フォーラム ドリー誕生〜生命科学の行方


(7月22日 東京国際フォーラム)


基調講演:イアン・ウィルムット博士(英ロスリン研究所)


体細胞クローン作りには二つの細胞が必要となる。一つは、あらかじめ核を抜いた未受精卵、もう一つは培養した体細胞。体細胞の核を未受精卵に移植し、両者を電気刺激で融合させると、一個の受精卵のように発生を始める。

われわれは、体細胞として成羊の乳腺細胞を使ったほか、胎児細胞、受精卵から少し進んだ胚の細胞でもクローンを作る実験を行った。この結果、胚まで進む率は、体細胞からは10.5%、胎児細胞から27.3%、胚細胞からは32.7%だった。

胚・胎児・成体へと発生(身体ができる過程)が進むにつれて、細胞の性質が変わり、受精卵が持っていた発生に必要な性質がなくなっていくのだ。核移植では、20%くらいの胎児が発生の途中で止まってしまう。身体が大きい子が産まれる傾向もある。

クローン研究にあえ挑むのは、生物学的な興味に加え、様々な応用が期待できるからだ。優秀な品種をクローン技術で大量に複製できれば、良い品質の肉を手軽に入手できるようになる。こうした狙いから、日本でも今月5日にクローン牛が誕生した。クローン家畜の肉を食べる上で安全性を徹底的に確認する必要はあるが、わたしも日本のおいしいクローン牛を食べてみたい。

クローン人間を作るのは、不妊治療の手段としても反対だ。死んだ子供を復活させるのなら、応用を認めても良いとの意見や、さらには著名人のコピーを子供にしたいという人もある。しかし、生まれた子供の人権をどう考えるのだろうか。

治療目的で人にクローン技術を応用する可能性はある。細胞の核の外に存在する細胞内の小器官・ミトコンドリアが原因で起こる病気がある。受精卵の核だけを取り出し、その核を第三者の未受精卵に移植すれば治療できるだろう。

また、遺伝病などの治療で、受精卵や胚の段階で遺伝子治療を行えば、全身の遺伝子異常が治るので、異常が次世代に伝わることもない。人間の胚細胞をうまく制御し、パーキンソン病治療のための神経細胞を作り出すなどの方法もある。人間と同じ病気を持つ疾患モデル動物や、人間の臓器移植用に遺伝子を改変した家畜を作るのにも応用できる。

2,3年前は、ドリーのような体細胞クローンを作るのは不可能と思われていた。それが今、日本やハワイで成果が続々と発表される状況にある。このような目覚ましい進歩を遂げる技術の応用にあたっては、過ちを犯す心配もある。応用には慎重な態度が必要だが、冒険をしなければ科学の進歩もない。

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