胃・十二指腸疾患
B:胃・十二指腸疾患
1.胃炎 gastritis
1)急性胃炎 acute gastritis
概念・定義:急性胃炎は各種の原因によって起こる胃壁、とくに胃粘膜の炎症過程である。原則として、短期間の経過で治癒して慢性化しない。
分類:A.急性外因性胃炎
a.急性単純性胃炎:食事(量・内容・温度)の不摂生による
b.急性腐食性胃炎:腐食剤(強酸・強アルカリ・ヒ素)の誤飲
c.放射線性胃炎:X線治療による
B.急性内因性胃炎
a.急性感染性(中毒性)胃炎:腸チフス、大腸菌、、ブドウ球菌等
b.急性化膿性胃炎:化膿菌が胃潰瘍や胃炎の際に粘膜欠損部か ら侵入
c.アレルギー性胃炎:卵、牛乳、、魚肉の特異体質者
症状:食欲不振、上腹部不快感、胃部圧迫感、腹部膨満感、腹痛
口渇、悪心、嘔吐、胸やけ
診断:病歴と自覚症状・他覚症状から判断すれば一般に容易に診断できる。
治療:症状に応じて半日から1,2日絶食させる。その後症状に応じて流動食、粥食、更に常食へと変更する。
薬物療法として対症的に腹痛に対して鎮痙剤を用いるが、制酸剤、粘膜保護剤、更に鎮静剤との併用が有効なことが多い。
予後:予後は良好で、一般に適切な治療によって数日間で完治する。
2)慢性胃炎 chronic gastritis
原因:
Schindlerの分類
1.表層性胃炎
2.萎縮性胃炎
3.慢性肥厚性胃炎
診断:X線検査
内視鏡検査
内視鏡直視下生検
治療:まず原因を追及し、原因と考えられる因子を取除く。
1.食餌療法
2.薬物療法
予後:経過は長く、軽快と増悪を繰返して長期に及ぶことが多い。
萎縮性胃炎の場合には、貧血と癌性変化に注意する。
2.胃下垂症 gastroptosis
健常者で胃のX線診断を行なうと、立位充盈像で胃の下極は臍または腸骨稜から2−3横指下にあるが、 これをこえて骨盤腔内に達する場合を胃下垂と言う。胃下垂は女性、とくに経産婦に多く見られる。
胃の緊張が低下または消失している状態を胃アトニー症と言う。
3.胃・十二指腸潰瘍 gastric and duodenal ulcer
胃・十二指腸壁がなんらかの原因で胃粘膜から分泌される塩酸およびペプシンによって自己消化され て潰瘍を生ずるものと考えられる。
男:女=約3:1
好発年齢 胃潰瘍が50歳代、十二指腸潰瘍が40歳代
好発部位 胃潰瘍 小彎、とくに胃角部におおく、ついで後壁
十二指腸潰瘍 幽門輪から1−2cm以内の球部前後壁
原因:1.攻撃因子:胃液の消化力を増加して消化管粘膜の抵抗力を減退するように働く因子
2.防御因子:胃液の消化力を低下するか、粘膜の抵抗性を増加するように働く因子
症状:1.疼痛
1)早期疼痛(食後1以内に発するもの):噴門部潰瘍
2)後期疼痛(食後2−3時間に発するもの)
3)空腹時疼痛(それ以降に発するもの):十二指腸潰瘍
2.悪心、嘔吐
3.出血:コーヒー残渣様、タール便
検査:1.胃液検査
2.X線検査
3.内視鏡検査
合併症:1.穿孔:潰瘍底が漿膜を破って腹腔内に突き抜ける状態→急性汎発性腹膜炎
穿通:潰瘍底が漿膜面を貫いても、それが腹膜や膵臓等の隣接臓器によっておおわれる場合→限局性腹膜炎、化膿巣
2.出血
3.幽門狭窄
予後:生命に対する予後は出血・穿孔・幽門狭窄などの合併症を伴わない限り良好
しばしば再発を繰返すのが特徴
治療:1.食餌療法:胃の負担を軽くし、その運動・分泌の安静をはかり、治癒を促進させる。
2.薬物療法:攻撃因子である胃液の消化作用と分泌を低下させ、胃粘膜の防御作用を強める。
1]制酸剤:胃液の塩酸を中和
2]抗コリン剤:疼痛の緩和だけでなく、胃液分泌の抑制・胃腸運動の抑制
3]抗ペプシン剤
4]鎮静剤・精神安定剤
5]その他:ヒスタミンH2受容体拮抗剤
3.外科的治療
1)穿孔
2)出血
3)幽門狭窄
(付録)
1)AGML(急性胃粘膜病変):急性の症状を伴って突然発症する胃粘膜病変
急性の上部消化管症状に対する緊急内視鏡検査において、出血性胃炎、出血性びらん、急性胃潰瘍およびこれらの混在の所見が認められるもの。
1]ストレス性
1}精神的ストレス:若年者に多く症状が強く、発生部位も前庭部に多い。
2}肉体的ストレス:胃体部に多く、心窩部痛等の自覚症状は少ないが、突然 吐血・下血を訴える。
2]薬剤性:解熱・鎮痛・消炎剤
3]飲食性:アルコール、ニンニク、激辛食品
4]血管性:動脈硬化性変化の強い老齢者
5]内視鏡後
2)マロリーワイス症候群:飲酒、食中毒、妊婦等、嘔吐直後に噴門部に 発生する粘膜 下 にいたる縦の亀裂を生じ,出血の原因となる。
4.胃癌 gastric cancer
日本の胃癌の頻度は世界的にも多く、胃癌多発国である。
全癌死亡のうち、胃癌死亡の占める割合は約40%。男性>女性 50−60歳に多い
好発部位:胃角部、前庭部小彎
病型:1.早期胃癌:癌浸潤の浸潤度が粘膜内または粘膜下層に限局しているもの。
(5年生存率 粘膜内癌 93%、 粘膜下層癌 83%)
2.進行癌:癌浸潤が粘膜下層を越えるもの
[早期癌分類]
T型(隆起型):粘膜表面から隆起を示す早期胃癌
U型(表面型)比較的表面が平坦なもので、次の3型に分ける
Ua型(表面隆起型):粘膜面から僅かに隆起する早期癌
Ub型(表面平坦型):肉眼的には粘膜面に凹凸も隆起もみとめられない平坦な癌
Uc型(表面陷凹型):粘膜面から僅かに陷凹する早期癌
V型(陷凹型):深い潰瘍があって、その辺縁の粘膜下層までの浅い部分に癌浸潤が見られるもの。
[進行癌ーBorrmann分類]
Borrmann1型(ポリープ様癌)
限局性、孤立性でポリープ状に胃の内腔に突出するもの
Borrmann2型(限局性潰瘍性癌)
大きな平皿状の潰瘍を形成する。その辺縁は堤防状にたかく隆起し、健常部との境界は明瞭で、周囲の浸潤は少ない
Borrmann3型(浸潤性潰瘍性癌)
2型の様な潰瘍をつくり、周堤の一部では境界明瞭であるが、一部では周堤が破壊され浸潤がこれを越えて進行し、健常部との境界が不明瞭
Borrmann4型(びまん浸潤癌)
癌組織は胃壁内(粘膜下層・筋層・漿膜下層)を瀰漫性に浸潤増殖し、胃壁は著明に肥厚するが、粘膜面の変化が少ない。
症状:
1)自覚症状:胃癌の自覚症状には特有なものはなく、早期の胃癌では無症状のものが多く、胃癌の進行にしたがって多彩な症状を訴えるようになる。
心窩部痛、心窩部重圧感、胸焼け、体重減少、食欲不振、心窩部膨満感
2)他覚症状:胃癌の初期には他覚的所見は欠如し、病状の進行とともに他覚的所見を認めるようになる。
貧血、るいそう、腹部腫瘤、転移による所見
胃癌の末期には高度の貧血、るいそうが出現し悪液質の状態となる。
診断:X線検査
内視鏡検査
内視鏡直視下生検
予後:早期癌手術例の5年生存率は80%以上であるが、進行癌の病気のすすんだものでは予後は悪い。
治療:胃癌の治療法は、近年癌化学療法、放射線療法が徐々に進歩しきているとは言え、根治的手段とは成り得ず、依然として早期発見、早期手術が大原則である。
1)内科的治療:抗癌剤(5−フルオロシル,マイトマイシンc,エンドキサンなど)
2)外科的治療:胃癌お外科的治療は病変の部位を含む胃を広範囲に切除し、同時にリンパ節を広範囲に郭清することが原則
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