肝炎から肝癌への道


東京大学第二内科  小俣 政男

我が国では、慢性肝炎の患者数は、100−200万人と推定されており、そのうちB型肝炎ウイルスによるものは20%、C型肝炎ウイルスによるものは70%とあわせて9割以上が肝炎ウイルスを原因としている。

これらのウイルス性慢性肝炎の一部は肝硬変へと進行する。本邦における肝硬変は約25−30万人と推定いる。

近年、肝細胞癌の発生は著しく増加してきている。厚生省の統計によると、1991年の肝細胞癌の死亡数は男性18,765人、女性7,003人と1980年の男性10,038人、女性4,472人に比べ約80%もの増加を示している。

悪性腫瘍による死亡順位で見ると、男性では胃癌、肺癌についで第3位、女性では胃癌、肺癌、大腸癌についで第4位となっている。

これら肝細胞癌症例のうち20%はB型肝炎ウイルス感染を有し、70−80%がC型肝炎ウイルス感染が原因であることが明らかになってきている。

ウイルス性慢性肝炎においては、肝硬変への進展阻止と肝癌の早期発見が重要である。

近年、肝硬変に伴う合併症(腹水、肝性昏睡、食道静脈瘤)に対する治療の進歩により肝硬変の予後は著しく改善されてきている。

このため、慢性肝疾患の進展に伴う肝細胞癌の合併が患者の予後を規定する主たる要因になってきている。

B型肝炎患者では若年者からの肝細胞癌の発生が知られている。他方、慢性C型肝炎ではその病態の進行に伴い、肝細胞癌の発生頻度は激増することが知られており、肝硬変前段階では年率3%にも及び、肝硬変では年率7%以上の率で肝細胞癌の発生が知られている。


血小板数による肝障害の判定
(東京大学第二内科 小俣政男)

血小板数 発癌率(年率) IFN著効率
軽度肝障害 17万 0.5% 50−60%
中等度肝障害 15万 1.5% 30−40%
高度肝障害 13万 3% 20−30%
肝硬変 10万以下 7% 10%


早期肝細胞癌の病理


久留米大学第一病理  神代 正道


径2p以下の単発性の肝細胞癌を最小肝細胞癌と呼ぶが、それは肉眼的に大きく2つのカテゴリーに分けることができる。

1つは外科切除例の多くを占めるもので、明らかな結節状を呈し、多くは繊維性被膜や隔壁を有している。それらは単結節型、単結節周囲増殖型、多結節癒合型の3型に亜分類されており、通常、経験する細小肝細胞癌の多くはこの3型のいずれかに分けられる。

他の1つの細小肝細胞癌のカテゴリーは、細小肝細胞癌・境界不明瞭型と呼ばれるもので、腫瘍径1−1.5p前後の微少な肝細胞癌の大部分は超音波上、明らかな結節性病変として描出されるにもかかわらず、肉眼的に切除標本では癌結節が不明瞭であったり、あるいは癌病巣を容易に指摘できないことが少なくない。この境界不明瞭型細小肝細胞癌は現時点で臨床的にとらえられる最も早期の肝細胞癌の特徴的な肉眼像とみなされる。

この境界不明瞭型肝細胞癌では、癌病巣はまだ膨張性増殖を示すに至っていない高分化型癌組織の均一な増殖よりなり、癌組織内に多数の門脈域や肝硬変偽小葉の繊維性隔壁が残存している。

境界不明瞭型肝細胞癌が径1−1.5p前後にいたりm癌組織の膨張性増殖が始まるとともに結節辺縁部に繊維性被膜、および結節内部に隔壁の形成を見るようになる。

以上のような肉眼的特徴から見て、肝細胞癌の多くは径1−2p、特に1.5p前後を境に形態学的かつ生物学的にも大きく変貌することが窺える。

肝細胞癌
国立がんセンター がん情報サービス

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