すでに、遺伝子治療で命の救われた人はいるのか?


遺伝子治療だけで本当に命が救われた人がいるか、となると残念ながら答えはノーだ。しかし、浅野教授は「ADA欠損症の一部は、短期的に成功したと言えるかもしれなし。」と指摘している。

日本でも、これまで唯一の遺伝子治療として北海道大学でADA欠損症の遺伝子治療が行われている。だが、その評価となると、まだ疑問点が多い。浅野教授は「北海道大学のケースでも与えられた課題は果たしたと言えるでしょう。しかし、真の意味で広く臨床的な有用性があるかと言えば、それはまだ不明です。」と語っている。研究としては一応の成果を上げているが、実際の治療でどれだけ役に立つかというと、まだ分からないのというのである。

アメリカで最初に遺伝子治療を受けたADA欠損症の少女も、それまでは病気の感染を恐れて家にほとんど閉じこもりきりであったが、治療後は他の子供と同じように外で遊べるようになったと伝えられている。北海道大学のケースでも、遺伝子治療を受けた子供は学校に行けるようになった。しかし、それが本当に遺伝子治療の成果であるとは、まだ確実には言い切れないのである。

アメリカでも日本でも治療を受けた子供達は、遺伝子治療だけでなく、併行して牛から採ったADAを注射する酵素の補充療法を受けている。ADA欠損症は、外から不足したADAを補うことで、感染症から体を守ることも可能なのだ。したがって、治療後の状態が、遺伝子治療の成果なのか、補充している酵素の効果なのか、この点が科学的に明確に出来ない。

実際に治療を受けた患者に関しても、果たして遺伝子治療が必要なほど事態が切迫していたのかどうか。といった疑問も挙がっている。したがって、手放しで遺伝子治療の成功とは言い切れないのが現状だ。もう少し長くフォローし、また症例を増やさない限り、科学的な評価は出来ないと浅野教授は見ている。

一方、東京大学神経内科の金沢一郎教授は、遺伝子治療の目的や適用疾患そのものを問題にする。「酵素が欠損する病気の中には、外から酵素を補充したのではうまくいかない病気もあります。そういう病気に遺伝子治療を行ってこそ、意味があるのでは」ということである。

したがって、今のところは本当に遺伝子治療で命が救われたと断言できる人はいないことになる。

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