11章 三人の母と二人の父


 たいていの場合、どの社会でも、どの時代においても、子供には母親と父親が一人ずついる。それが、私たち人間にとって自然な形である。だが、これまでの歴史の中には、例外も存在した。そして、今日ではそのような例外が極めて一般的になっているにもかかわらず、さまざま種類の親を区別する呼称が十分にあるとは言えない。

 私はここで、子供をつくる精子核を提供する男性を、「遺伝的父親」、あるいは「生物学上の父親」と呼ぶことにする。20年前までは、「生物学上の母親」を、一つの明確な意味としてとらえながら語ることができた。

だが、体外受精と胚移植の出現によって、女性特有な二つの重要な生物学的要素がはっきりと区別されるようになったために、子供が、二人の生物学上の母親を持つ可能性も出てきた。その両者を区別する必要がある場合、私は、卵子を提供した女性を「遺伝的母親」、胎児を子宮に宿す女性を「産みの母親」と呼ぶことにする。

 つまり、父親には、生物学上の父親と社会的父親の二種類があり、母親には、遺伝的母親、産みの母親、社会的母親の三種類の母親がある。

言うまでもなく、生物学上の父親と社会的父親は同一人物になりうる。その点については三種類の母親も同様であり、現実に、そういったケースはよく見られる。だが、少し考えてみれば分かることだが、一人の女性が三種類のうち二種類の役割を果たし、別の女性が残りの一つの役割を担う可能性が考えられる。

 クローン技術が開発されるまで、子供の誕生には三つの生物学的要素が必要だった。卵子、精子核、そして子宮である。これらのうち一つでも欠ければ、妊娠は成立しない。

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