自己複製するRNAからやがて生命の進化がはじまった。


原始地球で自然に生成した有機化合物が、命ある生命体へと飛躍するには、自己複製し子孫を残すことのできるシステムを作り出す必要があった。

この最初の自己複製機構を推定するには、現存するすべての生物が今も共通に保持している遺伝情報翻訳の仕組みがヒントになる。すなわち生体内で遺伝情報はDNAに保存され、生体反応はすべてタンパク質により営まれるという共通の仕組みである。

しかし、ここで大きなパラドックス(逆説)に直面する。現在のタンパク質合成にはDNAが必要だが、そのDNAの複製はタンパク質によって行われている。このパラドックスを解くには、原始生命体においてDNAとタンパク質のいずれが先に出現したかという、ニワトリと卵の問題を解くのに等しい。この答えとして現在最も有力視されているのが、生命は自己複製することができるRNAから始まったとする「RNAワールド仮説」である。1980年代に簡単な反応を触媒することができるRNAが生体内で実際に発見され、この仮説はいよいよ真実味を帯びてきた。

40億年のはるか昔、地球上のどこかでRNAだけからなる自己複製系が誕生し、「進化」を始めた(RNAワールド)。RNAが不完全な自己複製によって、新しい性質をもったRNAが生まれることもあったであろう。環境によりよく適応できる性質を持ったRNAがたくさんの子孫を残し、さらに進化をとげていったと考えられる。

RNAワールド成立後、無機的に合成され原始地球上にすでに存在していたタンパク質と相互作用しうるRNAが出現し、RNAとタンパク質の共生の時代(RNA-タンパク質ワールド)をむかえた。

やがてRNAを鋳型としてDNAを合成するタンパク質が作り出され、RNAは触媒機能の多くをより高活性なタンパク質へ、遺伝情報の保存能力をより科学的に安定なDNAへと手渡していったと考えられる。その後数十億年の歳月をかけて遺伝暗号が整備され、このルールに従ってタンパク質を合成するシステムが成立し、DNAに遺伝情報を保存する現在の生物の世界、すなわち「DNAワールド」へと発展したのだろう。

生命の歴史の生きた化石の一つとして、現在のタンパク質生合成系で中心的な役割を演じている細胞内小顆粒のリボソームをあげることができる。リボソームはタンパク質とRNAから構成されている。最近の研究からタンパク質合成の主要な触媒機能、すなわちペプチド結合を生成する働きは、RNA成分が担っていることが証明された。生体の中で、タンパク質を作るという最も基本的な働きは、RNAが依然その主役を演じているのである。

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