議論を呼ぶクローン赤ちゃん計画


クローン人間作りは可能なのか。どのような規制が必要なのか。
ドリー誕生の際には「クローン人間はそう簡単には作れない」という雰囲気があった。今では「人間でもできるだろう」という専門家が多い。

体細胞クローンの作りやすさには種によって差がある。豚の場合は体外に取り出した卵子が環境の変化に弱いため難しい。ヒトの卵子は体外での操作に強いとされる。

東京農業大の岩崎説雄教授(発生工学)によると、排卵直後の卵を使うことのできるヒトの方が、卵子を体外培養してから使うクローン牛よりも成功率が高い可能性さえあるという。

クローン人間作りには多数の未受精卵が必要となるが、米国では不妊治療の一環として卵子提供があり、女性の卵子が流通している背景もある。しかし、安全性には現時点で何の保証もない。

「遺伝子組み換えクローン羊のポリーの顔を見ると、なんとなくおかしい気がする。染色体異常だとしても人間に比べて研究が進んでいない動物ではチェックしきれない。人間に応用するのは危険すぎる」と岩崎さんは警告する。

クローン人間に対する規制について、文部省・学術審議会の部会は今月上旬に中間報告をまとめる。科学技術会議の生命倫理委員会も近く審議を開始する


クローン牛―医薬品生産も目的に


体細胞クローン牛の妊娠・出産の成功が日米で相次いだ。しかし、方法や目的には違いがある。

農水省畜産試験場のグループはドリーと同じ方法を使い、体細胞クローン牛の受胎に成功した。8月に出産が予定されている。

今井裕・生殖工学研究室長によると、雄の成牛の耳の細胞と胎児牛の体細胞をそれぞれ血清濃度を下げた「飢餓状態」で培養した。次に核を取り除いた雌牛の未受精卵にこの細胞を入れ、電気刺激で融合させた。7日間培養し、代理母となる雌牛の子宮に移植した。

成牛細胞を使った卵を移植した29頭のうち9頭、胎児牛細胞を用いた13頭中1頭がクローン牛を妊娠した。

生殖細胞はどんな細胞にもなれる「全能性」を持っているが、生殖細胞から分化した哺乳類の体細胞は役割が固定され、二度とは全能性を回復しないと考えられていた。

飢餓状態での培養と未受精卵との融合によって、耳の細胞が初期化されて全能性を取り戻すと、今井さんは推定する。

今井さんは「成功率が高いと思われた胎児牛の細胞で試みたらうまくいったので、成牛の細胞を使った。」と語る。

研究目的は肉質の良い牛やミルクを多く出す牛の大量生産することだ。このため、優良な性質の成牛のクローン作製が重要となる。

一方、米国ではマサチュウセッツ大とアドバンスト・セル・テクノロジー(ACT)の共同研究で、胎児牛の体細胞を使ったクローン牛が誕生した。

ドリーや日本のケースと異なるのは遺伝子組み換え技術を併せて使った点だ。今回は組み換えクローンであることを示す「マーカー遺伝子」を組み込んだが、将来は医薬品を作る遺伝子を組み込む。

血友病治療薬の血液凝固因子の遺伝子を組み込んだクローン羊・ポリーと同じ路線で、家畜が医薬品を生産する「家畜工場」をめざしている。うまくいけばミルクの中に医薬品が分泌されてくる。

ACTは組み換えクローン牛による血清アルブミンの生産を計画中で、安全で安価な血液製剤が作れると強調する。

読売新聞 1998年2月3日

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