死をプログラムする利己的遺伝子


半田直志・小林一三

要旨

ゲノム全体から独立性の高い遺伝子単位が死をプログラムすることが、細菌ではよく見られる。ウイルスに感染した細菌細胞は、すでにいるプロウイルス遺伝子によって自殺させられる。プラスミドは自己を排除した宿主細胞を殺す戦略によって、ライバルのプラスミドと闘う。制限修飾系による細胞死がその例である。ミトコンドリアによる細胞死も、ミトコンドリアが自分の安定な維持をはかる戦略だったのかもしれない。

我々人類は酸素を吸って生活しているが、初期の生物体にとって増加していく酸素は有害なものであった。核を持つ嫌気性細菌が、酸素を利用できる細菌を体内に取り込み、それとの共生によってこの危機をまぬがれた。現在のほとんどの真核生物に見られるミトコンドリアの起源である。今でもミトコンドリアには独自のゲノムDNAが存在し、その遺伝子が使用する遺伝暗号も核のものとは異なることなど、この共生説を支持する証拠は多い。

ミトコンドリアの共生がどうして成立したか考えてみよう。恐らく、原ミトコンドリアは、自己が細胞から排除されそうになると宿主を殺す「分離後宿主殺し」によって、細胞に自己の維持を強制し、よく似た競争者(寄生細菌)と闘ったのだろう。ミトコンドリアが宿主にもたらした利益は酸素呼吸による飛躍的なエネルギー増加であると考えられるが、実は、ミトコンドリアがもたらした細胞死の能力こそが、私たち真核生物の生の多細胞化と複雑化をもたらしたのではなかろうか。

哺乳類体細胞はウイルスに感染するとアポトーシスをおこす。細菌がウイルスもろとも死ぬことによって、周囲の細胞は二次感染を免れる。

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