第9章:治療ーミームの選択


 科学上の革命は、奥深い哲学の問題を生み出すことがある。ミーム学の革命も例外ではない。私たちや社会に取り付いたマインド・ウイルスに対する治療を議論する際に、とても大切な倫理的問題が持ち上がる。
 
第一の問題は、どんなミームを、自分をプログラムするために残しておくべきか。
第二の倫理問題は、どんなミームで人々をプログラムしたいのか。どんなミームを広めるべきなのか。

ミームは、私たちの幸せは勿論のこと、私たちの生存を助けるために自動的に進化するわけではない。ミーム進化は、遺伝子進化とはまったく異なる時間スケールで進み、とてつもない速さで進行していく。私たちは、それに立ち向かうか、あるいはされるがままにしておくのか、いずれかの選択をせざるをえない。
 
ミーム進化を、人類や地球上の生物などにとって利益となるようコントロールしたければ、私たちはミーム進化に敢然と立ち向かわなければならない。
 
私たちは、つぎの二つのどちらかを実行しなければならない。満たされた人生を送りたいという望みや、よりよい世の中を作る望みを捨ててしまう。あるいは、自分をプログラムするミームや、世の中に広めるべきミームを意図的に選択する。
 
 
多くの人はこれらの倫理問題の上に安住し、その存在さえ気づかない人もたくさんいる。
 
マインド・ウイルスがあなたの頭の中に放り込んだプログラムに対して、あなたが従わなければならないような感じを常に受けているからである。あなたがウイルスから解放されない限り、本当は人生を変えることができ、あなたにとって何が一番大切かを見極めて、そのことに人生を捧げることができるということになかなか気づかないのである。

本章では、まず「自分をどんなミームでプログラムすべきか?」という第一の倫理問題を議論することから始める。そして、あなたがどんなプログラミングをされているかを知る方法をいくつか説明し、いま現在あんたが感染しているマインド・ウイルスから解放されるよう手助けしたい。最後に、社会、特に次の世代の子どもたちに対してどんなミームを伝えたらよいかという第二の倫理問題を議論する。

まず、リラックスして、頭の中を空っぽにする。もし何かの考えが入り込もうとしてきたら、それに反応してはいけない。ただその存在に気づき、そのまま通り過ぎるのを待つのだ。これを5分間続けた後に、どんな気分になったかを確かめてほしい。
 
もし頭の中の会話を消すことができれば、マインド・ウイルスの虐待から逃れるための大きな一歩を踏み出したことになる。しかしそれでも、どんなプログラムがあなたの心の中で走っているかということはまだ完全には分からないだろう。ということは、そのプログラムが人生の目的を支えているからであり、また、マインド・ウイルスに感染していることも一因だろう。しかし少なくても、自分の意志でそのプログラムを止めることは出来るようになったはずである。
 
さらに、心を静めると、直感をもっと利用できるようになる。直感に従うことにより、型から抜け出し、自分がそんな方向に進みたいとは気づいていなかったところへ導いてもらえるのだ。
 
ほとんどの人は、人生に何を求めるかをはっきりとは分かっていないのが現状だろう。自分の考えを把握し、ものの見方を変えることが、自分が誰であるかということと、自分がいかにプログラムされているかということとの違いを理解するのに、一番役立つ。



学習ピラミッド


 マインド・ウイルスは、人間の学習スタイル、あるいは発見的方法を利用する。そのため、あなたが生まれつき持っている生存と生殖に関する発見的方法から学ぶ術を発展させることにより、マインド・ウイルスに対して免疫をもてるようになる。
 
実生活において発見的方法を学習するには、いくつかのレベルがある。そのレベルの積み重ねがピラミッド構造のようなものを形成している。ピラミッドのある段から次の段へ上がるには、新たなことを学ぶだけでなく、新たな学習方法も身につけなければならない。それにより、世の中の見方もまったく新しいものになるのである。

学習ピラミッドの第一レベルは、あなたが持って生まれた遺伝子プログラムである。このレベルは進化の過程を通じて学習されたものであり、あなたはただその恩恵にあずかりながら人生を漂い歩いていればよい。
 
レベル1は、人間やすべての動物が持っている本能的衝動から成り立っている。レベル1の学習により、あなたは自然界に生き残り、子孫を増やすことが出来る。相手を引き寄せる魅力や、相手を遠ざける嫌悪、空腹、怒り、恐怖、性欲などを持っていれば、それ以上、何も学ばなくても生きてゆくことは出来る。幼稚園から大学院まで、昔からある教育はすべて、このレベル1から脱出するために作られた。
 
学習ピラミッドの第二のレベルは、読み書きや数学である。それに加え、コンピュータ・プログラミング、政治科学、心理学、宗教教義などもこのレベルに属する。つまり,一般教養、技能、学問などが、レベル2を形成しているのだ。
 
レベル3では、人生をあなた個人のプログラミングと目的の二つから作り出されたものとして見ることを学ぶ。レベル3では、あなたは人生の目的を選び、それを最優先させて持ち続ける。人生の目的のために十分尽くせば、この目的とは関係ない古いミームによって作り出される認知的不協和が何らかの再プログラミングを行うだろう。すると、自分が目的を達成するのに前よりもずっと効率のいい人間になっているのに気が付くだろう。人生の目的を選ぶなら、やりがいがあり、動機付けが出来、意義深く、満ち足りた気分になれるようなものを選んだ方がいい。そうすれば、人生を謳歌でき、やりたいこともうまくいくだろう。



ミームを広める


意識的にミームを広めることにより、人々の生活にプラスの変化をもたらすことができるとしたら、どんなミームを広めたら良いのだろうか。この問題はあなたに任せることにする。あなたはどんな世界に住んでみたいだろうか。さあ、外に出てそれを実現しよう。

他の大人の信念に影響を及ぼす行為、すなわち意識的にミームを広めることをあなたが道徳的にどう考えるかは別として、子供達の信念に影響を与えること、すなわち教育を施すことの価値は、誰もが認めることだろう。ミーム学から子供の教育に関してどんな新しい考えが引き出せるのだろうか。ミーム学を使って子供達をマインド・ウイルスの有害な感染から守ることができるだろうか。あるいは一度感染した子供を治すことはできるであろうか。

誰が決めるのか。子供達が巣から放り出されて、自力で空を飛べるようになるまで、誰が子供達に施す最初のプログラミングをコントロールするのか。いまのところ、それは適当に行われている。実際の所、学校の力は弱く、子供達はテレビからプログラミングのほとんどを受けている。

私たちは、あまり意識して学校において子供達に人生の指針を与えようとはしていない。多くの教師が働きすぎで、努力しているのは自分たちだけで、やるべきことも多すぎると文句を言っている。その結果、家庭生活にあまり恵まれない子供達が掃き出され、強力なミームを伴う若者の間にサブカルチャー、すなわち非行という形で爆発してしまうのだ。

子供達に価値観や指針を与えるのは親の役目だという主張は、家庭が崩壊している子供達には当てはまらない。学校こそが、こうした子供達の興味を引きだし、彼らにも素晴らしい人生を持つことができるのだということを示してやれる場なのである。

やり方はどうであれ、教育におけるつぎの大きな変革は、暗記から考え方への転換と同じくらい大きなものでなければならない。教育の次の段階は、子供達に人生で何が一番大切かを自分で決めるように教えることである。つまり、学習ピラミッドのレベル3へのステップアップさせるのである。
これはすなわち、自分が何に対して心を高揚させ、何に刺激され、どうやったら自らの価値(つまり自負心)を感じられるようになるのか、何が人生の意味を与えてくれるのか、そうしたことを自分で見つけられるようにさせることである。

すべての子供達が、自由で幸福な人生を送ることができ、卑屈になったり、絶望したりすることのないよう、かれらをプログラムできるような、すぐれたカリキュラムをつくるのは大仕事である。さらに、そのカリキュラムを学校に売り込んで実行させるとなると、もっと大変だ。ほとんど不可能かもしれない。けれども、ほかに何ができよう

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