第7集:昆虫たちの情報戦略


新生代、花の登場と共に活躍を始めた昆虫たちは、大型化・複雑化を選んだ脊椎動物と異なり、外骨格・軽薄短小とシンプルなメカニズムという道を選択し、初めから完成された生命だった。

アリやハチといった社会性昆虫は、群として知能を有しているかのようにさえ見える。地球上に大繁栄を築いた昆虫たちの戦略に迫る。


第1章:昆虫たちの選んだもう一つの道


生命40億年の歴史の中で、動物としてはいち早く陸上に進出し、いち早く空を飛び、度重なる地球環境の変化の中でしぶとく生き抜き、進化を遂げたこの小さな虫たち。

生命の惑星と言われる地球上に、昆虫は約80万種以上生息し、動物全体の種を110万種とすると、昆虫が動物全体に占める割合は実に70%に及ぶ。最も繁栄している生命とも言われる動物である昆虫の秘密とは一体何なのか。

昆虫を簡単に定義すると、六本脚・外骨格・小さな目がたくさん集まった複眼の三つが主な条件である。さらに飛ぶと言うことも重要な要素の一つである。

昆虫の祖先は一体、いつこの惑星に出現したのだろうか。

今からおよそ5億3000万年前、カンブリア紀の海を生きた様々なバージェス生物の中に、カイメンに付着し、カイメンを食べて生活するアユシェアイアがいた。体はたくさんの節に分かれ、十数本の脚をもっていた。これが昆虫へつながる祖先であると考えられている。

進化の道筋は、カンブリア紀の海で大きく二つの道筋に分かれていたと言える。一つは体の中に背骨を持つ脊椎動物、バージェス生物の中ではピカイアがこれにあたる。ここから直接、私たち人類へとつながる進化の道筋が始まる。そしてこれとは対照的なのが、脊椎を持たずに体を硬い殻で覆った無脊椎動物の道筋である。この潮流の果てに昆虫がいる。
 
約四億年前に登場した昆虫たちが被子植物の出現と共に多様化していったのが、白亜紀から新生代にかけてといわれている。およそ8000万年前から7000万年前に、今の昆虫とほぼ同じような形態を持った昆虫が出そろったとされている。


第2章:闇の中の情報戦


今から6500万年前の巨大隕石衝突を境に、恐竜は忽然と姿を消した。

生き残った哺乳類は、恐竜によって昼間の世界から追われていたため、その多くは夜行性である。その闇の中で彼らは聴覚を発達させていた。そして、それが脳に新たな進化を引き起こす引き金となった。大脳皮質の進化である。哺乳類は感覚細胞で集められた情報を大脳皮質で集大成し、自分の中に新たな環境イメージを作り上げる。

これに対して、昆虫たちはセンサーを研ぎ澄ませていった。外界の環境をさまざまな感覚細胞で分担してとらえ、その微妙な変化に瞬時に反応してゆく。神経細胞の99%が感覚細胞である。


第3章:シンプル・イズ・ベスト


5億5000万年前、カンブリア紀の海に生まれた多様な生物たちは、私たち内骨格生物と昆虫たち外骨格生物と進化の系統樹を二つに分けて生の営みを続けてきた。

その外骨格のシンプル・イズ・ベストの戦略こそ、地球で最も成功した理由かもしれない。

極めてシンプルなシステムで生きながら、森の新陳代謝・物質循環を支えるという、最も重要な役割までも担う昆虫たち。酷寒の南極、灼熱の砂漠、大都市の中に至るまで、昆虫たちはこの地球上のどこにでも生息している。昆虫たちがこの惑星で真の成功者に違いないという気持ちになってくる。

彼らの生き方は、今後私たちが地球の掟を理解してゆくための手本になるに違いない。

生命40億年はるかな旅4(NHK出版)

戻る


このホームページのホストは です。 無料ホームページをどうぞ!