホバの証人を受け入れる病院はまだ少なく、いろんな軋轢を生じさせているので、それならば自

分たちで病院を造り、信者の外科医を持ち、そこで手術すればよかろう、というわけです。多くの医者は同じ

ように感じていますし、私もそうあるべきだと思います。少なくともそうすれば緊急手術以外は問題はなくなる

わけで、一刻も早く協会は海老名ベテルの敷地内に病院を建てるべきではないでしょうか? 大学進学に関

しては問題はなくなったのですから、優秀な若者を医学部に進学させることも必要でしょう。その面において

寛容な見方をして欲しいと節に願います。


   さて、少し前の文で、大鐘医師が現在、ある事情でエホバの証人の無輸血手術を行っていない、という

ことを書きました。ある事情、と言葉を濁したのには訳があります。それはこの本をぜひ買ってお読み頂きた

いと思います。すべての証人はこの本を読むべきだと思います。そうすれば現在、自分たちが置かれている

立場を良く知ることができるであろうと思いますし、大鐘医師がエホバの証人の手術を行わなくなった理由が

はっきり分かるからです。


   
「無輸血手術」 大鐘稔彦著   さいろ社 ISBN4-916052-09-9 ¥1500




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