第一話

車泥棒はパラグアイのマッチョ。


  私の町には車を盗むのが上手な方がたくさんいます。ある朝私も自分の車が盗まれている事に気づき警察に行きました。警官はそういう場合、例外もなく「まずもう他人に売られているな。探してもムダ!諦めなさい」と非常に説得力のある言い方をしてくれます。そして次に「ラジオで懸賞金を出すから見つけてくれと叫びなさい。それが彼らにとっていい金額なら車は見つかります」ときっぱり辻占ない人なのかとも思えるような指示を与えてくれました。私はすぐラジオ局に行き「今から24回一時間おきに懸賞金1500ドル払うから俺の車を見つけてとアナウンサーに連呼するように」と頼み店に帰ってラジオと電話の前に座って待ってました。

  第一回目の放送が終わり1分もしないうちに電話が鳴りました「俺はあんたの車があるところを知っている。お金ちょうだい」と言ってきました。冷やかしかもしれ ないと車の色や車内に何が入っているか尋ねるとまさに本当だったのです。私も興奮し「お前は泥棒だろう、何で今朝盗まれた車がもう見つかるんだよ!」と訴えると「違うあんたはラッキーなのよ朝、僕が目を覚ますとうちの車庫にあんたの車があって誰のかなあと考えていたらラジオを聞いて、ああすぐ知らせてあげなきゃと思い電話したんだ。」というので私も「疑ってごめんね。じゃあ今からあなたの家に行くから住所教えて」というと「嫌だ。懸賞金くれなきゃ教えない」と言い出し「だったらどうやってあなたに払えばいいの?」と尋ねるとしばらく考えた末に「ああそうだよね、じゃあ教えてもいいけど警察は連れてくるなよ一人で来てね」というので「当たり前じゃないか、一人で行くよ」と答え住所を聞き出し警官3人連れて行きました。

まあ泥棒の住処といった感じで盗んだ車やら解体して部品を箱詰めしているやらその中に私の車も見つかりました。それで私も警官に「見てよこれ絶対泥棒だろう?」と言うと警官は「しかし泥棒が普通電話してくるかなあ?証拠もないし、いいんじゃないの見つかれば」というので「俺は泥棒に追い銭なんかやりたくない、このまま持って帰るからね」と慌てふためく通報者をよそに警官と帰ってきました。それからが大変で次の日からその通報者が毎日来て「日本人はウソつきだあ」と店の前でわめきたてるのです。

さすがに私も恥ずかしいから事務所によび「もう払うから、やめてくれよ」と言い懸賞金を払うとそいつが「いやあやっぱり日本人って偉いなあ、普通誰も払わんよ。もう絶対あんたの車は盗むなって言っておくよ」とのたまうので「やっぱりお前は泥棒じゃないか!」というと彼は平然としたもので「いや、わたしはただの整備工場のおっさんです。ただあいつが盗んだんだろうなあというのは分かっているけどアミーゴ(友人)は裏切れない。私は正直者のマッチョ(男の中の男)なんだ」と胸をはってスキップしながら帰って行きました。しかしあれから全然私の車は盗まれずやはり約束を守ってくれているんだなあとパラグアイのマッチョを見直した私はやはり馬鹿なのでしょうか?





次のページへ 表紙に 戻る

感想などはどうぞ 村上節男(パラグアイ共和国 エステ市) 宛てにメールを送信して下さい。