がんは、どこまで遺伝子の病気か?


まだ機序の面で不明の点もあるが、がんは基本的に遺伝子の病気である。

1981年にがん遺伝子の異常が初めて発見されたのを手始めに、これまでにほとんどのがんで、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常が発見されている。

がん遺伝子は誰でも持っているものだが、それが傷ついて活性化されると細胞の異常な増殖を招き、細胞のがん化を引き起こす。一方、がん抑制遺伝子は細胞分裂に歯止めをかける遺伝子で、これが傷害されると細胞の増殖にブレーキがかからなくなり、やはりがんを引き起こすことになる。

実際には、細胞の中で複数の遺伝子が次々に変化を起こし、それにつれて細胞が悪性化、本物のがんに成長していくことが分かっている。

では、遺伝子の病気ならば遺伝するのか、とうい疑問が出てくるかもしれない。これは、基本的にはノーだ。ほとんどのがんは、後天的な遺伝子の障害によって起こる。

遺伝するがんは、5−10%ともいわれている。その代表が家族性大腸腺腫症である。家族性大腸腺腫症は、遺伝性がはっきりしていて、親が家族性大腸腺腫症であれば、ほぼ半数の確率でその子供は同じがんになるといわれている。

家族性大腸腺腫症は、APC、K-ras、p53などの遺伝子が関与していることも分かってきた。しかし、遺伝子から見れば、遺伝性のがんも、そうでないがんも、その差はわずかともいえる。

たとえば、がん抑制遺伝子の場合、普通は両親それぞれから受け継いだ遺伝子が二つとも異常を起こすと、がんへのスイッチがいる。家族性大腸腺腫症の場合、もともと生まれたときから一方の遺伝子に異常があるため、もう一方に傷が付くと、がんになってしまう。

何段階かの遺伝子の異常でがんになっていくとすると、家族性大腸腺腫症の人は、生まれる前からステップが始まっているので、そうでない人よりステップが進むのが早いのである。

仮に30年かかってがんになるとすれば、遺伝子のがんの場合は、その半分ぐらいでがんにたどりつくことになる。したがって、遺伝性のがんの発症年齢が若いのも特徴だ。だから二十代の大腸がんの九割は、遺伝性ともいわれている。

しかし、生まれた後で、つまり後天的に遺伝子に異常が起きてもやはり同じがんになる。そういう意味では、結果として遺伝子に異常が起きているかどうかが、問題なのである。

浅野教授によると、家族性大腸腺腫症のような遺伝性のはっきりしたがんは、他のがんを理解する好例になっているそうだ。しかし、一般のがんに関していえば、なりやすい素因があっても食事や生活環境などの影響で、必ずがんになるとは限らない。個々のがんによって、遺伝子の関わり方の比重も違う。

戻る 進む


このホームページのホストは です。 無料ホームページをどうぞ!