ウイルスの陰謀−−40億年目の地球制覇


何がウイルスたちに火をつけたのか


RNAワールドの報復。それはすでにもう、始まっているのかもしれない。

今世紀は、なんと多くの新種のウイルスが蜂起したことか。

新種のウイルス性出血熱の襲撃、ざっと見ても韓国出血熱(ハンタ出血熱)、アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、クリミヤ・コンゴ出血熱、ラッサ出血熱、エボラ出血熱、リフト渓谷熱、ベネズエラ出血熱、ニューハンタ出血熱などなどと、枚挙がない。

さらに、エイズをはじめ、ボルナ・ウイルス、肝炎ウイルス、さらには、O-157も、直接の犯人は大腸菌と言うバクテリアだが、その裏ではバクテリオ・ファージというウイルスが関わっている。

これらはみんな、この20世紀に出現した新顔のウイルスである。その上、このほとんどがRNAウイルスなのだ。

ウイルスたちは、今40億年の眠りから覚め、至る所で奇妙で不気味な動きを見せている。彼らはいったい、何を画策しているのだろうか。何が彼らの怒りを買ったのか。

それを考えるための、一つの重要なヒントがある。それは、今世紀に出現したウイルス性出血熱の多くが、森や草原の開発がきっかけとなってさまよい出てきたウイルスたちによるものなのだ。


エイズウイルスの侵略



エイズは後天性免疫不全症候群(AIDS)の略称である。

これをもたらすウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスといい、その欧文名の頭文字をとってHIVと称している。レトロウイルスの仲間である。

このエイズ・ウイルスは感染力は非常に弱いのだが、そのターゲットが免疫システムをになうヘルパーT細胞(リンパ球)なので、免疫システムが破壊されてします。

エイズ・ウイルスは細胞に進入すると、逆転写酵素を用いて自分のRNAをDNAに変換する。これはレトロ・ウイルスに共通したやり口だ。そして、その変換した遺伝子を二本の鎖に仕上げて環状にし、細胞の核に運搬して、細胞の遺伝子につなぎ合わせてしまうのである。

その後、自分のDNAを切り離し、次いでRNAを作り、これを素材にして蛋白質と遺伝子を合成し始める。そしてある時間を経て、一人前に成熟したエイズ・ウイルスをどんどん合成していくのだ。その結果、宿主のヘルパーT細胞はことごとく破壊され、ついに体の防衛網が寸断され、さまざまな感染症に冒されてしまうようになるのである。

症状は、エイズ・ウイルスに感染すると、1−2週間後に風邪に罹ったときのように発熱し、2−3週間後にそれが治まる。それから4−5年は無症状のまま経過し、この間にエイズ・ウイルスはヘルパーT細胞をじわじわと破壊して行く。

こうして免疫力を低下させた後、再び血液中に現れて増殖を開始する。やがて全身のリンパ節が腫脹するようになり発熱や下痢が1ヶ月以上続き、寝汗、食欲不振、体重減少、疲労、といった、自覚症状が出てくる。

これに、呼吸困難、痰、激しい咳、皮膚に紫の結節ができれば、間違いなくエイズが発症したとみていい。

その後、知能低下、感情鈍磨、痙攣などの症状を見せ、エイズ患者の50%は1年以内に死亡する。


O-157の真犯人はバクテリオ・ファージというウイルス



O-157は大腸菌、細菌であって、ウイルスではない。だが、大腸菌もまた被害者なのだ。犯人はウイルスである。

病原性大腸菌も食中毒をおこす細菌であるが、従来の大腸菌はO-157のような、死をもたらすような毒素をもっていない。そのすさまじい猛毒さで我々を恐れさせたのは、じつは赤痢菌がもっているベロ毒素だったのである。

では、なぜ大腸菌が赤痢菌のベロ毒素をもつようになったのだろうか。

それは、ウイルスが大腸菌の細胞の機能を使って、作らせたのである。

大腸菌に感染したウイルスはバクテリオ・ファージと呼ばれるものである。ウイルスの中でも変わった形をしていて、まるでロボットのように見える。これはDNAウイルスだが、その大きさはインフルエンザ・ウイルスの7割ほどしかない。小型の割に遺伝子の情報量は多く、インフルエンザ・ウイルスの4倍以上ある。

まず、バクテリオ・ファージは大腸菌に足をからませて、二本のDNA遺伝子を菌の内部に注入する。次にそのDNAを利用して、これとまったく同じ情報をRNAにコピーする。彼らは蛋白質を作る能力がないので、大腸菌の蛋白質工場を借りて自分の体を構成する蛋白質をつくる。

そうやってウイルスが作り出した蛋白質の中にベロ毒素が含まれていたのだ。こうして赤痢菌の毒素をつくるということは、彼らが赤痢菌とも関係しているからである。

この間、ウイルスに入り込まれた大腸菌は、ただ黙って彼らのなすがままにまかせ、自らの破局に向かっていくだけである。

ベロ毒素は、一個の菌の中で百個以上も作られる。大量に生産されたベロ毒素は、宿主の大腸菌の細胞を溶かして破壊し、外へ飛び出す。つまり、大腸菌が住んでいた生物に入り込むわけだ。そして血管を破壊し、血液に乗って次から次へと臓器を破壊して回るという道筋をたどる。


20世紀に出現した主なウイルス性の出血熱
韓国出血熱 1930年代、日本軍の満州進出時に最初の記録。1978年に原因となるウイルスをネズミの体内から発見
クリミヤ・コンゴ出血熱 1960年代にアフリカのコンゴとウガンダで発見。第二次世界大戦後、現在のウクライナの森林や草原の農地転換後に出現した病気も同じ物と判明。
デング出血熱 もtもとは生命に危険のある病気ではなかったが、1950年ころから出血熱に移行する患者が出始めた。
ボリビヤ出血熱 1940-50年に初の患者が発生、52年にウイルスを認知。感染源はネズミで、生態系の破壊が引き金となった。
アルゼンチン出血熱 1940-50年代、森林やサバンナの開拓などによって繁殖した野ネズミが仲介。58年にブエノスアイレスでウイルスを発見
マールブルク出血熱 1967年、西ドイツでミドリザルから腎細胞培養に関与した実験syたち実験者たちが発病。
ラッサ熱 1969年、ナイジェリヤ、リベリヤなどで流行
エボラ出血熱 1976年、スーダンとザイールで流行。95年ザイールで4度目の大流行を起こした。
リフト渓谷熱 1977年、エジプトのアスワン地方で始めて人間に流行。ダムの建設がきっかけ。蚊が媒介する。
ベネズエラ出血熱 1990-91年にかけて104名の患者を確認。おもにベネズエラの農村地帯でネズミが媒介。
ニューハンター・ウイルス出血熱 1993-94年にかけて大流行。

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