第1章:最初の警告



1991年、コペンハーゲン、デンマーク


 スキャベク教授は、35年間にもおよぶ熱心な研究の結果、憂慮すべき重大な結論にたどり着いた。男性の生殖能力が深刻な問題に直面している、というのだ。しかも、生殖能力を脅かす変化のいくつかはしだいに深刻な問題に直面している徴候がある。

彼は、精巣癌の研究を続けるうちに、本来ならごく稀にしか発生しないはずのこの病気が、あまりに多いことに驚いた。統計を調べた彼は、心配な傾向を発見した。精巣癌の発生件数は急激に上昇し、この40-50年で3-4倍になっていた。

彼は、精巣癌の前駆細胞である異常細胞を発見したが、さらに彼はこの細胞は胎児に見られるような極未熟な細胞で、精巣癌を引き起こす出来事が、極早い時期、おそらく子宮内で起こり、発生の最初の段階で、未成熟のままになってしまったことを示唆すると考えた。

彼は、成人の精巣癌は出産前の出来事が原因だが、思春期にホルモンの刺激を受けるまでは病理学上の進展はない、との仮説を立てた。この考えは今では広く指示されている。研究は、子宮内の男の胎児の発達に何らかが影響を与えているかもしれないという、最初の重大な手がかりをもたらした。

子宮内の胎児の発生プロセスは自然の驚異の一つであり、各器官を間違いなく形成し、体内の定められた場所にきちんと配置するための一連の段階的反応のつながりは、あまりの複雑さから、生物学的に解明するのはおよそ不可能だ。

人間の胎児は、発生の最初の時点ではすべて女性だ。だが、男性になる胎児は、妊娠6週目ごろになると、男性生殖器である精巣が左右の腎臓の近くに各一個ずつ分化し始める。精巣は成熟すると精子を作るが、胎児の段階ですでに男性ホルモンのテストステロンを分泌する。これが他のホルモンとの相互作用で、男性生殖器の発達を導く一連の動きの引き金をひく。女性の生殖器官の原基であるミュラー管は退化し、吸収されてしまう。精巣は妊娠10週目ごろに腎臓付近から下降し始め、出資直前には陰のうに到達する。
 

次にスキャンベックらは、人間の精子数が減少しているという報告を検証するために、1938年以降の世界中の科学文献をしらみつぶしに調査し、精子数のデータを洗い出した。過去50年間の世界中の文献を調べた。最終的に過去50年間の60件あまりの研究、のべ1万5000人を対象とした。

結果は予想をはるかに超えて鮮明で、恐るべきものであった。精液の質が劇的に低下している。一回の射精に含まれる精子の数は、この50年間に、約50%も減少していた。精液の量も大幅に減少していた。

1940年には精液1ミリリットルあたり1億1300万個あった精子の数が、1990年には6600万個に急激に減少していた。また、生殖能力に支障が出るレベルとされている精子数2000万以下の男性の数は約三倍になっていた。

女性が1ヶ月に排卵する卵子はたった一個なのに対して、男性はわずか一秒に数千、一日に億単位という天文学的な数の精子を作り出す。それほど大量にあるのだから心配ないようにも思えるが、問題はそれほど単純ではない。

精子数が1ミリリットルあたり3000万を下回れば、まずは支障が生じやすく、2000万個を下回れば、子供を作るのはなかなか困難だろう。500万以下では、ほとんどの場合不妊となる。

精子の数が極端に多いのは、精子が特別な任務を果たさなければならないからだと考えられている。精子は大切な遺伝情報を伝えるDNAという積み荷を、他人の体内へ運ぶ唯一の細胞だ。そればかりか、精子は他人である女性の体内では、破壊しなければならない異物として認識され、攻撃される。

この障害を乗り越えた精子だけが、たった一つの卵子を探し当てるのだが、子宮内の卵子に到達するには、人間にすれば60-80キロにも匹敵する距離を泳がなければならない。一個の射精で放出される億単位の精子のうち、卵子まで到達できるのはほんの数十個にすぎない。正常な精子が多いほど、受精の可能性が高い。精子数があまりに少なく、質が悪ければ、受精の確率は低下する。

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