遺伝子診断は、どうやって行うのか?


遺伝子診断は、受ける本人にとっては、血液を少し採られるだけでまったく苦痛はない。

出生前診断、つまり胎児の遺伝子を調べる場合だけは、胎児の細胞が必要になる。胎児が浮いている羊水を採取して、そこに含まれる胎児の細胞を調べたり、最近では絨毛検査といって胎盤の絨毛を少し採って検査する方法も行われている。胎盤は胎児の側からできるので、この細胞でも胎児の遺伝子がわかるのである。羊水より早い時期から検査ができて、かつ流産などの危険性も少ないことから、最近ではこちらが主流になってきている。

それ以外は、ふつう白血球が遺伝子診断の材料に使われる。もっとも遺伝子は、個人のすべての細胞に組み込まれているから、どの細胞でも診断は可能である。

生物は、生きるための情報のすべてを遺伝子の情報として親から受け継いでいる。遺伝子情報は生命の設計図のようなものだ。驚くことに、この膨大な設計図は、A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)というたった4つの塩基の並び方で描かれている。

そのほとんどは意味のないただの塩基配列だが、そのなかに意味のある部分、つまり遺伝子が含まれているのである。この遺伝子部分に異常が起こると、おかしな蛋白を作ったり、逆に産生にストップがかかって特定の蛋白が作られなくなったりする。その結果、病気が起こるのだ。

遺伝子診断では、この変化が起きた部分を診る。遺伝子診断は、制限酵素というDNAを切るハサミの発見によって可能になったといってもいい。この酵素は、遺伝子(DNA)の塩基配列を明確に認識し、特定の塩基配列の部分でDNAを切断する。

1970年に、アメリカのハミルトン博士らが細菌から制限酵素を発見して以来、すでに何百という酵素が見つかっている。もともとは、細菌の中にウイルスなどの邪魔者が侵入したときに、その遺伝子を切り捨てるために存在したらしい。

この制限酵素を組み合わせて、白血球から採った問題部分の遺伝子を切断させる。そこで、病気の原因を予想される遺伝子の変化の仕方を見ると、正常な遺伝子では切断されたはずの部分が切断されなかったり、おかしなところで切断されると言う結果になる。

こうしてできた遺伝子の断片にさまざまな操作を加え、遺伝子そのものの異常やその近辺の塩基配列の変化(連鎖)から、遺伝子異常の存在を推測するのが、遺伝子診断の原理である。

これはサザンプロット法といわれ、今では古典的な手法になっている。現在では、ターゲットとする遺伝子を何百万倍以上にも増やし、遺伝子の異常を診断することが可能になった。これがPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれる方法だ。

遺伝子は通常二本鎖の螺旋構造をしている。まず、この遺伝子に熱を加えて一本に分離する。ここに人工的に作った対になる遺伝子配列の一部(プライマー)と遺伝子合成酵素を加えると、これをきっかけにまた二本鎖が復元されていく。遺伝子の切れ端を引き金にして、もう一方の遺伝子が作られて行くわけだ。この操作を繰り返していくと、どんどん目的部位の遺伝子が増えていく。

こうしてできた大量の遺伝子をもとに、その塩基配列を調べることで遺伝子の異常を発見でき、感度も高いことから、遺伝子診断を画期的に進歩させた方法である。

この方法を持ってすれば、髪の毛の一本、あるいはうがいした水に含まれる細胞からでも、遺伝子診断は可能だ。

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