胃癌


丸山雅(癌研究会付属病院内科部長)

胃癌は、早期癌のうちに発見すれば、ほとんどが治すことのできる病気です。自覚症状がないので、定期的に検診を受けることが、早期発見のカギになります。



現状

胃癌は日本人に多い癌の一つで、かつては、日本人の癌による死亡原因の第一位にランクされていました。現在では、肺癌についで第二位になっています。

しかし、死亡率は低下しつつあるものの、胃癌という病気自体は、それほど減少しているわけではありません。依然として日本人に多い病気である、ということには変わりはないのです。


 

胃癌のタイプ

胃癌は、胃の粘膜から発生する悪性の腫瘍で、ある程度の大きさになると、胃壁の表面に特徴的な変化が現れてきます。その後、癌は次第に成長し、胃壁の粘膜層からさらに深い層へと広がっていきます。この癌の形態や進達度(胃壁のどの層までに達しているか)によって、胃癌は次のような種類に分類されています。

形態による分類

胃癌の中でも早期胃癌は、形態によって「隆起型」、「表面型」、「陥凹型」の三つの種類に、大きく分類することができます。

隆起型:癌のできている部分だけが、胃壁がはっきりと盛り上がるタイプです。

表面型:胃壁の表面にはほとんど凹凸がないタイプで、胃癌の中では最も多く見られます。表面型は、さらに「表面隆起型」「表面平坦型」「表面陥凹型」に分けられます。なかでも粘膜がわずかにへこんでいる「表面陥凹型」が最も多く見られます。

陥凹型:癌のできている部分だけ、胃壁の表面がへこむタイプです。

このような胃壁の表面に見られる形態は、エックス線造影検査や内視鏡検査によって明らかになります。

進達度による分類

胃壁はいくつもの層が重なった構造になっています。表面にあるのが粘膜で、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、しょう膜下層、しょう膜と続いています。

胃癌は、粘膜で発生した癌で、胃壁のどの層にまで達しているかによって、早期胃癌を進行癌に分類できます。具体的に、癌が粘膜下層までにとどまっているのが早期癌、固有筋層より下まで広がっているのが進行癌です。

早期癌というと、発生してから間もない癌を指しているように思うかもしれませんが、早期癌と進行癌の分類には、癌が発生してからの時間的経過は、関係ありません。その癌がいつできたかではなく、癌の進達度によって、早期癌と進行癌に分類しているのです。

早期癌の悪性サイクル

早期癌として発見された癌の多くは、3−4年経つと進行癌になります。特殊な例として、8−10年ほど早期癌の状態が続き、いつまでも進行癌にならないものがあります。これは胃で分泌されている強い胃酸により潰瘍ができ、癌細胞が脱落するために起こる現象です。

粘膜にできた早期癌は、わずかに粘膜がへこんで、びらん(ただれ)の状態にあります(表面陥凹型)。癌が大きくなると、強い胃酸により、癌細胞が脱落し、潰瘍ができます。この潰瘍が治ると、再び表面陥凹型の早期胃癌に戻りますが、しばらくすると、また潰瘍ができます。

このように、癌が少し大きくなると潰瘍化する、ということを繰り返しているため、がんはいつまでも早期胃癌の段階にとどまっているのです。

これを早期胃癌の悪性サイクルといいます。このサイクルに入ると、癌細胞を見つけるのが困難になります。



診断

早期胃癌は、ほとんどの場合、自覚症状が全くありません。癌ができてから、かなりたっても、自覚症状が出ないことが少なくありません。胃癌の発見に自覚症状の有無はほとんど役に立たないのです。

そこで、症状がなくても定期的にきちんと検査を受けることが必要になります。検診では、エックス線検査や内視鏡検査がおこなわれます。

これらの検査で胃癌の疑いがある場合には、組織を採って顕微鏡で調べる「生検」が行われます。

癌の進達度と転移

癌であることがわかったら、次に癌の進達度と転移の有無を調べます。

1. 進達度:内視鏡の先端に超音波発振器を取り付けた超音波内視鏡が用いられます。胃の内部で超音波を発振することで、癌が胃壁のどの層まで到達しているかを調べることができます。

2. 転移の有無:胃癌が進行すると、リンパ節や肝臓、腹膜に転移する危険性があります。そこで、超音波内視鏡やCT(コンピュター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)を用いて、転移の有無を調べます。



治療

検査によって、癌の進達度と転移の有無が明らかになったら、それに応じて治療が行われます。胃癌の治療には、次のような方法があります。

1. 内視鏡的切除:内視鏡の先端に特殊な器具を装着し、患部を観察しながら、高周波で病巣だけを切除する方法です。開腹手術に比べ、患者さんの身体的負担が軽いのが特徴です。また胃を切除しないため、治療後の生活にもほとんど影響がありません。

ただし、この治療が行えるのは、分化型といわれる、比較的進行が緩やかな癌で、大きさが2p以下、さらに癌が粘膜内にとどまっている場合に限られます。また、潰瘍ができていたり、その潰瘍の傷がある場合にも、この治療は行えません。

2. 腹腔鏡的切除:腹部に何カ所か小さな孔を開け、その孔から腹腔鏡(腹腔内を観察するための内視鏡)や治療器具をおなかの中に挿入し、病巣を切除する方法です。これも開腹手術に比べ、患者さんの身体的負担が軽くてすみます。

ただし、この治療法もリンパ節転移のない分化型の癌で、癌が粘膜内にとどまっている場合にしか行えません。

3. 外科的切除:内視鏡的切除や腹腔鏡的切除が行えない場合には、外科切除が行われます。従来から行われている標準的手術(胃を切除して、リンパ節も摘出する手術)のほかにも、最近では縮小手術も行われるようになってきました。これは、胃の機能を温存するために、なるべく神経を残して切除する方法です。このように最近では、手術後の患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を重視した治療が行われるようになってきています。ただし、転移がある場合には、リンパ節なども摘出する拡大手術が必要になります。

胃癌は、早期癌の段階で治療すれば、5年生存率は94%というデータがあります。早期癌を発見するためには、定期的な検診を受けることが勧められます。

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