C型慢性肝炎の長期予後(インターフェロン治療)

赤松 雅俊・小俣 政男(東京大学大学院医学系研究科消化器内科学)

はじめに


C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)療法が1992年に保険適用になってから6年が経過した。これまで多くの患者がIFN治療を受け、その約3割の患者でC型肝炎ウイルス(HCV)が消失した。残りの7割の患者はHCVが消失せず、再治療や別の抗ウイルス療法に期待を抱いているが保険診療で行える段階になっていない。

C型慢性肝炎に対するIFN治療の長期予後については、1994年」圧、札幌におけるRoche Molecular Symposiumにおいて初めて全国的に検討がなされた。それによれば、10施設からのIFN治療患者での肝発癌率をとりまとめたところ、IFN著効例での肝発癌率は著しく低下しており、また、IFN無効例においても肝発癌率は無治療例の発癌率の半分程度に減少することが示された。

1. C型肝炎の経過
 

HCVは血液を介して感染する。もっとも多いのは輸血であり、その他、刺青、覚醒剤、針刺しの事故などが主なものである。HCVに感染しても黄疸症状を呈するものは少なく、多くは無症候性であり、慢性肝炎への移行率は7〜8割といわれている。このためかHCVに感染していることは偶然の血液検査によって発見されることが多い。

またC型肝炎はおよそ30〜40年の経過で慢性肝炎から肝硬変へと進展すると考えられている。
C型肝炎は慢性肝炎から肝硬変に移行するに当たって肝細胞癌の発症率が急増することが明らかになっている。

我々は慢性肝炎から肝発癌へのprospectiveな検討をし、CPHからの肝発癌率は年率0.4%、CAH2Aからは年率1.4%、CAH2Bからは年率3%、肝硬変になると年率6〜7%にも達することを明らかにした。

2.肝癌の発症機序

B型肝細胞癌におけるHBV遺伝子のヒト肝細胞DNAへの組み込みが肝発癌に関連している可能性が指摘されている。しかしHCVは1本鎖RNAウイルスでありヒト肝細胞のDNAには組み込まれない。HCVの産生する蛋白質が直接あるいは間接的に肝発癌を引き起こす可能性もあるが、現在のところ慢性肝炎から肝硬変に至る慢性炎症と肝細胞の壊死、再生の繰り返しによる肝細胞の遺伝子変異により肝細胞癌が発症すると推測される。

3.IFNによる肝癌の予防

現在までの報告によると、すくなくともIFNによりHCVが消失した症例では肝発癌は抑制されていると考えられる。またウイルスが消失しなくても、IFN投与中にトランスアミナーゼが正常化すれば、その後の再燃した症例でも肝発癌が抑制されている可能性が記された。しかしIFN投与が開始されてからこれまで6年程度しか経過していないために、再燃例では今後発癌してくる可能性も考えられる。再燃例については、今後の経過を観察することでその結論が導かれると思われる。

ところでウイルス陰性化例では繊維化、炎症とも改善し肝発癌も低下するが、わずかながらも発癌することが報告されている。これはIFN投与時にすでに事前の検査では観察不能な微細な癌が存在していたと思われる。したがって、ウイルス除去例であっても腹部エコーなどによるフォローは必要と考えられる。

またウイルスが除去できない症例では強力ネオミノファーゲンCやウルソなどを投与することで持続的トランスアミナーゼを低値に保つことが肝発癌を抑制することが報告されている。したがってIFN再燃例や無効例では上記薬剤によって肝発癌を抑えることが肝要である。