第四十二話 

 南米の人はいくつも鍵を持っている。


 去年の暮れでしたが大掃除をしていたところ戸棚から車内あらゆる場所からたくさんの鍵が出てきていろんな扉に試すうち日が暮れて掃除は終わらないままで21世紀を迎えてしまいました。そんな話を当地の人にしたところ彼なんか自分のキーホルダーをみせいっしょに幾つあるか数えてみたところ、なんと22個もありビックリしました。彼の場合スペアキーを2個ずつ余計につけていることが分かり「スペアキーというのはオリジナルキーをどこかに無くした時に使う緊急用だろう。ふつうはヨソに保管するんじゃないの?」と訊ねると彼は「ふふん。そんな使い方もあるよね、でも忘れるんだよなぁ保管場所を。もう何回も忘れてさあ、結局これが一番良い方法だとわかったのさ。重いしね、これ1kgはあるだろ?落してもガッシャンて音がしてすぐ気づくのよ。」と(どうだ頭良いだろう)て顔して答える彼でした。彼の鍵にまつわるエピソードは多く、昨年は車を運転していたところ車の鍵がいつのまにか落ちたらしく全く気づかなかった彼は車を止めたとき鍵がついていない事実に慌てふためき、そのまま急いで家に戻って奥さんに訊ねたそうです。「おい!おれの車の鍵がないぞ?店と金庫の鍵もついているやつだ。」と叫びいっしょに探したそうですが見つからず、しばらくして外に出てみた奥さんが車にエンジンがかかっているのを不審に思い覗いたところ運転席の床に鍵の束が落ちていたそうです。(アホか?こいつはと思ったですよ)しかし南米の車って鍵が抜けてもそのままエンジンかかりぱなしなんですよね〜私も試してみましたが確かにエンジンかけたままキーひっぱったら抜けました、なーんか怖いですよね・・

 メキシコに旅した私の友人は入国する際スーツケースを開けるように言われ日本に鍵を忘れてきたことに気づき青くなったのですが入国管理吏がすぐに鍵の束を持ってきて「このメーカーのやつはこれだったな」と言い一発で開けてくれ中身を調べ「おれはまだコピーを持っているから、この鍵はきみにあげよう」とくれその時は感謝したそうですが、よく旅行者がスーツケースの中身が消えたと苦情の多い中南米の事情を思いだし{ヤベェ国だよなあ}と後でひしひしと実感したようです。確かに当地の有名なホテルでも観光客がスーツケースの鍵を忘れることが多いようでルームサービスを頼めばすぐに鍵の束を持った係員が1分以内に開けてくれたと日本から来た観光客は感謝しながらも「そんなら鍵かけても意味なんかないじゃない?」と不信感を抱いたようですね〜まあ当たり前ですか・・・

 そういう私も一昨年あるホテルに泊まったときでしたが、夜中飲んで帰って部屋に戻りぐっすり寝たころ一人の男性がいつのまにか部屋に入って来たらしく私に向って大声で叫んだのです。「おまえは誰だ?なにしてるんだ!」びっくりした私は「なんだオマエは?おれの部屋だぞ!」と大喝すれば彼は自分の鍵を見せ「ここは522号室だろが?」とこの大きなマイケルジョーダンのような男はいうのです。「あれえ520号室じゃないの?あああオレのかばんがない。どこにやったんだ?」と寝ぼけた私が叫び二人で首を傾げながら扉の番号を確認したのですが、たしかに522号室なのです。しかし「ぼくはどうしてここに入れたの?」とパンツとシャツ一枚の哀れな私はひたすら謝りながらズボンとシャツ持って部屋を出て行きました。自分の哀れな姿に悲しくなると同時に「どうしてオレの鍵でこのドアが開くんだろうか?」と疑問を抱きゆっくりまた彼のドアの鍵口に入れるとやはり鍵がまわるのです。「おいおいヤバいよ」と今までの恥ずかしさは怒りに変わり、すぐに受付にクレームつけに行ったところ係員は「ああ、それね。それはマスターキーなの、どの扉も開くのです。先週、客がオリジナル持って帰っちゃったんでコピーができるまでマスターキー使ってるの。誰も知らないから大丈夫。でも同じ階に綺麗な女性がいるからって悪用しちゃあダメですよ、お客さん。けっけっけ」と笑い{なんちゅうヤツなの?こいつ}と呆れて部屋に戻りました。ちゃんと私の荷物はあり(当たり前か・・・)ベッドに入りましたが{このマスターキーを他にも持っているやつがいる可能性だってあるんだよね}と考えていたら熟睡できず翌日チェックアウトしました。でも4つ星ホテルだったんですよ、関係ないんだな南米のホテルの星の数は自己申告だってみんな言ってるし。。。

 南米は泥棒が多いからと一つの扉に鍵を3〜5個つける人が多いからなのか、気をつけて見ていると本当に重そうなキーホルダーを持つ方がたくさんいますね。また世界中の鍵が集まっているようで種類も多く形も様々あるようです。鍵やさんはいろんな種類の台を待たねばならないので大変だろうね?と訊ねたのですが彼が言うには「鍵の台なんかすぐ作れるし開けるのなんか簡単なんだから。どこの国のもいっしょさ。困ったらいつでも電話して。すぐにどこでも行って開けてやるぜ」と言い「ヤバい場所は特別料金となります」とマジメな顔して営業する彼の闇の職業はきっと泥棒だなと考えたりなんかする私の常識は日に日に南米でしか適合しないものとなっているのでしょう。(なんだかちょっと悲しくない???)


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