
第五十二話
南米の密輸
南米でよく耳にする「密輸」って日本では当たり前の話なのでしょうがあまり一般人の間では話題になりませんね。近頃私を日本から来たばかりの方に紹介してくれる友人が「彼はパラグアイとブラジルの国境で密輸業をやってるんだよね。」と言うため相手はみな(冗談だよね)という顔してるのをみて私は心の中で(やめてくんないかな、そういう紹介って。でも実際そういう業種になるんだろうな。いやだけど。)と思いつつ否定もせずに挨拶をしてしまう僕に「密輸」ってナニ扱ってるんだろ?と興味津々な人か(あぶねえやつ)という顔する人いろいろです。というわけで今日はこの南米における密輸とはいったいどんなものか書きたいと思います。先日NHKの地球テレビという放送に出演依頼を受けた私はいろいろ話したいこと伝えてたのですが、もう90%話してはいけない放送禁止の内容ばかりだったようで「それは言わないでください」と繰り返されました。おまけに開始は朝4時で頭は朦朧としてるし危うくヘンなこと話し出すところでしたね。でもNHKの男性アナウンサーの声って最高にいいですね受話器を通して聞くナマの声と美しい日本語。「ああぁ日本語っていい言葉だなあ」と思わず胸が熱くなりました。話が脱線してすみません念のため言っておきたいのですが私は別に殿方によろめくような嗜好はありません。くれぐれも勘違いなされないようお願い致します。密輸やってるホモなんて言われた日にはもう生きていけません。結構ボクは繊細なんです。(なんのこっちゃ?)
密輸と聞くと皆さんは「こそこそと隠れて」「夜中人が寝しずまったころ」なんてイメージがわくかもしれませんが、このパラグアイとブラジルの国境の橋は一味違います。まっ昼間太陽の下でゲームボーイ100個タバコ1000ダースTV10台などたくさんの運びやさんが何度も国境の橋800メートルを往復しながらアリンコ作戦で一日当り一人で上の量を運ぶわけです。これらを取り締まる税関吏もすべて捕まえるのは不可能に近くまたほとんどを見逃してくれる不文律の協定があるのです。これはブラジルの失業者が運びやになって大都市圏に持ち込み商売させる、でないと就業率の低いブラジルではこの人たちの働く場所がないことが理由です。しかし橋の上をジャクシー風呂桶二人で担いで持ってわたる人タバコ100ケースを両手に抱えて車の陰に隠れて国境を通過する猛者。どれを見ても初めて見た人には「密輸ってこんなものなのかあ大胆なんだな」とその認識が変わるでしょう。
またその商品の価格なんですがバカ安なんです。例えば日本製のタバコ「セブンスター」いくらだと思います?1箱たったの¥15なんですよ。日本から船に乗って太平洋を渡りパナマ運河通って大西洋に抜けブラジルの港に入りそれからトラックに積み替えられ1300KMでパラグアイに到着して店で並べられた価格が¥15なんです。僕はもうタバコ止めましたから構いませんが日本でセブンスター買って吸ってる人っていやになっちゃうでしょうね。
人様に商品を買って頂き売り手が一度も危険な橋を渡らないというのは申し訳ないだろ?と私の恩師でリオデジャネイロに住むYさんは、ある日私にも「密輸」の注文を知らせて旅行がてら持ってくるよう電話をくれました。内容はタクアン100本。納豆100パック。ロイヤルゼリー120個。それにカラオケのプレーヤーとそのCD1セット。この注文内容を読んだ瞬間なんか悲しくなると同時にあまりの重さで腰は痛くなるわでこの仕事の難易度の高さに辟易しました。また私にとっては初めての密輸ということもあり、さすがに緊張し飛行場で荷物を預けるときに(やっぱり引き上げようかな?やだな捕まったら留置所いれられちゃうのかな・・)なんて悩みながらリオ国際空港に到着したわけです。
空港内にて荷物を受け取り空港ロビーで待つYさんのところへ急いで出ようと3個のでかい荷物を手押し車に載せてたら横の信号のようなボタンを押せと言われてやってみると
ブーと大きな音が鳴って(赤いランプはハズレで青は検査なし通過可)で運悪く
税管吏4人が待つテーブルに連れていかれました。最初にバッグを開けられいきなりカラオケセットが現れてしまい彼は「500ドルの罰金だな電化製品の持ち込みは200%課税だ」と冷たい顔し言われこちらも引き下がれず「いや。払いたくない日本から持ってきたんだブラジルにはカラオケのプレーヤーがないんだから払うくらいなら日本にこのまま帰る」とゴネれば(こいつ密輸業者だな)と4人顔を見合わせ(きっとまだまだあるぞ)ともう2つの箱を開けるよう言われました。内心(やべえなあ500ドル値切っていくらか払って見逃してもらったほうがよかったかな・・)としぶしぶ2つの大型クーラーBOXを開けました。その瞬間もわあ〜と流れでた香りにこの4人は「ぐあぁああ」と大きな声で叫び10メートルくらい後ろに逃げ惑い「なんだ!そりゃあ?」というので「これですか?大根と大豆です」と答えれば彼らは「なんでこんなに臭いんだよ?どうすんだそれを」というので「これは腐ってるんです。日本人はこの食べ物が大好きで僕のお世話になったYさんがブラジルに移住して40年これが食べたくて。。」と説明するのも聞かず「うるさい!行け早くフタ閉めて外に出ろ。ばかやろう全くジャポネスちゅうのはなんちゅうもん食うんだ。ああ鼻がひん曲がる」と涙流しながらその臭さに耐えられず僕は釈放させられました。ロビーで待っていたYさんは僕の顔を見るなり「遅かったじゃないか?なにぐずぐずしてたんだ。おうこれだこれだ」といいながらクーラーBOX開け匂い嗅ぎながら「ああタマんねえなあ この美味そうな匂い」と大事そうにBOX胸に抱えて車に迎い僕にはねぎらいの言葉もなし。「やれんな密輸って」と思いました。
皆さん南米に税関吏にタカられそうなお土産持ってくるときはタクアンと納豆です。この2つあれば誰も触ってきませんタカられることもないでしょう。ただ洋服とは別のバッグに入れることをお忘れなく。でないと旅行中ずっとあのいい香りのついた服着て歩かねばなりませんよ。