
風船で遊ぶ子供に罪はありません。
私が小学生のころでしたが「サインはV」というスポーツ根性物ドラマが流行り、休み時間はいつもバレーボールをやって遊んでいました。非力な子供たちですからまだ本物のボールでは遊べず風船ですが、けっこうみんな真剣に力いっぱいやっていましたのでよく割れるのです。そんなある日家捜しの名人(親の財布から金を盗むことから命名された)と言われるS君が袋入りの風船を持ってきました。彼は興奮して我々にその風船を膨らませながら「見てみて!ウチの親の寝室にくさ、こげん高級な風船が隠しとったとよ」と手でトスをあげてその不思議な形をした風船を見せるのです。確かにその風船は中にゼリー状のものが入っておりすごい変化をしながら又どんなに強く叩いても割れないのです。みんなで「これはよか!俺も薬屋さんの自動販売機でこの名前の箱を売っとるのをみたバッテンが高かとよ¥300って書いとった。」というのがおりびっくりして、「そげな高かもんやけん大人は子供に使わせんとバイね。よし、みんなも家から盗んでこよう。もしかしたら誰んとこでもあるもんかもしれん」という話になり、みんな夕方期待に胸を膨らませながら家に走って帰りました。そのころ誰もこの風船が{明るい家族設計}に使われることなど知らなかったウブな子供たちだったわけです。
翌日、予想した通り各家庭からかなりの量の風船が集まりました。その中でも注目を浴びたのがPTA次期会長候補のYさん宅のおぼっちゃまY君の持ってきたスグレ物でした。「うわあすごい!虹色でイボイボがついとる。こりゃあグリップがよかけん回転がかかりやすいバイ最高!」と皆から賞賛されY君「ウチはいつもブランドもんしか買わんけんね。多分有名メーカーなんやろ」と得意満面でスポーツ音痴の彼も一躍その日のヒーローです。
昼休みはそのイボイボボールで「どっこい大作サーブ」「虹色変化スパイク」と叫びながらクキクキ変化し揺れながら落ちる(中にあるゼリーのおかげ)いつもにない巧プレーの連続でみんな大喜びです。そこでやって来たのが私たちの担任でガチガチの厳格なクリスチャン女史W先生です。彼女は顔を真っ赤にしながら唇はわなわな震え私たちのところまで駆け寄り「やめなさい。なにをしているんですか?あなた達は!みんな廊下に立ちなさい」とすごい剣幕で怒っているのです。我々はなんのことやらさっぱり分からず「なしていかんとですか?バレーボールやったらダメなんですか〜」と純真な私らが尋ねれば彼女はモジモジしだし「いけないことはないけど、コレは使ってはいけません!どこから持ってきたの?正直に言いなさい、それに何ですか!このイボイボ。ああ汚らわしい、誰なの?これを持ってきた子は」と睨み付けるので、観念したのかすでに泣きべそをかいているY君が前に出ました。先生は「ええーYさんなの、あなたの家にあったの?信じられない。日曜日のミサでいつも教会へご一緒してるけど・・本当に」と絶句し日ごろ優等生でコーラス部、書道、成績なんでも一番の彼で先生お気に入りのY君だけに、「いいわね、Y君。先生はもう忘れるわ、このことをご家族のだれにも言っちゃあダメよ」と優しくなだめ我々には「ふつうの風船で遊びなさい」と厳しくいいつけ我たちが持参した全ての風船をけがわらしそうに手に持って職員室に去って行きました。
なんで怒られたのかその後もよくわかりませんでしたが素直な私たちは疑問にも持たず時は過ぎたのです。思えば純情でしたね、それから何年かたち同窓会がありみなもそのころはアレが{明るい家族設計}に使う道具だったことは分かる年ごろになってまして話題はそれに集中しその時、同窓会の幹事だったY君はみなから「お前んちはイボイボだもんね」とからかわれ以降、二度と同窓会には出てきません。可哀相なことをしてしまった。彼には何も罪はないのに・・でも懐かしいな。
ここでも子供がやることは可愛らしく、ラテンの人達は子供がそのまま大人になったような人が多いので、彼らは真剣にやっていることなのに常識と思われることしか出来ない人達からフツウじゃないと言われているだけのような気がします。フツウじゃなくてもいいじゃないですか、本気で一生懸命にやっている彼らに罪はないのです。(なんて言ったりするから人にアンタは南米ボケと突っ込まれるんですよね。ハッハッハと笑う懲りてない私)
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