人間の遺伝子ーヒトゲノム計画のめざすものー


榊 佳介


岩波科学ライブラリー29(岩波新書)



国際プロジェクトとしてのヒトゲノム計画

  ヒトゲノム計画の最初の策定にあたって、アメリカでは1期5カ年で3期、すなわち15年(つまり2005年に完了)という数字が出された。

ヒトゲノム全体を「解読する」ためにはゲノムDNAの配列決定が不可欠であるが、15年という期間は当時のDNA配列決定能力や情報の解析能力から算定されたものではなく、DNAの配列決定の技術などが飛躍的に発展するという楽観的見通しも加わったものであった。



ゲノム生物学、そしてゲノム人間学へ


ヒトゲノム解析研究は、ヒトのすべての遺伝子構造とその働きを明らかにし、それらをもとに遺伝子が相互に作用しあってヒトの体を形成(発生・分化)し、また維持していく過程を明らかにすることを目指している。

そしてこれまで医学との関連を重視した疾患遺伝子の研究に関しては大きな成果を上げてきたといえよう。

しかし、発生・分化や脳での高次神経機能など、人間の本質に迫る重要なテーマに対するゲノムからのアプローチはまさにこれから展開しようとしている。

ゲノム計画の最初の5年間(第1期)がゲノム地図作りから疾患遺伝子への基礎を築いたとすれば、第2期の5年間は、シークエンス(配列)解析から発見される大量の遺伝子に関する情報をもとに発生・分化などのテーマの展開をめざす時代である。

発生と分化の問題は、ゲノムの視点から見れば、遺伝子発現のプログラムが全体としてどのように構成され、働いているかという問題としてとらえられる。この問題に対する我々の理解はまだ断片的であるが、これをゲノムを通して体系化することが目標である。

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