第二十六話 

 日本で才能を発揮できない人は南米に来ましょう。


 私の家には日本から来た旅行者のかたがよく泊まってくれます。皆さん日本ではちょっと変わっていると言われている方が多いようで、いろんな話も聞けて楽しいのです。また彼らも「南米の裏側まで来てもうこのオッサンとは会うことがないだろう」という気楽さからもあるのか非常に事細かにいろんなお話をしてくれます。

 先週うちにやって来た22歳の青年ですが、彼とはブエノスのレストランで横の席に座った縁だけで彼が私に「どこから来たんですか?」と話しかけるのでパラグアイと答えると「えぇー行ってみたかったんです」と言うので何か特技はあるの?と私が訊ねれば「親父が按摩とカジノを小さいころから教えてくれました。特技はほかにありません」と答えるので「いいじゃないか!個性的で〜来なさい家に泊まればいいから」なんて言い住所をやって別れ、一ヶ月すぎすっかり彼を忘れたころこのF君はやってきました。

 彼が来た日に私のテニス友達のドイツ人(58歳)がやって来ました。「俺の家のテニスコートが出来あがったから夕方やろうぜ」というので彼を紹介し、ついでに肩が痛いといつもこぼし私に按摩させそのドイツ人の80cmもある肩もみに疲れていた私は「こいつは日本から呼んだ按摩のプロだ。雇ってやってくれないか?」と言えば彼は「おう〜それはいいな」と引き連れられ「何を話してんですか?ボクはどこにいくんでしょうか?」と頼りなさそうな顔をするので私は「心配いらない。君の就職先をみつけたんだ。彼の肩をもめば泊まりと飲み食いタダだ。良かったな」と説明しました。彼は喜び「本当ですか?嬉しいな、でも何語話せばいいんでしょう?」と訊ねるので「按摩に言葉はいらないだろう?ジェスチャーでやれよ」とこれから南米で一人で生きねばならぬ彼を笑顔で送り出してやりました。(俺ってヒドイなぁ〜こういう人の想像できないような展開をさせるの大好きなんですねぇ)

 彼はどうも気に入られたようで毎晩2時まで肩もみさせられ昼間はテニスというか運動苦手なんですという彼を無理やりコートに立たせ毎日300球ドイツ軍隊仕込みの猛特訓が始まりました。私も見に行きましたが「なにやってんだーもっと強く打て」「球を拾ってカゴに集めろ。足腰の鍛錬だ」とF君がクタクタになるまで続けられ何かスポーツ根性ものドラマをみているようで私は猛烈に感動しました。

 しかし流石にあのままだと体力が持つかな?と考えていたら彼が隙を見つけてドイツ人の家から脱出し店にやってきました。「いやあ村上さん。もう身体がボロボロです、何度も逃げようとしたんですが・・」と泣いているので私も「辛かったら俺がいってやるよ」と言えば彼はボソボソしゃべりだし「実はボクの親が按摩の後継ぎやれって煩くて大喧嘩して日本を飛び出してるんです。彼は親父に性格がそっくりなんです、頑固で厳しくてまた女性関係にルーズで離婚してるし、なんかそう考えてたら可哀相になっておいていけないかな?ってちょっと留守にすると寂しそうに一人でいるしボクが帰っていくと両手をあげて喜ぶんです」とけなげなことをいうので「かぁ良か話ばいね。日本のお父さんに聞かせてあげたいね。よし永住しなさい」と元気つけると実は日本でるとき今イギリスにいる妹に金借りてるんで、それを返さないと踏ん切りがつかないと本人は言うのです。それで借金させてとでもいうのかな?と見ていたら「ボクをカジノに連れてってくれませんか?ボクはお金が無くなると絶対勝つんです。負けたことないんです今まで」と言い出しよく聞くと彼の父親はアジアチャンピオン戦では三本の指に入るギャンブラーだと言うのです。

 「ほう〜男らしかヤツね。おまえは!気に入った今晩行こう」と即決し行きました私はうちの家内も連れて。彼の持っていた金は200ドルだけだったのですが、いきなりはじめ{おいおい大丈夫かよ?}とみるみるまに150ドル負け、ああこれはすぐ終わるなと見ていたら一点賭けに5枚で36倍、チップ一枚2ドルでいきなり360ドルになり後は倍倍。はたからみていると無茶苦茶なようで頭にはルーレットの数字がインプットされているのか2千ドルにあっという間。大体一回の賭け金が日本円で3万円になりその後2〜6千ドルを上下し3時間やって約3時間100回賭けた金額を計算しても300万円はっているわけで唖然としました。結局横であくびをしている私がもう帰ろうというので気がちったのか最終的に2千ドルでしたが、充分ですよね200ドルしかなかったのに。「後2千ドルで妹に送金できる」という彼の言葉を聞き{こんなのってありぃ?}と商売やって一個2ドルのもの売っている私はやりきれませんでした。

 彼がこのまま南米にいるかどうか知りませんが、人生破滅しなきゃいいがなと思う反面、痛い目に合わないと彼はギャンブル止めないなと親心、また半分は今度は彼にのってボクも儲けたいなという誘惑。しかし類は類を呼ぶといいますが何でこんな変わったヤツばっかり南米に来るんだろう。なんだか近頃わたしも怖くなってきました。(ちょっとは大人になったということかな、ウフッフ。バカな私・・)


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