B型肝炎の治療


虎ノ門病院消化器科部長  熊田博光


B型肝炎のうち、特に注意が必要なのは、母子感染から起こる慢性肝炎です。なるべく早くウイルスを発見して、肝臓の状態がよいうちに治療を受けることが大切です。


B型肝炎の特徴


B型肝炎ウイルスが発見されたのは、今から約30年前です。その後ワクチンが開発されたことから、新たな患者さんは激減しました。30年前は約300万人といわれたB型肝炎ウイルス(HBV)のキャリア(ウイルス保持者)は、現在では約150万人以下といわれています。

B型肝炎は、B型急性肝炎とB型慢性肝炎に分けられています。

B型急性肝炎は、そのほとんどが性行為による感染です。感染者は、年間約10万人といわれています。症状はあまりありませんが、体がだるい、疲れやすい、食欲がなくなる、尿の色が濃くなる、黄疸が出るといった症状が現れる場合もあります。

しかし、数ヶ月後には自然に治り、急性肝炎から慢性肝炎に移行することはありません。急性肝炎が、劇症化して(劇症肝炎)、命を落とすことがありますが、これは非常にまれなケースです。

問題なのは、B型慢性肝炎です。B型慢性肝炎は母子感染で起こります。HBVのキャリアである母親の血液が、出産時に子供の体内に入ることで、感染するのです。

3歳以下の子供は、体内に侵入するウイルスや細菌を排除する免疫の仕組みが未発達なため、ウイルスに感染してもしばらくは発病せず、キャリアになります。それが成人を迎えた頃から、ウイルスの活動が活発化して、慢性肝炎を発病します。

HBVキャリアの約70%は、自覚症状のない無症候性キャリアとして、一生を大過なく過ごします。
ところが、残りの約30%は、ウイルスの活動性がずっと保たれて、慢性肝炎が徐々に悪化し、平均45歳ぐらいで肝硬変に、50歳くらいで肝臓がんになります。

しかし、今から約10年前にB型肝炎ワクチンが開発され、HBVキャリアでHbe抗原陽性の母親から生まれた赤ちゃんに、ワクチンの接種が行われるようになったので、現在ではB型肝炎に感染する子供はいなくなりました。

ですから、今後問題になるのは、生まれたときにB型肝炎ワクチンを接種されていない中学生以上の人達ということになります。



検査―血液検査でキャリアかどうかがわかる


慢性肝炎は、ほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断や人間ドックなどで、GOTやGPTを調べる血液検査を受けて、初めて肝臓の異常に気づくことが多いです。

GOT・GPTとは、肝細胞に含まれる酵素で、肝炎などで肝細胞が破壊されると、血液中に大量に放出されます。そのため、血液中のGOTとGPTの値を測定すれば、肝機能が正常かどうかがわかります。

しかし、GOT・GPT値が高いというだけでは、B型慢性肝炎にかかっているかどうかまでは判断できません。ウイルスの有無を知るには、血液中の抗原・抗体を調べる検査が必要です。

B型肝炎ウイルスは、表面がHBs抗原で覆われ、その内側の核となる部分にHbe抗原があります。
血液を採取して、これらの抗原を調べることでウイルスの有無がわかります。さらに抗体を調べることで、肝炎の状態や、感染力の強弱がわかります。

1. HBs抗原が陽性の場合:現在、B型肝炎ウイルスに感染していること をあらわします。

2. HBs抗体が陽性の場合:過去にB型肝炎に感染したが、現在は免疫ができ、もう感染しないことを表しています。

3. Hbe抗原が陽性の場合:感染力の強いウイルスを保持し、肝炎が悪化する危険性があることを示してます。最も注意を要する状態と言えます。

4. Hbe抗体:ウイルスが減少し、感染力が弱くなっている状態といえます。

治療


B型慢性肝炎の治療の目的は主に、病気の進行を抑えて、肝硬変や肝臓がんへの進行を防ぐことにあります。現在行われている治療法は、大きく分けて次の3種類です。

1. ウイルスの増殖を抑える−インターフェロン療法

ウイルスの増殖を抑えて、肝炎を根治させる治療法です。
しかし、B型肝炎の場合、C型肝炎に比べて体内のウイルス量が非常に多いことから、インターフェロンを使っても、ウイルスを排除することは難しく、C型肝炎ほどの効果は望めません。

しかし、ウイルス量が少ない人に対しては有効です。また次に挙げるステロイド薬より肝炎の重症化を招く危険性が少ないので、治療法として、第一に検討されます。
通常は、インターフェロンを約1ヶ月間、連日使用する方法がとられています。

2. 免疫力を高める

薬物で免疫力を高めて、ウイルスの増殖を抑えようという治療法です。免疫力を高める方法には、次の3種類があります。

1) ステロイド・リバウンド療法

ステロイド薬には、免疫の働きを抑える作用があります。これを1ヶ月間集中的に使用して、ある程度免疫力を抑えたと事で、使用を中止します。
すると、今まで抑えられていた反動で、免疫力が急激に高まり、肝炎ウイルスを攻撃します。

つまり、抑えつけた反動で免疫力を増強させ、ウイルスを闘わせて治療しようというものです。ただし、免疫力が強くなりすぎると、かえって肝炎の重症化を招き、危険な状態に陥ることがあるので、肝臓に残っている能力や肝炎の状態などの適応条件を十分に検討して行うことが必要です。

2) 有機ゲルマニウムの投与

有機ゲルマニウムは、免疫力を徐々に高める薬です。ステロイド薬のように短期間ではなく、4−5ヶ月間続けて、すこしずつ免疫力を高めていきます。

ただし、有機ゲルマニウムも、肝硬変の人に用いると重症化する場合があります。そんため、治療の判定基準が設けられています。

次のうち、どれか一つでも当てはまる人は、有機ゲルマニウムの使用は避けます。
・ GPT よりGOTの値が高い
・ α−フェトプロテイン(AFP)値が高い
・ 肝硬変になっている

3) 小柴胡湯の投与

小柴胡湯は、漢方薬で、やはり免疫力を徐々に高めていく作用があります。
免疫力を高めるうえで、最も劇的な効果があるのがステロイド・リバウンド療法で、次に有機ゲルマニウム、そして小柴胡湯となります。

3. 炎症を抑える−グリチルリチン製剤

グリチルリチンとは、漢方の生薬である甘草の根から抽出した成分で、このグリチルリチンを主成分とした薬が、グリチルリチン製剤です。
グリチルリチン製剤は、肝細胞の細胞膜を強くして、肝細胞が破壊されないように、保護する働きがあります。

グリチルリチン製剤は、通常1日に40-100mlを静脈注射します。長期間使い続けなければならないので、その点で、楽な治療法とは言えませんが、確実に炎症を抑えて、肝炎の進行を抑える働きがあります。

以上の治療法を、医師が症状や肝臓の予備能力などをみながら伸張に選びます。B型慢性肝炎の患者さんは、なるべく早くウイルスを発見して、肝臓の状態が良いうちに、治療を受けるようにしましょう。

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