クローン動物はいかに創られるか
今井裕著(岩波科学ライブラリー)
クローンとは遺伝子組成が完全に等しい、無性生殖的に生じる細胞または生物集団とされています。
クローン羊「ドリー」は6歳の雌の羊から採取され、マイナス196℃の液体窒素中に凍結しておいた乳腺細胞を解凍し、受精する前の卵子に植え継いで作られたクローン動物です。この過程には、精子(雄)と卵子(雌)による受精は関与しません。無性生殖による、細胞からのクローン個体の形成です。
1997年2月27日の「ネイチャー」誌は、体細胞から「核移植」とよばれる技術を使って、体細胞と同一の遺伝子を持ったクローン動物を作り出したとする科学論文を掲載しました。
これに関わった研究グループは、イギリスのエディンバラにあるロスリン研究所とベンチャー製薬企業であるPPL社の研究者からなり、イワン・ウイルマット博士が研究グループを率いています。
ウイルマットのグループの独創性、新規性とは何だったのでしょうか。一言でいうと、哺乳動物の細胞分化は可逆的であることを証明したことだと言ってよいでしょう。
精子と卵子が受精し、受精卵とよばれる一個の細胞から細胞分裂を繰り返しながら一つの動物個体が形成されます。分裂を続けながら、細胞を取り巻く外的環境、近くの細胞との接触の中で、はじめは一個の細胞が、そのうち近接の細胞が、というように徐々に細胞の性質が変化し、それらが一つの群を形成し、個体を形作っている臓器や組織を形成していくようになります。
この過程を「発生」といい、その中で細胞の性質が変わっていくことを「分化」とよびます。ウイルマットのグループは、いったん分化した細胞が受精卵のような細胞に戻ることはできないという常識を覆したのです。
いま分化した細胞が受精卵のような細胞に戻ると言いましたが、これは分化した細胞そのものが受精卵になるのでなく、分化した細胞がまだ受精していない卵子(未受精卵)に導入(移植)されることによって、受精卵と同じく個体になる能力(全能性)獲得するという意味です。分化した体細胞を未受精卵に導入する技術を「核移植」と呼びます。
クローン動物の有用性
1)乳汁に医薬品を分泌させる
目的とする医薬用タンパク質は血液製剤に類するものであり、血液から採取できる量は微量であり、エイズなどの感染の危険性も有ります。一般に、これらのタンパク質は巨大であり、構造も複雑で、既に実用化されている大腸菌や酵母を用いた遺伝子組み換え技術によって生産すことは困難です。
乳汁は乳腺から産出されます。乳腺は乳汁分泌のために特殊化された組織ですから、乳腺細胞だけが分泌するタンパク質がいくつか知られています。この乳タンパク質の遺伝子発現制御領域を、目的とするヒト遺伝子の発現制御に用いることによって、本来は乳汁中には存在しないタンパク質を乳腺で発現させると同時に、乳汁中に分泌させて回収することが考えられます。
2)移植用の臓器を作る
人への臓器を移植するための遺伝子組み換え家畜の産出です。
3)人の遺伝子疾患モデル動物
トランジェニック家畜を人の遺伝子疾患モデル動物として利用することが考えられます。
トランスジェニック家畜を利用した医薬物質の生産
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産出する人由来のタンパク質
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医療目的
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α1アンチトリプシン
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肺気腫、嚢胞性繊維症の治療
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第8血液凝固因子
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血友病の治療
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第9血液凝固因子
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血友病の治療
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アンチトロンビン3
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脳卒中や心臓発作の治療
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組織性プラスミノーゲン・アクチベーター
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脳卒中や心臓発作の治療
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プロテインC
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脳卒中や心臓発作の治療
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コラーゲン
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化粧品など
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血清アルブミン
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低蛋白症、ネフローゼ、やけどの治療
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ラクトフェリン
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免疫増強
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