第二十九話 

 南米ではワイロはあたりまえでしょ?


 「ワイロ」たぶん日本に住んでいる人達にとっては政治家、ゼネコン関係者などにしか身近に感じない言葉でしょう。しかし南米に住む者にとってはワイロ無しで生きる事はとても不便で潤滑に物事が進まずストレスがたまるものなのです。

 私が一番最初に経験したワイロは昔、南米に来るためビザを取りに行った東京にある南米某国大使館でしたね。書類をすべて提出し明後日査証がおりるので受け取りに来なさいというので帰ろうとすると、その係りの男性はニターと笑って言うのです「どこから来たの?明後日来るの面倒じゃないぃ?今日取得できる方法があるんだよう」というので時間のなかった私は渡りに船とばかり「ええっそんな事できるなら頼みますよ」とお願いしました。彼は「よっし俺が領事に頼んでやる。四千円くれ言っとくがオレがとるんじゃないぞ、言いたくないがもうここの家賃は4ヶ月たまってるんだ。東京の家賃は高すぎるよ全く、でも追い出されると次行く所がないんで皆、必死なのよ協力してくれよ、な!」とイヤと言わせない押しで{まっいいか早いし交通費考えたら安いもんだ」と払い5分後に査証を押した私のパスポートをニコニコしながら私にくれ「アミーゴ、よい旅しろよ」と清清しくワイロのやりとりなど存在もしなかったかのように送り出してくれました。

 今まで百回以上のワイロを渡したはずですが、相手がせびりやすい雰囲気を作ってあげること(すなわちコイツは甘い誘惑になびきそうだなと思わせる)又渡すタイミングと額を決めるアウンの呼吸が難しいのですね。先日でしたが、やはりコイツはプロだなと思わせる警官がいました。負い越し違反、消火器期限切れすべて私に非があり、相手は哲学者のような顔でいかめしく冗談も言えないような男でもう観念したのです。赤紙を切られることを覚悟しペンを近づける彼を見ていたら一瞬お互いの目が合いました。 

 ピッピという信号が我々に流れたのです。これは言葉では説明できませんが、あるのです金で解決しないかというお互いの気持が通じ合ったんです。私は言いました「ボクが全部悪いことは認める、本当にごめんなさい。これから違反金納めに行ったら私はもう仕事にならないしあなたにその間待ってもらうのも申し訳ないんで、お詫びの印にお金を受け取って頂けないでしょうか?」と。彼は表情を全く変えず口もほとんど開かない状態で(腹話術師かと思ったですよぅ〜ホント)「よーし物分りがいいヤツだなオマエは。いいか外のヤツラに見られないように車検書を今返すからその間に金をはさめ、オレは赤紙切るふりするから、オマエは悲しそうな顔して車検書をおれに戻すんだ」というので言うとおりにし渡せば片手で指をいれ「もう二枚追加しろ」という図々しさでしたが(どういう指してんでしょうか?コイツ)ゴルゴ13なみに表情も変えない彼の非情さに敬服し払いました。そして私に赤紙を渡すふりして窓際でさっと引っ込め「行け」という彼の合図とウインクで私はサヨナラしたのです。鮮やかでした、その間10分もなかったでしょう。正規にやれば罰金支払いと免許書受け取りに半日はかかるのですから彼には感謝せねばなりません。(なーんかちょっとヘンかなあ?)

 私も最初は違和感がありました。こんなワイロ払うくらいなら国に収めたほうがとも思い昔はワイロ拒否をしていたのです。今の日本だってそうですが南米でも国民の税金はまともに使われることなんかないんです。全て一部の特権階級だけで好き放題に使い又懐に収めるんですから、そう考えると給料安くて家族が平均8人くらいいる彼ら国家公務員に払う直接税だと思ったほうが気分いいですよね。現在当地はXマスで彼らの家族へのプレゼントを買うため彼ら警官や税務官は日頃の怠慢な勤務態度がうそのように懸命に働いています。頑張れよぅ−でもボクはあまり苛めないで〜という私はかなり自分さえ良ければいいというラテン系そのものになってきてるなと自己反省したりもしています。あ〜だんだん道徳心がなくなる自分が怖い。(もとも無いだろうオマエの場合という周りの声・・)  


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