
遺伝子治療遺伝子治療とはいったいどのようなものなのであろうか。端的に言えば遺伝子治療とは遺伝子の発現に以上があることによっておこる病気を治療するために、なんらかの形で遺伝子に操作を施すことを言う。 遺伝子治療の対象となる病気はその発病のメカニズムに関与する遺伝子が明らかにされているものか、ある種の蛋白質を補充することによりその病気を治療できることが明らかなものに限られている。 また、遺伝子は文字どおり子孫へ伝える情報を担っているもので、もし間違った操作を遺伝子に施すと、その情報は子孫に伝えられてします。そのため、現時点では生殖細胞はその対象から省かれている。遺伝子を導入する細胞としてはリンパ球、造血幹細胞、肝細胞、気道上皮細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞や癌細胞そのものである。 実際の治療にあたっては、多くの種類のDNA制限酵素(DNAを望みの部分だけ切り取る酵素)の中から対象となる遺伝子を切り出すのに適当なものを選び、その制限酵素を用いて人の細胞の中にある目的の遺伝子を切り出す。あるいは、対象となる遺伝子の情報を読めなくするためにその遺伝子にくっついてしまう核酸(アンチセンス)を核酸合成機で合成する。こうして患者からとりだした細胞の中に導入するわけである。 現在ウイルスをこれらの治療用遺伝子の運び屋(ベクター)として用いる方法が積極的に用いられている。 ウイルスはその表面に自分の好みの細胞にくっつくための蛋白質をもち、その蛋白質を介して好みの細胞に感染する。逆に考えると狙った細胞に感染するウイルスが存在すればそのウイルスをベクターとして用いることができる。制限酵素を用いてウイルスの遺伝子の中に治療用の遺伝子をはめ込み、これを試験管の中で増殖し、患者から取り出した細胞に感染させるのである。 このような遺伝子治療がどのような病気に対して行われているかについて少しみてみよう。世界で初めて正当な手続きを経て遺伝子治療が行われたのは1990年9月、ADA欠損症という病気に対してであった。同年12月には血友病に対する治療が行われた。そのほか家族性コレステロール血症、脳腫瘍、嚢胞性繊維症などの遺伝子治療が行われている。 日本では1995年に、北海道大学医学部付属病院でADA欠損症の患者に始めて遺伝子治療が行われた。
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