呼吸する細胞都市


細胞はまるで大都会のようだ。
そこでは物質や情報が飛び交い、生命を維持する活動が展開される。


たった1つの細胞から出来ている生き物もいるし、人間のように60兆もの細胞が集まった多細胞生物もいる。

多細胞生物の細胞。それは、有機物の溶液の中に小器官が点在する、膜に包まれた立体的な世界。

膜は細胞の外と内を分けるだけでなく、細胞の中にも多様な小世界を作り出している。細胞膜を通り抜け細胞内を覗くと、まるで海底に揺らぐ昆布の林に分け入ったような世界が広がる。細胞の中に小世界をつくる多彩な膜が、まるで潮の流れに漂う昆布のように波打っているからだ。

細胞を満たしている溶液。その流れが生み出す神秘的な膜面の動き、膜面に付着している粒状の物質が、激しい動きにさらされて、時には反応し、新しい物質を溶液の中に吐き出す。ダイナミックに変化し続ける膜の世界で起こる化学反応によって、細胞は生命活動を維持する物質やエネルギーを生み出し、不要なものを処理する。

膜に包まれた細胞世界は、まるで都市のように見える。

物質、エネルギーをして情報が飛び交う大都会。そこに集う人々は、それぞれがの目的に従って一見勝手に生きているようだが、鳥瞰するとあたかも一つの目的を持った集団のように機能している。

細胞世界も、多様な活動が全体として一つの機能を生み出している。この細胞都市の中枢は、全てのシステムを制御する核と呼ばれる球形のブロック。核は穴だらけの核膜に包まれ、まるで呼吸するようにゆっくりと収縮・拡張を繰り返している。

核膜の中はDNAと呼ばれる二重らせんの紐が群がる世界。その紐には細胞のシステムを制御する基本的な情報(遺伝子)が蓄積されている。この情報が必要に応じてRNAという短い紐となって読み出され、核膜の小さな穴を通って、細胞都市に送り出される。核膜表面の穴は、核の指令を伝えるRNAたちが飛び出す小さな門なのである。

細胞都市に不可欠な物質にタンパク質がある。タンパク質を作り出す合成ユニットは、リボゾームと呼ばれる。たとえば、大量のリボゾームをつくりだす必要があると、核内のリボゾーム用パーツを生産する遺伝子から、その命令を伝える物質が次々に読まれ、まるでクリスマスツリーのように連なる。そして、一瞬膜が消えたとき、大量に塊となって細胞都市に出てゆく。

細胞都市のエネルギー生産を支えるミトコンドリアは、内外を二重の膜で覆われた独立した器官である。ミトコンドリアは内部に自分自身のDNAを持っている。核には従属してはいるが、かつては独立した存在だったとみなされている。

細胞都市と人間の都市との大きな違いには、細胞都市には生命の歴史の跡がDNAの中に明確に残されていることだ。

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