あの名場面の直前を描く!
「先生、出番です!」第一回

昼下がりのケーブルカーの駅、ブチャラティが一人で人を待っている。

「あーあ、この駅を利用するらしいって聞いてきたんだけど、確かだろうなあ。もう2時間も待ってるんだぜ、いいかげんくたびれて来たよ、キンチョー感ってやつ、持続させるのは大変なんだぜ。こういう時はシャブでも打って・・・・って他のヤツらなら思うんだろうけど、オレは死んだオヤジの事があるからなあ、つらいトコだよなあ。」

イライラした表情で、ときどき首を伸ばして駅にやってくる学生達の顔を覗き込んでいるブチャラティ。彼の奇妙な格好に眉をひそめる人が居るところを見ると、このあたりは彼の『持ち場』では無いらしい

「うーん、15歳かあ、ま、たいしたコト聞けやしないだろうけど。オレが15ン時なんて、全くの世間知らずだったからなあ、まあ、この業界にゃあ足入れてたけど、ほとんど雑用係だったし、学校も行って無かったし・・・。しかし苦節8年、やっとポルポからシマ分けしてもらって自分のチームが持てた・・・思えば苦しい日々だったなあ、でもガマンして毎日あいつのケツ拭いてやったおかげでなかなかいいチームを持てたぜ。仕事もカンタンだし、殺しや麻薬やバクチとも無縁のお気楽な見回り業務だもんなあ。しかしツイて無いぜ、なんでオレのシマでルカのヤツが殺されて居るんだよお。偶然見つけちまったおかげでオレが犯人探し命じられちゃったじゃねえか。ちくしょー、どーせチンケなゆすりたかりなんか空港でやってたんだろうぜ、あいつ、スタンド能力も無いくせに、気だけは強いんだからな、どっかのチンピラと肩でもぶつけ合ってケンカして殺されただけだろうに、『ウチのシマでウチの組の者を殺されたのは俺のカオをつぶされたのも同然だ』なんてボスがこだわるもんだから、是が非でも落とし前付けさせなきゃならなくなっちまった。いったいどこにアンタのカオがあるってんだよ、絶対正体見せないクセに。(笑)でもなんでオレなんだよお、こういう聞き込みはアバッキオの奴は本職だったじゃねえか、あいつの方がドスが効いてるしよーお。なんであいつはチームリーダーのオレのいう事を聞かねえんだああ?『昔の仕事は思い出したくねえ』なんてワガママ言いやがって、一体何様のつもりなんだよお、誰が拾ってやったと思ってるんだよお!あーあ、でもオレいい奴だから、面と向かってそういう事言えねえんだよなあ。上からはこういう余計な仕事押し付けられちゃうし、下にはナメられる。これがいわゆる中間管理職のつらいトコだって訳かあ。カンベンして欲しいぜ。」

ポケットから、何かを取り出し調べる。

「これ、『脅しに使え』って持たされて来たんだが、ヤだよなあ、目ン玉と指だよ、あああ、汁たれて来ちゃったよ、ビニール袋かなんかに入れて渡して欲しいよなあ、これどうやって使おう?見せるだけじゃ能がないから、ヤッパあれかなあ。そーか・・・・脅しねえ、今日のオレはそういう指名を負ってる訳だから、いつもの『頼れるお兄さん』ってキャラクターじゃナメられるよな、ここはいっちょ『あぶない奴』で行くかな?ちょっとサイコ入ってるような危険な香りのする男・・・いいぞ、なんかちょっとヤル気出てきたなあ、ええと、まずつかみは・・・世間話をするってのも不自然だし、そーだ、小銭落としてそれ拾ってきっかけ作るってのは?それいいなあ。自然に会話に入れそうだ。ええと、その場合笑いながら相手を油断させといて、その後キッとすごんでビビらせるってのがいいな。怖がらせなきゃ、ナメられたらシマイだからなあ。そーだ、こないだ映画でやってたアレ試してみよう、人の汗でウソ見分けるってヤツ。あれならハッタリに使えそうだ。カオの汗、舐めてたっけ・・・男の顔舐めるのはヤだけど、こいつなかなか可愛い顔してるからいいかあ。これでオレ、そっちの世界に行っちゃったらどうしよう?このガキ、その気ねえだろうなあ。まあ、ソレやってうまく行けば怖がらせてすぐにいろいろ聞けるだろう。こんな仕事はホントに、早く終わらせて家に帰りてーぜ・・・って、帰ってもだれも居ねえけどよお。まったく・・・因果な商売だぜ、カタギの女どもは外見だけ見てキャアキャアまとわりついて来るけど、こっちの世界に引きずり込む事は出来ねえしよ、水商売系の女って何考えてるかわかんなくて苦手なんだよなあ。こんな風だからオレ、20にもなって恋人の一人も居ねえんだ、まあ、面倒くせえからいいか・・・・」

その時、ブチャラティは、目当ての誰かを見つけたらしく、少し身を物陰に隠し、様子を伺った。

「来た来た、あれがジョルノ・ジョバァーナかあ、中坊にしては落ち着き払ったツラ構えのヤツだなあ、なんか色々、地獄でも見て来たような不敵な表情だが、気のせいだよなあ、たかが15歳、まさか人を殺してる訳はねえし・・・ってオレ12で2人殺してるかあ。(笑)ま、リラックスして、こっちのペースでさっさと片付けよっか。よし、行くぞ!」
 

この後、彼はこのジョルノ・ジョバァーナとの劇的な出会いにより、死闘を展開し、その結果思いもよらぬ数奇な運命に導かれて行く事を知る由もなかった・・・

                                                                                                                            《END》