第十八話 

 サッカーの為なら何でもやっちゃう南米の人達


 南米に住む男でサッカーに興味がないと言おうものならオカマか変態でも見るような目をされるのがおちでどんなに勉強が嫌いで字を読むのが苦手な男でも新聞のサッカー記事は隅から隅まで読み贔屓チームの試合展開から過去の試合結果まで頭に入っているほど熱狂的なサポーターもたくさんいます。 

 パラグアイでも日本で言えば昔の巨人対阪神戦のように絶対この相手だけには負けたくないという伝統の対戦があり90年にトヨタカップで日本に行ったオリンピアが巨人でセロポルテーニョが阪神というチームカラーもそっくりなようです。この対戦は過去三度くらいスタジアムに行き見ましたが始まる前のサポーター同志の罵り合い試合途中のえげつない野次、隣の席にいる解説者にでもしたいような観客の的確な説明を聞きながら非常に盛り上がりました。私が行った三度のうち二回は大統領も来ておりその当時クーデターの噂や大統領の汚職疑惑など非常にもめていた真っ最中でスタジアムに来れる状況ではなかったように思うのですが、普段着で特別席に座るでもなく大きな声でオリンピアを応援しセロ側からの罵声に眉を怒らせながらも最後までいました。サッカーを愛する者は民からも好かれるというべきなのか翌日から大統領批判の記事は小さくなり「あいつは悪いこともやるがいい奴だ。何故ならサッカーが好きだから」ということが書いてあり成る程納得がいったのを覚えてます。

 前にリオ デ ジャネイロへ日本から旅行で来た従姉妹を連れ旅行した時でしたがビーチにたくさんのブラジル人がビーチバレーを見て興奮し騒いでいるのです。よく聞いてみると「ホマリオー(ROMARIO)行けー」と叫んでおり誰かと背伸びして覗いてみると何と94年度米国Wカップのブラジル優勝立役者ロマリオその人でした。まあ足でやるビーチバレーというのを初めて見たのですがさすがに上手なもので手でもあんなに拾えないと思える玉でも難なく受け神業だなと感心しました。横にいた彼の取り巻きがいうには彼はそのリオ貧民窟のヒーローで小さい時はスパイクを兄弟三人で一緒に使わねばならず小さいロマリオはいつも裸足でボールを蹴っていたそうです。その為ボールの重心を外したり芯を捕らえるキックを身につけたんですね。ただその翌週のニュースを見て驚いたのは彼はそのビーチバレーで遊んだために栄えあるスペインのバルセロナのお披露目式をすっぽかしてしまったそうなのです。この式は名門バルセロナでは一年で一番大事な行事でこのチームは世界でも珍しく自分らのユニフォームを広告でけがしたくないとスポンサー無しでクラブ役員が負担している美談がありその感謝も込めて一年頑張りますと世界中から集めたスターが勢揃いするものでロマリオはその年で一番高額の移籍料でまた目玉でもあったのです。それからスペイン人たちは激怒し彼に日本円にして何千万円もの罰金をかしましたが彼は平気なものでそれから一週間して彼の取り巻きを10人連れ「お前ら飛行機に乗せてやろう、スペインに連れてってやるから今から行くぞ」と大名旅行をし皆有頂天で酔っ払いスペインで大騒ぎをしたとニュースで見ました。

 ロマリオが日本で今年ダンロップのCMに出演すると聞きまた何かやってくれると期待してましたが彼も大人になったのか無事問題なく撮影を終えたそうですね。94年のWカップの時の話ですが予選でかなり苦戦をしていたのをロマリオの活躍で勝ち進んでいましたが、その頃ロマリオの父親が誘拐されたのです。さすがの彼も元気がなくチームもリズムが悪くなって予選通過を危ぶむ声も出だしました。 ブラジルの大統領も捜査官を200人増員し早く救出するよう発令しましたが全く見つかりません。そこでロマリオは言いました。「明日中に見つけなければ俺はもう次の試合にでないからな」それからブラジルの警察は「Wカップにロマリオがでないとブラジルは負ける」と慌てふためき必死の捜査をやり12時間後、父親が発見され無事保護されました、やる気を出せば彼らはすごい力を出すのです。  それで驚くことに犯人は何とロマリオの兄だったのです。父親が言うには長男が「部屋にじっとしていろというのでクーラーのある部屋で酒もタバコを用意され快適にWカップのTVを観戦していた。」と答え、兄も兄で「弟ばっかり金を儲けて自分には小遣いをくれないので困らせてやりたかった」というコメントを読んで日本人の私は信じられない話だなとびっくりしたのですが当地のブラジル人は  「うん、気持ちは理解できる」「親子だから誘拐じゃないな、赦してやれば」と寛容なもんでその後 全く話題にもなりません。Wカップの行方の方が国民は関心があった訳で何とも思っちゃいないのです。

 サッカー選手というものはここ南米では誰もがあこがれるヒーローであり大統領よりまた他の誰よりも偉いようです。アルゼンチンのマラドーナにしてもあれだけ何度も麻薬問題で迷惑をかけても国民は全て赦し今でも国の英雄です。ブラジルのジーコのように大臣になれたりペレのように大統領に立候補すれば当選確実といわれるお国柄なのです。私はいつもサッカーを見ながら思うのですが、どうして日本やアメリカでは野球の方が人気があるのか考え先日、ある答えを見つけました。野球だと短いインターバルがあり息抜きできますがサッカーは最低でも約45分は目が離せない状態が続きホームラン以外は意外性のある得点が少ない野球なのである程度ヤマバの予測がつくスポーツが日本人やアメリカ人のような短気な国民には楽しめるのではないでしょうか。また日本の野球でいえば親はこのスポーツをやらすにあたって団体行動を学ばせようとしたりルールを守る又は人生哲学まで悟らせることまで望んでいる人が多いですね。ですから日本だと人が見てなくても反則をすれば自己申告したり、卑怯なマネをして例え勝っても後で徹底的に叩かれるあたりが南米と全く異なるのです。何故ならサッカーでは隠れて相手のシャツを引っ張たり例えハンドで得点をしても審判が笛をふかねば黙っているべきでスポーツマンシップにのっとってなどと言い「良い子ぶって」手を挙げて反則をしましたと南米でやろうものなら仲間からばか者扱いされ二度と試合で使ってくれなくなるケースがあったと以前、日系人から聞いたことがあります。

 いずれにしてもサッカーなしの人生など考えられない南米で今年のWカップは今から話題で持ちきりです。日本はWカップ初出場でなおかつ強豪アルゼンチンとの緒戦 何とか頑張ってほしいものです。パラグアイやブラジルでも結構、奇跡というものを信じるので今回のアルゼンチン戦は何か波乱があると言っておりみんな日本を応援しています。日本にいるときは中学校でサッカーを遊んだ程度であまりサッカー観戦など興味がなかったのにここにいるとだんだん熱狂している自分がラテン系になってきているような気がしてとまどっている今日この頃です。             


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