第1章。 現代医療において輸血を医者はどうみているか?

 

  「医者は手術の際に簡単に輸血をしようとする」、この言葉はエホバの証人からよく聞かれる発言の一つ

です。果たしてそれは真実なのでしょうか? 現代医学においてそれは正確な情報なのでしょうか?確かに

以前は安易に輸血をしてしまうという傾向があったようです。輸血の単位数が多い病院ほど、難手術を行って

いる病院なのだと見なす傾向も少なからずありました。しかし、その傾向は輸血に関しての副作用や感染症、

またそれらを避けるための技術の向上などにより、その認識は改められていると言えるでしょう。


  輸血ハンドブック(1999)は輸血のコンセプトと題し次のように述べています。「輸血の安全性は飛躍的に

向上したが、なお輸血は内在的な危険性を蔵しているといえる。したがって医療者たる我々のとるべき道は

相対的無輸血であろう」(相対的無輸血とは、輸血の効果と危険性を天秤にかけて、なおやむに止まれぬ必

要性が残る場合にはこれを果断なく行うこと) 


  また「踊る麻酔科最前線」というHPの「絶対安全な医療行為や薬は、まず存在しない」という項目では次

のように述べられています。「どんな医療行為にも、ある程度の危険(必ずしも命の危険という意味では

ありません)は存在します。水、酸素、ブドウ糖、塩など、人が生きていくために絶対必要なものであっても、

場合によっては毒になります。従って、医学とは予想される障害を、いかに少ない危険で乗り越え

るかということを研究する学問です。 「寿命による死」を除けば、どんなことも「絶対」とはなかなか言えま

せん。癌を放置しておいても「絶対治らない」とは言えません。「治る確率は非常に低い」としか言えません。

出血性ショックで死にかけている人に、「輸血すれば絶対助かる」と言えば嘘になります。「輸血しなければ、

99%死ぬでしょう。輸血すれば死ぬ確率は30%くらいになるでしょう。輸血そのものによる死亡率も0%で

はありません。」というように確率でしか表現できません。医療の本質は、予想される死の確率を、で

きるだけ低下させるための行為であると言えるでしょう。


  また、
兵庫県立淡路島病院麻酔科の外科的輸血に関する考えと内容紹介というHPで五嶋良吉医師

は「輸血には好ましくない副作用があります。従って不必要な輸血はするべきではありません。

しかし輸血の副作用よりも輸血の効用が上回る場合には輸血する事を躊躇すべきではないと考えます。

と述べています。

 

  以上の引用からも分かりますように、医者は輸血したほうが簡単だから、また安易に輸血を行っているわ

けではありません。現代医学においては、できるだけ輸血をしないように手術するというのがその見方だとい

うことが良く分かることと思います。


  ですから「医者は輸血をどうみているか?」という問いに対しては「出来るだけ使いたくないと考えている」と

いうのがその答えとなることではないでしょうか。

 

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輸血という学問において語る際に一つだけ知って欲しいことがあります。それは他の医療の分野よりも、この

10年の進歩が目覚しい分野である、ということです。’80年代には無理だったことでも現在は可能となってい

ることが多くあります。エホバの証人の出版物の医学面での引用は残念ながら10年、いやそれ以上のもの

が少なくなく、そのため現在の輸血学を語るには難があるといわざるを得ません。ひどいものになると17世紀

の人の文章の引用(聖書から論じる)などもあります。ですから、この際、新しい情報をぜひ取り入れていただ

きたい、そう筆者は願ってやまないのです。

 

 

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