第三十話 

 パラグアイ独特の職業


 日本では職業を聞けば大体想像できる仕事は多いのでしょうが、ここパラグアイでの仕事をいざ人に説明しようとするとなかなかこれが難しいものでほとんどの方が「本当なの?うそでしょう〜」なんて言って信じてくれません。

 私の住んでいる街はたくさんの商人が集まる所で南米の香港と呼ばれています。またあらゆる外国人が言葉も分からないのに店を開け平気で10年以上も暮らしてしまう(これって実は自分のこと・・)そんな不思議なところです。この縦横2km四方の小さな町に2万件もの店が密集しそのほとんどが外国人でして、パラグアイ人はこれらの店先で台を並べ日本で喩えて言うなら「テキヤの寅さん」をやっているのですね。この方達は何でも売ります又家賃がいらないので店で買うより商品が安く買えることもあり繁盛しています。最初来た当時は「なんだよコイツら〜道塞いで、店の入り口に平気で台出して物売って市役所はなにやってんだ?取り締まれよなぁ」と不満たらたらでしたが、それは間違いでした彼らはとても重宝なのです仲良くせねばいけないのです。何故なら彼らは番人でもあり敵にまわすと泥棒さんにもなるのですねぇ〜。一緒にテレレ(マテ茶に冷水を入れて飲む)を飲みだしアミーゴになるころ彼らは「今、店に入ったヤツは泥棒だぜ」「あそこに歩いている頭の禿げた男は盗難車売ってる詐欺師だ」「あいつは人殺しが商売だ。(本当にいるんですよ、ゴルゴ13みたいな男がぁ。事実をこの経験話で書きたいな〜でもまだアイツ現役だからなー)」なーんて本当によく知っており助けて頂きました。

  こんなこと書いてると当地は危険なところだなって思われそうですが、実際彼らと身近に接してそんな話ばかり聞いていると感覚がマヒし少々の矛盾や道徳心というのが気にならなくなってきます。昨日も店の男性が家の中に鍵をしまい忘れどこに置いたか分からないと言い途方にくれ友人のテキヤがプロの泥棒さんを呼んで頑丈な店の扉の3つの鍵をあけてくれ、所要時間はたった1分でしたが本当に鮮やかでした見事です。鍵やさん呼んでもあんなに見事にあけてくれません又安いです。(なんのこっちゃ?)

 私はそっそかしいのでよくやるのですが、以前にも銀行へ行くため駐車したとき鍵を中に忘れ「あ、あっ」と叫んだときは時すでに遅くドアを閉めてしまった後だったのです。参ったなと困っていると近くで状況を見ていたテキヤの子供であろう9歳くらいの少年に「ここいらに鍵やさん無いかな?」と訊ねれば彼は「無いよ、このあたりは。でもねすぐ開けてくれる人は知ってるよ」というので「誰だ?その人は」と聞けば「車泥棒だよ、とっても上手なんだ」と少年の目には一点の曇りもなく{ぼくも大人になったらああいう特殊技術者になりたい}と願っているよな素振りで話すので時間もなかった私は誰でもいいから早く呼んでと彼にお願いしました。2分もしないうちに大柄な人相の悪い男を連れ男の子は私を紹介しました。彼は口を開くなり「おまえか〜知ってるよ。いつも火、木曜日に銀行に来てるだろうヤバイかったんだぞ!目をつけられていたんだオマエの車は、へっへっへ」と言い確かにその通りだった私は冷や汗がでました。

 いきなり仕事をはじめ1分半で見事にドアを開けてくれました、たった二本の細い針金だけです。びっくりした私に彼は「いや〜日本車は難しいな、ブラジル車なら30秒なんだがな、見てろよ」といい隣にあったサンタナの扉に向き15秒で開けイグニッションをぶち抜き腰にあった別に用意したそれを取り付けキーをまわし「ゴーン」とエンジンをかけるまでなんとわずか一分の早業でした。「おいおい、止めろよ警察に捕まるぞ」と私が言えば彼は「なに言ってんだオマエは?これが俺の仕事じゃないか。」というのでビビリ5千ガラニー(当時で約¥300くらい)を彼に渡せば「一万ガラニーくれよ、そしたらもうオマエの車は盗まないからさぁ」というので安いもんだと払いました。それから銀行に行くたび見ていたらやはりあの男の子と泥棒は親子なんでしょうかねえ、いつも一緒にいます、そして私の顔を見て「おーいアミーゴぅ車盗まれないように見張っててやるから安心しろ」と叫び毎回¥50くらいせがむのですが安いもんですよ、盗まれること考えたら。(と泥棒と友人関係を持ったことに何の戸惑いもない自分が怖い・・・)

 あとここでよくある商売としてはエンパナーダ屋さん(日本における揚げギョウザのようなオヤツ)が多いですね。うちの近くでもオバサンが路上で屋台だして売っています。ここでは朝昼などに手軽に食べれる物として人気がありますし又美味しいのです。この女性はたいしたもので、たった一人でエンパナーダを皮まで自分で作り中にひき肉入れて揚げて一日なんと300個も売っています。一個40円くらいですから一日平均12000円売上げており、ここのパラグアイ人の平均給料を二日で稼いでしまうのです。ただ難点をあげれば彼女は皮を作るときビールビンで丸くするのですが来たとき薄汚れた茶色だったはずのビンが、帰宅するときはピカピカに輝いておりあの汚れが全てエンパナーダの皮に・・と考えてたらオエェと一般人は食べないでしょうね、まっここでは誰も気になんかしませんが。

 南米の方は独立心があるようでサラリーマンを辞めて自分で店を開くことにあまり躊躇しません。大体小金を持って始める商売といえばアルマセン(雑貨や)でして釜から食べ物、雑貨までなんでも売る店を自分の家の前にいきなり作っちゃうんです。当然、営業許可なんかありゃしません。昔うちの店を辞めていった男の家に行って売れ行きはどうだと尋ねれば食っていけてるようで安心しましたが、帳簿は無いし一日幾ら売れたかも全くわかんないと言うので私も不思議に思い「どうやって親子5人食ってんだ」と聞けば「簡単さ〜店にはなんでもあるじゃないかぁ?それを食うのさ。そして無くなったら又買いたして店では50%増しの価格で売ってりゃいいのよ。増えてるぜ毎月品物は、だから儲かってんだろう」と悠長なものです。子供は子供でお小遣いほしけりゃあ店のガムとかアメかっぱらって道で売って換金する。うーん自立してますね偉いですパラグアイ人は。

 しかしいろんな職業ってあるもんですね。ほかにも担ぎやさんとかたくさんあるのですがこれだけで一冊の本を書けるくらいユニークで多種多様あり、まあ逞しいです。又格好つけず形振り構わず仕事し金を稼ぐ彼ら南米人をわれわれ日本人は見習わなければならないのではないでしょうか?(まっでもちょっと出来そうにない仕事が多すぎムリかもね・・・)  


次のページへ 表紙に 戻る

感想などはどうぞ 村上節男(パラグアイ共和国 エステ市) 宛てにメールを送信して下さい。