エピローグ 人類はどこに行くのか



私はアルファである。オメガである。始めであり、終わりである。
最初のものであり、最後のものである。
(ヨハネの黙示録22−13)


ヒト・ゲノムの最も素晴らしい点は、この本で述べてきた事柄を頭の中で思い描けるような意識を人間に与えたことである。30億の塩基対からなる遺伝情報が、人間の意識に到着するまでの道のりは、長く曲がりくねっているが、ワトソンやクリックの時代以降、個々の人間が成長していくあいだに遺伝情報がこの旅を続けることを真剣に疑う科学者は一人もいない。

二番目に素晴らしい点は、ヒト・ゲノムがいとも簡単に、みずからの秘密をさらけ出すことだ。むろん、なかでも最大の秘密は、人類の意識と知性に至る遺伝子の通り道そのものである。「知性の遺伝子」は、いわゆる賢い人類と愚かな人類のゲノムの違いを調べることで見つけられると考える人がいるが、この方法は、環境による強烈な妨害があるために不可能である。また、知性の遺伝子の正体を知るためには、人間の脳の仕組みを深く理解しなければならないと考える人もいる。だが、21世紀の神経科学者は、神経と神経のあいだの無数のつなぎ目を図示したり、理解する手段も能力も持ち合わせていなかった。その突破口は、まったく別の角度からー私たち人間の進化に目を向けることによって開かれた。

この方法を理解するのに役立つのは、物事の原因を探るときに使いうる方法を検討することだ。人間が共有するヒト・ゲノムと、人間に近い親戚に当たるチンパンジーのゲノムを比較することではじめて見つけることができる。

23世紀は、この宇宙で生命の進化における重要な分岐点だ。知能に改良を加えたジーンリッチが円熟期を迎えたとき、彼らは、人類史上において最も優れた能力を持った科学者たちを輩出する。これらの科学者たちは、人間の思考能力のさらなる理解に大きな足跡を残し、より洗練された生殖遺伝技術を開発し、それを利用して次世代のジーンリッチの認識能力をさらに改良していく。そして、この時代、ある特別な知的生物が現れる。

この生物は、意識を持つすべての人間たちが自問してきた、一見単純そうに見える三つの問いに対する答えを見つけるために、長い年月を捧げてきた。

「この宇宙は、どこから来たのだろうか?」
「『無』ではなく、『何か』が存在するのは何故だろうか?」
「意識の存在は、何を意味しているのだろうか?」

今、その答えを得た彼らは、いつのまにか、自分たちの創造主と向き合っていることに気づく。彼らの目には、何が映っているのだろうか?20世紀の人間たちが、その豊かな想像力をもってしても、見いだすことのできなかったものだろうか?それとも、この世界のいちばん最初の瞬間まで遡ったときに、鏡に映るはずの彼ら自身の姿なのだろう

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