第4章。ヘモグロビン値(Hb)について



  ヘモグロビンは赤血球の大部分を占め、身体中の隅々へ酸素を運ぶ役割があることは前述した通りです。

通常、100mlあたり15gほど含まれています。これをヘモグロビン値15、つまり、Hb15/dlと表記されます。

少し前まではHbが10を切ると輸血をする目安だと言われてきましたが、現在の医学ではもっと少ない数値

でも、場合によっては手術に踏み切れると考える医者も少なくありません。


  しかし、ものみの塔聖書冊子協会(以下は協会と略する)の出版物には、かなり極端な事例をもとにヘモ

グロビン値が2〜4であっても十分に無輸血手術が行えると書いてある場合が少なくなく、ほとんどの証人たち

はそう信じています。例えば「血―命にとって不可欠なもの」 と題する協会の小冊子には次のような引用があ

ります。「ある権威者たちは,ヘモグロビンの量が100cc中2ないし2.5gまで下がっても受け入れられる,と述べて

いる。……健康な人なら,赤血球細胞全体の50%を失っても耐えることができ,血が幾らかの期間にわたって

生じるなら,ほとんど全く症状は現われない」―「輸血の技術」,1982年。  確かにHbが2まで下がったとしても

死なずに済んだ術例というのはあるようです。しかし、・・・で省略されている前後の文脈をよくご覧ください。「ほ

とんど症状が現れない」のは「赤血球細胞の50%を失った人」であるのですから、Hbの値は通常の半分、つ

まりHb7.5の人だということなのです。この点を決して忘れないでください。


  多くのエホバの証人たちは、「たとえ出血が多くても、それは生理食塩水または電解質輸液などの輸注

によって補われるので大丈夫だ」と言います。この主張を医学的に考察してみることにしましょう。


  術中に出血しても、その分を輸液でどんどん補っていくとしましょう。普通の電解質輸液は25%程度しか血

管内にとどまらないため、身体中にむくみが見られるようになります。Hb4を切る状態では両手はグローブの

ようにパンパンの状態になるそうです。 次に顕れる症状は心電図上の波形の乱れです。なぜならば限界を

越えて血液が薄くなったために酸素不足になってしまい、心臓の動き自体が低下してしまうからです。そうなっ

てしまうと最終的には脳内へ酸素が行かなくなりますから、無酸素脳症による脳へのダメージは計り知れない

ものとなってしまいます。また血液内の乳酸値もかなり上がってしまいますから、血液は酸性になってしまい、

心臓の動きはさらに悪くなってしまいます。こうなると悪循環です。 これを乗りきれるだけの心臓の持ち主は

そうはいないと思われます。特に高齢の患者の場合は文字どうり「命取り」になってしまうのは容易に想像で

きることです。


  上記の協会の引用文、Hbが2〜2.5の状態というのは「かろうじて生きているだけ」の状態であり、何の弊

害もない状態であるということがよくお分かりになったのではないでしょうか?


  また、デキストランやヘスパンダーといった輸液に全くの副作用がないわけではないことも忘れないでくだ

さい。それらは1000mlを越えて使用すると腎毒性や出血傾向が見られるというデメリットもあります。さらには

少量投与であってもアレルギー反応によるアナフィラキシー・ショックが起きる可能性があります。輸血と同様

「絶対安全」なものではないのです。デキストランやへスパンダーといった代用血漿と言われる輸液は循環

血液量を確保するのにはかなり効果があるものです。しかし、それらは貧血初期の軽度の対症療法であるの

で、必ずしも血液の代わりになりうるものではありません。それらの輸液はあくまで血漿の一部分を代用して

いるに過ぎないからです。


  ヘモグロビン値がかなり低くても、手術は成功する場合もあります。しかし、この数値が低ければ低いほど

貧血状態になるわけですから、手術は難しいものとなってしまう、ということを覚えていていただきたいと思い

ます。

 

 

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