C型肝炎の治療


虎ノ門病院消化器科部長 熊田 博光

C型肝炎は、インターフェロンの登場によって、完治も可能になってきました。しかし、すべての患者さんに有効なわけではないので、その人にあった治療法を選んでいく必要があります。


C型肝炎の特徴


日本では、肝臓病の約80%がウイルス性の肝疾患です。そのうちの約75%はC型肝炎、約20%はB型肝炎です。いずれも、血液や体液などを介して感染します。

症状は、C型肝炎もB型肝炎もほとんど違いはありません。感染すると、一定の潜伏期間を経て、ほとんどが急性肝炎にかかり、体がだるい、疲れやすい、食欲がない、発熱、頭痛、悪心など、風邪のような症状が現れます。

しかし、C型肝炎の場合、これらの急性肝炎の症状がB型肝炎に比べて軽く、自覚症状がほとんどない人も少なくありません。そのため、発病に気がつきにくく、慢性化しやすいのが、C型肝炎の最も怖いところです。

C型慢性肝炎になると、肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性が大きくなるからです。

C型肝炎ウイルス(HCV)を体内に持っている人(キャリア)でも、発症しないで一生を過ごす人もいます。しかし、その一方で、HCVのキャリアの約20−30%が、感染後20−40年で肝硬変を発病してきます。

しかし、現在では、新たにC型肝炎にかかる人は激減しています。これは、C型肝炎に感染したときできるHCV抗体が発見されたためです。これによって、血液検査でC型肝炎ウイルスの感染がわかるようになり、輸血や血液製剤などによる感染もなくなりました。

また、かつてはC型肝炎にかかったら、もう治らないとあきらめていたのが、今ではインターフェロンの登場によって、C型肝炎の治癒率が向上し、根治も可能になりました。C型肝炎の治癒率向上は、肝硬変や肝臓がんの減少にもつながります。



インターフェロンとは


もともとインターフェロンは、人がウイルスに感染したときに、体内で作られる物質で、体内に侵入してきたウイルスの増殖を抑える働きをもっています。

現在、治療用の薬として用いられるインターフェロンは、人工的に作られたもので、開発当初は"夢の特効薬"といわれ、がんも治るのではないかと期待されました。しかし、残念ながらがんは治せず、C型肝炎にしてもすべてが治るわけではないということがわかりました。さらに、副作用があることも判明しました。

しかし、インターフェロンがC型肝炎の治療に大きな実績を挙げているのは確かです。インターフェロン療法を行った患者さんの約30%は、ウイルスが消失して病気が完治しています。完治しなくても、ウイルスが減少し、肝機能が正常化した患者さんの数を合わせると、約40%の人に効果が会ったことになります。

この効果は、肝臓がんの発生率にも反映されています。インターフェロンがなかった時代に比べると、肝臓がんの発症率は大幅に下がっています。
つまり、インターフェロンには肝炎の治療だけでなく、肝硬変や肝臓がんへの進行を防ぐというたいへん重要な効果があるわけです。

インターフェロン療法は、まず血液検査で、GOT・GPTなどを調べて、肝機能をチェックし、さらに肝生検(細い針を肝臓に刺して、組織の一部を採取する)を行って、肝臓の状態を確定診断してから行われます。インターフェロンの投与方法と副作用は次の通りです。

1.投与方法

一般的には、最初の2−4週間、インターフェロンを毎日注射し、それが終わると週3回の注射を16週間続けるという方法がとられています。虎ノ門病院では、インターフェロンを毎日8週間注射し、その後週2回ずつ16週間続ける方法を行い、効果を上げています。

2.副作用

インターフェロン療法の初期には、発熱や悪寒など、風邪によく似た症状が現れる場合があります。後期にはうつ状態になる、視力が悪くなる、タンパク尿がでる、皮膚に発疹が出るなどの症状が出ることがあります。しかし、治療が終われば、ほとんどの症状は治ります。



インターフェロンの効果の予測


インターフェロン療法を行っても、効果がある人とない人がいます。この理由を探ろうと研究を重ねるうちに、HCVウイルスにもさまざまなタイプがあることがわかり、そのタイプを調べることに事で、インターフェロン療法の治療効果の予測がつくようになりました。
そこで、現在ではHCVウイルスのタイプや量を調べ、さらに患者さんの年齢や肝機能の状態も参考にして、治療方針を立てます。

1.HCVウイルスとタイプ

現在わかっているHCVウイルスのタイプは、6グループ28種類です。このうち、日本で見られるのは、主に1b・2a・2bというタイプです。日本人に最も多いタイプは1bですが、インターフェロンの効果はあまり高くありません。インターフェロンが最も効果的なのは、2a・2bのタイプです。

さらに、これらのタイプの中でも、ウイルス量が多い人と少ない人がおり、少ない方が、インターフェロンの効果が高くなります。同じタイプでも、ウイルス量でインターフェロンの治療効果は大きく変わります。

1bで高ウイルス量の場合、治癒率が非常に低いことがわかります。ただし、この場合でも8%の患者さんは治癒しています。この点に着目して、さらに研究を重ねたところ、ウイルスも変異することがわかったのです。ウイルスは、「野生株」から「変異株」へと変異度が大きくなるにつれて、だんだん弱くなっています。

つまり、1bで高ウイルス量でも、ウイルスの量が極端に多いのでなければ、ウイルスの変異度が大きいほど、ウイルスは弱く、治療効果が高くなるというわけです。したがって、ウイルスの変異度が大きい場合は、インターフェロン療法を選択します。
ウイルスのタイプや量、変異度は血液検査で調べることができます。

2.患者さんの年齢

C型肝炎の進行は非常に緩やかです。たとえば、65歳で軽い慢性肝炎の人であれば、肝硬変になるのは100歳くらいになったときです。そう考えると、副作用や肝臓の予備能力の問題もあるので、無理にインターフェロンを使う必要はないといえます。そのため65歳以上の高年齢者にはあまりインターフェロン療法は用いられません。

3.肝臓病の進行度

インターフェロン療法は、慢性肝炎の患者さんだけに行われ、症状の軽いほど効果的です。肝硬変の患者さんにインターフェロンを使用すると、全身から出血する危険性があります。



その他の治療法


インターフェロン療法を行えない場合はや、効果が見られない場合は、従来の治療法、いわゆる維持的療法を行います。ウイルスを排除することはできませんが、肝細胞の破壊を防ぐことで、病気の進行を抑えます。

維持的療法で用いられる主な薬は、グリチルリチン製剤、ウルソデスオキシコール酸(肝臓に作用して、胆汁の分泌を促す)、小柴胡湯で、これらの薬を組み合わせて治療します。しかし、これらの薬は一生服用し続けなければなりません。

インターフェロン療法にしろ、維持的療法にしろ、できるだけ早くウイルスを発見することが大切です。早期に発見できれば、ウイルスのタイプや量によって、インターフェロンの投与期間を短くするなど、なるべく患者さんの負担にならない治療法を選ぶこともできます。定期的に検診を受けて、異常があれば、速やかに肝臓の専門家を受診しましょう。

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