第四十話 

 南米の航空会社は気前がよいのです。


 よく南米を旅行された方が「南米を旅行するときは飛行機の事情が悪いから気をつけるんだぞ」と散々ひどいめにあった経験を交えこれから旅行する方に忠告され、それは実際90%事実でもあります。が、結構よいところだってあるのです。

 あれは前にサルバドールというブラジルの美しい海岸のある町へ旅行しパラグアイに戻る時でした。パラグアイという内陸国に住み魚介類に飢えていた私はロブスター一匹¥150。生カキ1ダース¥100というすばらしい内容を確認すると同時に日本での新聞広告のチラシを見て走る主婦と変わらない姿でロブスター10匹と生カキ5ダースを漁るように急いで買いこみ大型釣用クールボックス二箱を担ぎながら空港に「これをお土産に持って帰れば皆喜ぶだろうなあ」と向いました。摂氏38℃くらいの気温でしたか拭いても拭いてもあふれ出てくる汗をぬぐいつつ空港のカウンターで出発を待つもマナウスからの飛行機は着かず3時間後に地上職員から「今日は飛ばない、また明日ね」という簡単な説明を受け他の乗客もそんなことには慣れているのか別に苦情も言わずに三々五々去って行ったのです。

 そういう状況の中で一人哀れな私は途方にくれ大きな箱二つを足元に置き、それも中からガサゴソと「早く出せ暑いじゃないか」というロブスター君の暴れる音も聞こえだし{どうすんの?これ}と考えこんだころ横のイタリア人が「ふざけんなよ。オレは今晩ローマに出発するんだ、仕事があるんだよ明日。」と強い抗議をしだしました。あまりの剣幕にカウンター職員のブラジル人もアタフタしだし「分かったから、もっと小さい声で話してください。もうあなたしか残っていないから優遇を計ります」と言っているのを聞き付け私も「ぼくは、もっと困ってる。当地の名産だというからこんなに魚介類買っちゃってどうしてくれんのよ」と強く抗議しました。私の二つの巨大なクールボックスを見て{こいつは一体ナニモノなの?という顔で}ギョっとしながらも「あなたたちだけはホテルもハイヤーも確保させて頂きます」と申し出てきて私は満足したのですが、このイタリア人は「オレはハイヤットかヒルトンとか5つ星ホテルじゃないと泊まらないぞ」と言うのです。{図々しいヤツだな、でも頼りになるな}と心で思いながら「私も同じだ」とこの今日知り合ったばかりの二人は日伊両国共同戦をはって粘ったところ、なんとOKしてくれたのです。

 ホテルでチェックインすると同時に航空会社職員が出迎え「お二人はお仕事でお忙しいところ誠に申し訳ありませんでした。取引先やご家族も心配されていると思いますので国際電話で連絡をとられてください。 また夜は寿司BARからイタリア料理も揃えていますのでご自由にお召し上がりください。また明日飛行機の出発2時間前に迎えに来ます。ゆっくりお休みください」と丁寧な説明があり私はパラグアイと九州にいる実家の母親に電話しました。ちょっと甘え過ぎかなと反省しましたが、このイタリア人は晩御飯をいっしょにしたとき「おれなんか2時間以上話したぞ。フランスにいる昔の彼女とも話したさ滅多にないんだ有効に使えよ」と彼は寿司も刺身も日本酒もガバガバ飲み食いした挙句また帰りにお持ち帰りの寿司まで持って部屋に去っていきました。{やっぱラテン系ってすごいなあ。図々しいけど、明日もし請求されたら?なーんて考えないんだろうな}と尊敬してしまいました。

 翌日チェックアウト時、請求書を見れば私のは約2万円彼のは約14万円ものチャージが書かれてドキっとしましたが、なんのことはなくパっとサインして終わりです。なんだか損をしたような気持でしたが私のチケットなんて2万円弱でしたしよくこんな事ができるよなあと万年赤字だと言われるこの航空会社がいとおしくまた哀れになってしまいました。その翌年でしたかやはり同じようなことがあり日本から孫を見に来た私の母親を日本に見送る途中マイアミに連れて行く時の飛行機が飛ばず前回味をしめた私は同じような交渉をしヒルトンホテル二部屋調達に成功しました。母親に「どこでも電話してよかバイ。どうせ代金とらんとやけん」というと母は兄や田舎の親戚で何年かぶりかの人まで電話しまたホテル内での日本料理にも舌鼓をうち満足しており{親孝行できたな}と私もちゃっかり喜んでいたのです。

 その翌朝チェックアウト前この米国系航空会社の職員が来て説明がありました。「昨晩、飛行機が飛ばないことを電話連絡されたようですが3分あれば説明可能だと判断しました。また食事もブラジル料理までは面倒みますが日本食は料金超過でした。恐れ入りますが差額はご自身でお支払いください。」{ひええぇ〜}と叫びたい気持を堪えホテルの請求書をみれば(差額500ドル)と記載され「いやあ南米の航空会社は気前がよかね〜日本のJもこのくらいせんとね」なんて喜んでいる母親に真実は告げられず泣く泣く支払いました。やはり米国はしっかりしています油断もすきもないですね。スケベ根性のあった自分がいけないのですが・・・

 でも南米で子供がいるからと他の客のシートを飛ばして指定席を確保してくれたり、飛行機内でその国のワインが美味しかったといえば持っていきなさいと渡してくれる(どれも本当はいけない行為・・)。あの大きな心があれば、なんか今まで10回以上もオーバーブッキングで飛ばされたり、ボーディングカードを出しておきながら出発時間10分前に我々を忘れて出発してしまう、はたまた5時間で目的地に着く直行便を買ったのに変更があったからと9つも飛行場を経由しながら搭乗客を乗せていく乗合バスのような飛行機で17時間も座りぱっなしだったイヤな思いも忘れてしまうから不思議です。車輪が出ないからと胴体着陸を経験させて頂いたり国境地帯を延々15分イグアスの滝から世界一のイタイプダムまで旋回しながら「今のは右の窓からの人用だったから、今度は左側ね」と愛嬌ふりまきながら乗客からのアンコールに応えるパイロット。やはり南米は偉大です人間味が溢れていますね、忙しい人には非常に迷惑な飛行機事情であることは否定できませんが・・・


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