第8章 暴露ルート


目に見えなくとも、私たちが祖先の時代と非常に異なる世界に生きていることは、さまざまな証拠が示している。

環境中に弱い性ホルモン類似作用を持つ、極微量の化学物質があふれるほど存在し、私たちはそれらに触れ、食べ、飲み、呼吸して生活しているが、そういう化学物質の多くは、ほんの100年前には存在すらしていなかったのだ。実際、分子レベルで見れば環境はすっかり変容しているという説さえある。

当初はこういったホルモン類似物質は、農薬や工業製品などの一部のみに含まれていると考えられていたが、プラスチックからも溶出することがわかって、新しい研究の波が起こった。科学者たちはさまざまな暴露ルートを探るうち、エストロゲン様化学物質が日常使われている品々に極めて大量に含まれていることを発見した。



プラスチックからの暴露


1994年、グラナダ

1980年代後期、アナ・ソトとカルロス・ソネンシャインが、実験を汚染した謎のエストロゲン様化学物質の正体を突き止めようと悪戦苦闘していた最中、スペインから来た癌研究の専門家ニコラス・オレアが研究室に加わった。

オレア教授は、ノニルフェノールとその関連物質がエストロゲン様作用を持つということに強い興味を持った。さらに、フェルドマン教授が、ビスフェノールAもエストロゲン様作用をもち、実験結果とそれがプラスチックから溶出していたと発表すると、さらに関心を深めた。

彼はこれらの研究結果について、植物毒性学の専門家である姉のファティマ・オレア博士と話し合った。彼女は、ビスフェノールAを含み、それを食物へ溶出させている製品は他にあるだろうか、と考えた。

ほどなく、彼らはビスフェノールAがポリカーボネート樹脂以外のプラスチックにも含まれており、それが食品缶詰の内部コーティングや、瓶の蓋、水道管の内張りなどに使用されていることを発見した。そして、これらの保護用のプラスチックからビスフェノールAが缶内部の食物に溶けだしていたのだ。

さらに、子供の虫歯予防に使われているシーラントや乳幼児の哺乳瓶の一部からもビスフェノールAが溶けだしていることがわかった。

スタンフォード大学での研究で最初に警鐘を鳴らしたフェルドマン教授も、この問題を心配している。「プラスチック容器を使用する消費世界では、食品や飲み物が汚染され、人々がビスフェノールAにさらされる機会は数多く存在する。たとえばミネラルウォーターの容器はポリカーボネート樹脂製だ。プラスチックからビスフェノールAが溶け出て、人間にエストロゲン様作用を及ぼす可能性は現実のものであり、この可能性を評価するためにさらなる研究が許可されると信じている。」



農薬と工業化学物質からの暴露


プラスチック類に含まれるエストロゲン様化学物質のリストについて、マスコミで激しい討論が続いている一方で、研究室では、農薬や工業用化学物質がつぎつぎとエストロゲン様化学物質リストの仲間入りをしていた。

1.農薬および殺虫剤:DDTおよびその代謝物、エンドサルファン、メトキシクロル、ヘプタクロン、トキサフェン、ディエルドリン、リンデン。

2.工業用化学物質:PCB類の一部、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール類、ビフェノールAを含むビフェノール化合物の一部、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチルなどのフタル酸化合物、ブチルヒドロキシアニソール、o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール

3.薬品:DES、エチニルエストラジオール(ピル)

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