肝臓疾患
D.肝臓
1.肝炎 hepatitis
[肝炎の分類]
1)肝炎の推定原因による分類
1.ウイルス性肝炎
a.A型肝炎
b.B型肝炎
c.C型肝炎
d.D型肝炎
e.E型肝炎
2.肝炎ウイルス以外のウイルスによる肝炎:単純性ヘルペスウイルス,伝染性単核
ウイルス,アデノウイルス,コクサッキイーウイルス,黄熱病ウイルス
3.中毒性肝炎
a.狭義の中毒性肝炎(肝臓毒による)
b.薬剤過敏性肝炎
c.アルコール性肝炎
d.自己免疫性肝炎(ルポイド肝炎を含む)
2)肝炎の臨床所見・経過・肝組織所見による分類
1.急性肝炎
2.劇症肝炎(電撃性肝炎,亜急性肝炎を含む)
3.持続性肝炎
4.慢性肝炎
1.急性肝炎 acute hepatitis
病因:肝炎ウイルス(A型,B型,C型)
症状:初発症状ー全身倦怠感,食欲不振,上気道感染様症状,悪心
発熱,心窩部不快感,黄疸,全身掻痒感,右季肋部痛
血清トランスアミナーゼ値はGOT・GPT値とも初期から高値で,1週間ほどで下降の傾向を示し1ヵ月程で正常に近い値となることが多い.
多くは初病後2−3ヵ月で治癒するが,10%前後の症例では6ヵ月あるいは1年以上たっても肝機能の改善と憎悪が繰返される場合は,持続性肝炎あるいは慢性肝炎と呼ぶ。
2.劇症肝炎 fuluminant hepatitis
肝細胞の急速・広範囲の障害,脱落によって必要な肝機能が営めなくなった状態
B型,C型肝炎の一部に発症する.極めて稀だが薬剤で誘発されることもある.
[劇症肝炎診断基準]
「劇症肝炎とは,肝炎のうち症状発現後8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて
肝性昏睡U度以上の脳症をきたし,プトトロンビン時間40%以下を示すものとする.
そのうちには発病10日以内に脳症があらわれる急性型と,11日以後に発現する亜急性型とがある.」
症状:強い倦怠感,食欲不振,嘔気,頭痛,不眠,発熱,関節痛,筋肉痛
高度の黄疸,,肝性口臭,肝萎縮,出血傾向,精神神経症状
検査所見:タンパク尿,アミノ酸尿,白血球増加,高度のビリルブイン血症,
GOT>GPT,プロトロンビン時間の著しい延長,コレステロール低値
治療:
1)ステロイド療法
2)グルカゴンーインスリン療法
3)血漿交換
4)人工肝補助装置
5)特殊組織アミノ酸療法
3.持続性肝炎
肝炎の症状が6ヵ月ないし1年以上続き,肝臓の組織像は急性肝炎の所見を示す場合
4.慢性肝炎 chronic hepatitis
少なくとも6ヵ月以上存続する肝臓の炎症で、肝炎ウイルス感染が原因と想定されるもの
疫学:A型肝炎の慢性化はなく,B型が約30-40%,残りの大部分がC型肝炎
病理所見:門脈域の円形細胞浸潤と線維増生
臨床所見:全身倦怠感,易疲労感,食欲不振等
しかし特徴的所見に乏しい
診断:
1)血清トランスアミナーゼの動揺(GPT>GOTの傾向)
2)γーグロブリン上昇,膠質反応異常
3)ICG,BSP停滞
確診:肝生検所見
経過・予後:難治性だが生命に対する予後は概して良好
約80%は臨床的に不変もしくは治癒
活動性の8-25%が肝硬変へ移行
治療:長期にわたる生活指導が必要.過栄養に留意
活動性の強い例では副腎皮質ホルモン,免疫抑制剤
最近は抗ウイルス剤,インターフェロン療法
5.肝硬変 liver cirrosis
全肝疾患の終末像
びまん性に線維の増生と肝細胞の壊死が見られ,かつ肝細胞の壊死に対する旺盛な再生が反復される
ことによって生じる肝小葉改築と再生結節の形成があり,さらに,これに伴って生じる肝内血管系の
変化(門脈および肝動脈と肝静脈の間における短絡の形成が存在する肝臓障害である.
病因:一般型 ウイルス(B型、C型) 80%
アルコール 15%前後
自己免疫 少ない
特殊型 胆汁うっ滞,うっ血,寄生虫,ウイルソン病など
病像:代償期 無症状の事もある
肝・脾腫,皮膚病変(クモ状血管腫,手掌紅斑)
非代償期 腹水,黄疸,肝性脳症,出血傾向
診断:非代償期では比較的容易
ICG,BSP,肝シンチグラムが有用
腹腔鏡,肝生検で確診
経過・予後:肝癌合併,上部消化管出血,肝性昏睡が主要死因
治療:長期管理
代償期には可能な限り社会復帰 非代償期には入院,治療
6.原発性肝癌 liver cancer
肝細胞癌,胆管細胞癌,混合型
疫学:中年以後の男性に多い
病因:肝炎ウイルス,特にB型肝炎ウイルス.肝硬変
病理:肝硬変を高率に合併
肉眼的には,塊状型,結節型,びまん型
肝細胞癌ーEdmondson分類 T−W型
転移ー肝内,リンパ節,肺
臨床症状:初期には無症状,非特異的症状
上腹部痛,肝腫大,黄疸,発熱,難治性腹水,体重減少
診断:1)GOT/GPT比3.0以上,黄疸と程度と不釣合なALP上昇
2)AFP上昇
3)超音波・腹部CT;腫瘤像
4)肝シンチ
5)血管造影
6)腹腔鏡,肝生検
経過と予後:症状出現ないし診断ご1年以上の生存例少ない
死因ー肝不全,消化管出血,腹腔内出血
治療:1)外科的切除
2)肝動脈塞栓術
3)制癌剤動注
7.薬剤性肝障害
1)薬剤性肝障害をまず疑う
薬剤服用の詳細な聴取
2)アレルギー反応
初発症状ー発熱,発疹,皮膚掻痒感
末梢血液像ー好酸球増多,白血球増多
3)臨床像
肝細胞障害型−ウイルス性肝炎との鑑別
混合型
胆汁うっ滞型−閉塞性黄疸との鑑別
4)薬剤感受性試験−−起因薬剤の推定
1]リンパ球幼若化試験
2]遊走阻止試験(MIT,LMIT)
3]皮膚試験
5)起因薬剤服用の中止
軽快(一部慢性化)
8.アルコール性肝障害 alcholic liver disease
1日あたりアルコール換算80g(日本酒で3合以上)以上,5年以上の常習性飲酒者に
しばしばみられる肝病変で,形態学的にアルコール性脂肪肝,アルコール性肝炎
アルコール性肝硬変,アルコール性肝線維症に分類される.
1)アルコール性脂肪肝 alcoholic fatty liver
肝細胞内の脂肪蓄積はアルコールに対する初期の最も一般的に見られる反応
筋腫と栄養の改善によって比較的すみやかに改善する
2)アルコール性肝炎 alcoholic hepatitis
長期にわたる大酒家のごとく一部に大量の飲酒を引金として起こる
食欲不振,悪心,嘔吐,黄疸等の急性肝不全症状を来す事が多い
3)アルコール性肝硬変 alcholic liver cirrosis
9.脂肪肝 fatty liver
[脂肪肝をきたしやすい状態]
1.肥満 2.糖尿病 3.アルコール乱用 4.副腎皮質ステロイド剤の長期投与
5.栄養障害 6.タンパク合成阻害作用の強い薬剤 7.妊娠時 Rey症候群
治療:1)肥満に伴うもの;食事療法,減量
2)糖尿病に伴うもの;糖尿病のコントロール
3)アルコール乱用によるもの;禁酒
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