急性膵炎


膵炎とは、膵臓に炎症が起こり、痛みを生じる病気で、急性膵炎と慢性膵炎に大きく分けられます。

急性膵炎と慢性膵炎では、病気の起こり方に違いがありますが、どちらも30−50歳代の働き盛りの男性に多いという点では共通しています。

また、いずれの膵炎も、アルコールの飲み過ぎで起こるケースが多い病気です。大量飲酒の習慣に加えて、食生活などの日常的な生活習慣が病気の発生に関係しているといわれています。



どういう病気か


ところで、膵臓がどこにあるか、一般にはあまり知られていないようです。
膵臓は、胃のちょうど裏側にある、長さ15cmぐらいの臓器です。大変重要な働きをしている臓器です。

膵臓の働きは、外分泌と内分泌の二つに分けられます。外分泌は消化液である膵液を分泌し、十二指腸に流出する働きです。膵液には、トリプシン(タンパク質を分解)、アミラーゼ(澱粉を分解)、リパーゼ(脂肪を分解)などの消化酵素(膵酵素)が含まれています。膵炎に関係があるのは、この外分泌の働きです。

もう一つの内分泌の働きは、膵臓のランゲルハンス島という部分から、血糖値を調節するインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌するものです。インスリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を上げる作用を持っています。、この内分泌の働きは糖尿病に関係があります。

急性膵炎は、膵液に含まれる消化酵素が、突然膵臓自体を消化してしまうことで起こります。本来、膵臓には膵液による消化を防ぐ仕組みがありますが、ではなぜ、膵臓を消化することが起こるのでしょうか。

膵液が流れる膵管は胆汁が流れる胆管と合流して、十二指腸乳頭に開口していますので、膵液は胆汁と混じり合って、十二指腸に流れ込むことになります。そして、膵液は胆汁と混じり合い、十二指腸の中に入ってから初めて、活性化して消化する力を発揮することになっています。

ところが、何らかの原因で、膵液の流れが悪くなると、膵臓の中に膵液がたまっていきます。そこに膵管を逆流してきた胆汁が混じると、膵液が活性化され、膵臓内で消化力を発揮してしまうのです。膵液には、タンパク質を分解する消化酵素(トリプシン)が含まれているので、膵臓自体が消化され(自己消化)、膵臓の細胞が溶けて炎症が起こるのです。これが急性膵炎が起こる仕組みです。



急性膵炎の原因


胆石やアルコールの過飲が原因となることが多い
膵液の流れが悪くなる原因には次のようなものがあります。なかでも、胆石やアルコール過飲によるものが大半を占めています。

「胆石」:胆嚢から流れ出た胆石が胆管の十二指腸開口部に詰まって、胆汁や膵液の流れを止めると、膵液が膵臓内にたまってしまいます。そこに胆汁が逆流してくると、膵液が活性化され、膵臓の組織を自己消化して、急性膵炎が起こります。

「アルコール」:アルコールによる発症の仕組みは、完全には解明されていません。膵管と胆管が合流し、十二指腸に開口している部分に、アルコールの飲み過ぎの影響で浮腫(むくみ)が生じると、膵管が狭くなって、膵液の流れが悪くなります。その結果、胆石の場合と同じように、膵液が膵臓内にたまり、胆汁と混じり合って自己消化を起こし、急性膵炎が起こると考えられています。
また、アルコールそのものによる膵臓の細胞が傷害されることも成因をして挙げられます。

「その他」:内視鏡的胆道膵管造影検査の後や、胃や胆石の手術後に起こるもの、薬物の使用や高脂血症等が原因のものもあります。また、検査をしても原因が分からない特発性のものもあります。



症状:


一般に、立っていられないほど痛いと形容される痛みが、急性膵炎の典型的な症状です。膵臓の周囲には、神経が多いので、痛みは大変強くなります。

胃の裏側という膵臓の位置からいって、上腹部の痛みが典型ですが、背中の痛みや腰の痛み、腹部全体の痛みを来すこともあります。急性膵炎の痛みは和らぐことなく、次第に強くなります。

しかし、急性膵炎の場合、痛みの程度が必ずしも、重症か軽症かの判断材料にはならないことも、留意しておく必要があります。

多くは吐き気や嘔吐を伴います。膵臓の炎症が腹部全体に及んで、腸の働きが悪くなり、腸閉塞のような状態になるため、吐き気や嘔吐が起こると考えられています。

重症の急性膵炎では、痛みや吐き気、嘔吐ともに、ショック症状が起こることがあります。腎臓や肺、肝臓などの複数の臓器に同時に、あるいは次々に障害が生じ、それに加えて出血が止まらなくなったり、意識がなくなったりする多臓器不全が起こるのが特徴です。感染症が加わった場合は、発熱など敗血症の症状が出てきます。この重症急性膵炎は、死亡率が20−30%に及ぶという危険なものなので、緊急の治療が必要です。



検査・治療


1. 検査:急性膵炎の患者さんは、通常腹部の痛みを訴えて受診されますが、腹痛を起こす病気にはいろいろな種類があるので、次のような検査で急性膵炎の診断が行われます。

1) 血液検査・尿検査:膵臓に炎症が起こると、膵臓の消化酵素であるアミラーゼやトリプシン、リパーゼなどが血中や尿中に大量にあふれ出てきます。血液や尿を調べ、これらの消化酵素の値が高いときには急性膵炎が疑われます。

2) 画像検査:超音波検査・CTなど画像診断が行われます。いずれも、患者さんに与える負担が少ない検査といえます。なかでもCTは、膵臓の炎症の広がりや腹部や胸部の変化などを正確に把握し、病状の進み具合を判断できるので、効果的な検査です。

2. 治療:急性膵炎では、内科的治療が基本になります。状況によっては膵臓の一部を切除したり壊死組織を取り除いたり、胆嚢摘出など、外科的治療が行われることもあります。

1) 絶飲・絶食:まず行われるのが、絶飲・絶食です。食物をとると消化酵素の分泌を促進するため、絶食にします。また、腹部全体に炎症が広がり、腸の動きが悪くなるため、水を飲むことを禁止されます。軽症の場合には、絶飲・絶食を2−3日続けるだけで治ることもあります。

2) 膵酵素阻害薬
膵酵素が血中にあふれ出るを、それを引き金に呼吸不全や腎不全などの合併症を引き起こす恐れがあるため、膵酵素や種々の有害物の働きを抑える膵酵素阻害薬が使用されます。

3) 抗生物質
感染症を防ぐ目的で、抗生物質が用いられます。膵臓に炎症が起こると、膵臓の組織や膿瘍部分に細菌感染が起こりやすくなります。特に重症膵炎で死亡する場合は、感染症が原因のことが多いので、感染症を防ぐことが重要です。

4) 原因を取り除く

1. アルコールが原因の場合禁酒する。

2. 胆石が原因の場合は、胆嚢を調べ、場合によっては、胆嚢を摘出する手術を行う。

3. 高脂血症が原因の場合は、その治療を行う。

5) 集中治療
重症急性膵炎では、いろいろな臓器の機能不全が同時に起こってくるので、全身を管理し、集中治療のできる医療施設で治療を受ける必要があります。



再発防止


急性膵炎は一過性なので、治療によって症状が治まれば、膵臓にはほとんど障害を残さないと考えられます。しかし、ほかに発症の原因が残っていれば再発することもあります。

もし、腹痛が起きたら受診して原因を調べてもらうことが大切です。腹痛は急性膵炎だけでなく、いろいろな病気の警戒信号でもあります。

また成人病になりやすい食生活にも気をつけ、暴飲・暴食を避ける生活習慣を身につけることが重要です。




急性膵炎は様々な原因、機序によって膵酵素が活性化され、それによって膵自体が消化される、いわゆる自己消化現象に起因する疾患である。

本症の発生や進展は、膵を中心とした数々の防衛機能が、物理的・科学的攻撃因子により破綻を生じ、、不活性化の膵酵素が次々に活性化され、それら及びその結果生じた有害物質が膵、膵周辺や後腹膜に漏出したり、血中に逸脱することによってもたされる。即ち本症の極初期には膵の間質性浮腫のみであるが、さらに進展してくると膵周囲や隣接臓器に病変が波及し、その一部では更に心、腎、肺、肝、中枢神経などの遠隔重要臓器が傷害されて、多臓器障害multiple organ failure(MOF)をきたし、凝固系、免疫系も機能不全に陥り、極めて重篤なものになる。

本症の診断に最も重要な症状である腹痛は重症例では訴えない場合があり更に最も重要な血液amylaseの値には20%前後のfalse positive とfalse negativeがある。

死亡原因の最も頻度の高いのはショックであり、発症3日以内に多く、ARDSを始めとする呼吸器障害はそれより遅れて2週間まで、消化管出血、DICなどはこれらの期間を通じてみられ、敗血症などの感染症は15日以降の後期にみられ病期により死因に差がある。

急性膵炎が初期から後期にかけて、hypovolemic phase, cardio-respiratory phase, infectious phaseの3期に分けられる根拠がここにある。


急性膵炎の治療
急性膵炎は、軽症で経過する限り極めて予後良好な疾患である。しかし 一旦重症化するとその予後は極めて予後不良な疾患でもある。従って本症の診断が確定したら、かならずその成因と重要度を判定し、重症化しないような対策を立てて治療を始めるべきである。その様な恐れがある場合は時期を逸することなく、積極的な治療を行い救命すべきである。また内科的治療に限界を感じたら、直ちに外科的治療を行うべきであり、その適応の時期についても熟知しておくべきである。

1) 腹痛に対する処置と膵外分泌の抑制

2) 水分、電解質の異常に対する是正、処置

3) 活性化膵酵素の不活性化

4) 感染に対する処置

5) 合併症に対する処置

6) 外科的治療の時期の決定

急性膵炎の治療の根幹は図6に要約される。全経過中にどの様な合併症が置きやすいかを熟知し、図に示すような循環障害、腎障害、呼吸障害、血液凝固異常などの出現を防いで、MOFへの進展を防止することである。



1) 本症の治療中に症状、腹部所見、臨床検査所見を詳細に把握し、でき るだけ早期から重症度を把握することである。軽症以外はその他に血圧、呼吸、尿量などのVital signを経時的にチェックし、表3にみられるような所見が得られたら、患者を直ちにICUへ移し、集中管理下で積極的な治療をおこなうべきである。

2) 主要臓器障害の数が増す毎に死亡率は上昇し、障害臓器の数が1つの場合の死亡率は44% 、2つの場合は71%、3つ以上で全例死亡という報告もある。重症膵炎にもっとも陥りやすいMOFの病態を早期に把握し、その発現防止のための的確な治療を施すことがもっとも肝要である。

3) 最も重要なことは病初期におけるショックの治療と、それに後続する腎不全の予防、消化管出血やDICの予防、ARDSなどの呼吸障害の予防と対策および後期の感染症の予防である。

4) 本症では少なくとも約2000mlにもおよぶ蛋白質を含む体液の喪失があり、preshockの状態になっているので、蛋白質や血液、水、電解質の喪失の程度を早期に把握し、詳細な分析にもとづく的確な補液を早く始めることが最も大切である。すなわち少なくとも1日2000−3000mlの補液が必要である。

5) 血清アルブミン値が3mg/dl以上に維持するように血清アルブミンやプラズマネートの投与が必要

6) 貧血が高度の場合は輸血を行い腎不全あるいは呼吸不全の進行を阻止することが大切である。

7) 尿量が30ml/h以下となり血圧低下がみられた場合は、中心静脈圧を測定しつつ、補液量をさらに増やし、有効循環血液量の維持に努め、呼吸管理を強化し、ショックや腎不全への進展を予防する。

8) 消化管出血やDICに対しては、本症では早期にhypercoagulabilityの状態となり、これが血管内凝固を引き起こし、DICを生じさせる可能性があるので、本症の治療においては常に念頭にいれて置かねばならない。このため早期から坑酵素製剤の大量投与、制酸剤やH2-recepter antagonistが用いられる。

9) 呼吸障害は、胸水、肺水腫、無気肺が発生しやすく、ARDSの形をとる場合もある。しかし潜在性の呼吸不全がかなり見られるのでPaO2の低下がある場合は十分な呼吸管理が必要となる。

10) 感染症に関しては発症早期から敗血症様の症状を呈するものと、二次感染により経過中に敗血症を呈するものがある。重症例ほど壊死部が多く、膵膿瘍や化膿性腹膜炎の合併頻度が高くなる。

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