第二十三話 

 Wカップが何よりも大事なのがラテンなようです。


 昨日(14/jun/98)の日本の試合は良かったですねえ。私の家の両隣はアルゼンチン人 とブラジル人また前の二軒がイタリアと韓国でもうこの一週間は仕事にも ならず夜も静かに寝ることのできない毎日が続いてます。

 昨日の前半が終わったころから電話が鳴り続き「日本はやるじゃないか 圧してるぞ、あのナカタはいいな!  キーパーも最高だ。うちの娘は結婚したい と言ってる」とか友人たちより応援の電話ばかりであるパラグアイ人は わざわざ彼の33インチのテレビを我が家に持ってきて一緒に見ようという ことになり合計4ヶ国の人種があつまり後半戦を見ました。

 いいやつらだなと感じていたのですが何と狙いは横に住むアルゼンチン 人をからかうためだったようで寒いのに窓を開け日本が攻めこむと 大きな声で「行ったあ」「だめだなあアルゼンチンは〜」と叫び 隣のアルゼンチン人の温厚な医者も久々に興奮し「今にみていろ バティ(ARGのストライカー)がとどめをさしてやる」と白熱したやりとりを場外でして いました。これからの近所付き合いもあるしあまり興奮しないで ほしいなという私の要望も全く受け付けられず私も試合に興奮し かなり叫んでしまいました。

 試合が終わりみな虚脱状態でいるとき隣のポルテーニョ (首都ブエノス産まれの都会人をよぶ)がにやつきながらやって来て 「よくやったね日本は。サッカーの歴史は浅いのに頑張ったよ ウン、驚いたね。残りの試合に勝ってもし日本が予選突破できたらもう一回戦おう。アディオス」 とか代表の監督のようなコメントをして帰って行き残された私らは 「ばか野郎、なんだたいした事ないチームのくせして偉そうに! 大丈夫だセツオ。ブラジルが叩きのめしてやる」と後は16日 からの自分達の第二戦の話ばかりしながら昼飯まで用意させられ まあよく飽きないもんだと思うくらいサッカーの話をして いました。

 ここパラグアイのエステ市はブラジル、アルゼンチンとの国境で またチリ、韓国人の商人が多くもうWカップ中は閉めている 店ばかりです。ただ密輸人でなりたつこの町は、この期間が 一番税関の取締が緩いためなのか中国人がここぞとばかりに すごい密輸商品をサンパウロへ運んでいるようです。さすが 華僑はたくましい。Wカップの場外戦をやっているという 訳です。

 ブラジルでは自国の試合中は学校は休校、会社や工場はTV観戦が義務づけられる法令がでたり銀行もしまりユニフォームにはブラジルチームのシャツを着用するよう{ここまでやるの?}というくらい徹底しており国民は文句も言わず喜んで従っています。

 先週はパラグアイでは英雄のチラベルというゴールキーパーがキリンカップで日本に行ったときに日本のTV番組でインタビューに答え「アルゼンチンなんか恐くない、俺は去年ベレスという ブエノスのクラブでプレーして世界一にもなったが、日本は勝てるぞ! アルゼンチンのキーパーなんかキャッチングがヘタでパンチングしか できないんだ。そのこぼれ玉を押し込んでやれ、 これは君ら日本人だけに教えているんだぜ、内緒だよ」と日本の番組で 得意になってしゃべっており、日本人がみな喜んで字幕付きまた日本語の はしゃいだ声まで付いて、それが先週からアルゼンチンの民放の番組 で何回も流されアナウンサーも無言でムっとしておりブラジル人は それを見て「ブラジルだってオリンピックで日本に負けたんだからお前ら だって負ければいいんだ」とはやしたて、それがなおさら悔しいのか自尊心の 強いアルゼンチン人はかなり怒ってました。結果は1−0で辛くもアルゼンチンが勝ったわけですが試合後の放送では各国が日本の試合内容を誉めており{あれじゃあアルゼンチンは予選突破できてもベスト8までだな}なんて言われアルゼンチンのTV番組で50年配くらいの過去代表選手や解説者がつかみ合いのケンカをしてました。よくあれだけ熱くなれるなと感心しながら、日頃は大人しくてとても良い男でしたがサッカーの話になると頑固で人が変わり前のWカップの時、サッカーで口論になり人を刺して刑務所の中で観戦していたのを思い出しました。

 やはりこの期間はあまり他のチームを誹謗したり、エキサイトせずに静かにしておこうラテンの人相手にサッカーの話なんかしたらエライことになると考えてはいますが、どうもここに住んでいるうちに血が騒ぐようになってしまい今後のWカップの予想に花がさき全く商売にならない毎日をすごしています。        


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