
井戸掘る人に悪い人はいない!?
しかし彼女が一番我慢できないのは毎日水が1〜2時間出て終わり、後また断水という事らしく、これは大いに検討する余地があると私は家族会議にかけ一昨日井戸を掘ることに決定しました。「決まったことは即座にアクションを起こす」が家訓の我が家に早速井戸堀名人3名が呼ばれました。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ人とインターナショナルな達人ばかりで迷いましたが、やはり人力で掘るならこの国の土をよく知っているパラグアイ人にとなったのです。ちなみにここの土は赤土で雨が降ればすぐネチャネチャになり車は泥道にはまって動けなくなり、かと言って歩けば粘着性があって靴の裏に土がつき身長が5cmは高くなるほどですが、乾燥すれば岩のように堅いというとってもやっかいな大地なのです。
しかしぃ・・早いですね〜直径2mの穴を3m掘るのに要した時間がわずか4時間。鍬を打ちこみスコップですくい出し土の山が見る見る間に高くなり、日が暮れてきたので今日の仕事は終わり{いったいどうやって地中から出てくるつもりだろうか?}と見ていたら登山家のように手や足をかける穴をドライバーでほじくって作り、あっというまにひょいひょい地上に上がってきました。シブイ、かっこいい、モテるだろうお前とあらゆる賛辞で褒め称えると前歯の抜けた口を大きく開け破顔して笑い「おれはプロフェッショナルだからな。素人は気張って何時間も掘り続けて地中のガス吸って死ぬのさ。お前はオレを選んで正解よぅ」と頼もしく言い「今日は3mだから30ドルちょうだい」と1メートル当たり10ドルの掘り賃なんですね〜感動しながら払いました。
「この調子でいけばあと数日で20mはいくな」と喜んでいましたが、今朝見ていたら掘った土を地上に投げるも届かず結局その土をいちいち登ってバケツで上げる作業をしてました。{ダメだ!夏が終わるまで間に合わない、あの調子だと2ヶ月はかかるなぁ}と隣人に話していたら彼は「この辺いまころみーんな井戸掘って枯れてるみたいだけど、水が出ればいいね。15m掘って出なかったら諦めてほか掘り始めた方が利口だよ」とアドバイスしてくれました。そういえば他の井戸掘り職人はみんな器具やら土壌図面なんか持ってたけど彼はスコップだけだったな・・そういう彼が素朴で職人ぽっいという私の判断が甘かったんだバカ、バカ。なんかアイツの顔見てたら水なんて絶対出てこないような気がしてきたなぁ〜(昨日まで頼もしく感じていた自分が哀れになってくる)
そういえば思い出したのですが、この近くの日本人移住地に住むTさんは井戸を掘るのが趣味で家には3個くらいの井戸がありました。彼はべつに仕事でやっているわけではなく、電気も入れず自然の中で暮らしたいというライフスタイルを変えない頑固な方で野鳥や草を食べて暮らしている今どき貴重な自然人なのです。昔、朝日新聞の記者が来て何かニュースになるようなことないですかねえというので私はこの井戸掘り名人Tさんをはどうでしょうか?と話せば「いいじゃないですかぁ、行きましょう。その方に逢いに!」と話は進み、行きました我々はTさん宅へ。(しかし私ってヒマだよな・・)
「へぇ〜日本からぁ?今ひ弱なヤツが多いからね日本は!ロマンがねえよ、あんたはなかなか見る目があるねえウンウン」とその若手記者を連れて一番深い25Mの井戸を案内してくれました。真下に深くまっすぐの井戸と斜めに底まで降りて行く通路まで掘ってあり皆ですごいなあと感嘆しながらその急勾配を降りて見学したのです。底は約5Mくらいの洞窟になっており真夏でしたがひんやりして気持よく、卵やら鶏、得体のしれない肉を干してあったりし、またTさんは「夏いくら暑くたって構わないさ。ここで寝るんだクーラーなんていらないぜ」と冷蔵庫兼エアコンのような役目もしているのですね。
我々は感動しながら地上にあがりこの記者も是非記事にしたいとインタビューし始めました。Tさんは得意満面で日頃気難し屋の評判の彼にしては珍しく饒舌で安心してましたら、この記者が「しかしぃ・・イグアスってインディオの言葉で水が多いって意味なんでしょ?ここの井戸ってなんで水がないんですかぁ?ちょっと悲しいですね」と笑いながら言ってしまったのが最後でTさんは激昂し「バカやろう!俺はなあ水が欲しくて掘ってんじゃねえよ。井戸掘りてえから掘ってるだけだ。出ってけえぇーなんちゅう失礼なこと言うんだ」と怒り放り出されました。記者は「どうして?普通井戸って水がいるから堀るんじゃないんですかぁ?」と泣き出しそうな顔してました。(たぶん今考えるとTさんが一番言われたくない部分だったのね・・)
イカン、変なこと思い出してしまった。こんなこと暑くて断水中の今考えていると益々パラグアイの井戸掘り職人の苦労が無駄になりそうで、{今すぐ行って手伝ってあげようか、でもかえって足手まといになるといけない}なんていらぬことばかり考えてしまう。しかし彼の人間性は良さそうだし井戸掘るなんてロマンがないと出来ないんじゃないかな?なーんて訳のわからぬ理屈で自分を納得させようとしてる私はかなり暑さでまいってきています。あ〜なんとか夏が終わるまでに水が出ないかな。
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