
南米はハイパーインフレがよく似合う?
その頃は一般ブラジル人の平均給与が一ヶ月60ドルくらいでした。私の店はスポーツ用品を売っているのですが、その日は朝からブラジル人が来て「こんなに給料が安くてはやってられない」「60ドルじゃあ一家飢え死にしちゃうよ」など愚痴を言い出しさすがに自分も60ドルで家族もいたら生活は厳しいだろうと同情してしまいました。そのうち彼はミズノのジャージを見つけ「日本のジャージは格好いいなあ試着させてくれよ。」というのでOKすると喜んでその場で着替え始めました。
着ている姿を何度も鏡にうつし一緒にやってきたツアー客に見せびらかし、 「ラッキー!昨日給料日だったから買うもんね」と言うのでさすがに今まで彼の家族や苦しい今の生活を聞いていた私は「やめとけよ、無理して買うことないだろう。今必要なものでもないんだから。金を貯めてから買うもんだよ。お前の一ヶ月分の給料じゃないか」と諭すと彼は「何言ってんの?金は使わなきゃ価値がなくなるの、それとも一ヶ月後お前は俺に同じブラジルの金額で売るのか?」と問われ言葉につまりました。何故ならその頃の1ドルは$2000くらいの現地通貨でしたが一ヶ月後では最低でも$5000以上にドル高になるのは当たり前のひと月300%のインフレがあったような状況で彼が払うのは同じ12万でも私が換金すると24ドルにしかならない計算でした、そう考えてみると成る程持ち金があるときに物を買っておかねば確かに彼は次回はいつ買えるようになるか分からない訳で彼は正しい判断をしているのです。ただ私が一ヶ月分の給料をつかってジャージを買う勇気があるかとなるとまず絶対にできませんので、子供のように無邪気に喜んでジャージを着たまま去っていく彼の姿を見て感動してしまいました。
そのころはアルゼンチン通貨も同じようなもので私が友人三名とレストランで食事した際でしたが最初の計算では50ドル位だったのに1時間後払うときには20ドルとなり安いからと翌日行けば10ドルというような状況で誠にドル給与族にはこたえられない夢のような国だったでしょう。私の友人で在リオ デ ジャネイロ日本商社マンはもらった給料をオーバーナイトという毎日利子がもらえる銀行預金にいれ、毎晩すし屋に行って「利子だけで寿司が食えるなんて、もう最高!日本に帰りたくない。」と喜び結局そのまま永住してしまい今は自分で商売してますが、その場合収入は現地通貨しかないわけで話が違ったと今は悔やんでます。
大分前の話ですがボリビアではホテル従業員へのチップが百万単位でホテルの請求書が一億何千万になっておりドル換算すると160ドル位だったのでホっとした事があるそうです。それで300ドルくらい現地ペソに換金するとボストンバック一杯になり三日間では使いきれず出国の際に両替やさんに行くと百万と千万単位に分けてハカリにのせ何をするのか見ているとこれは何キロ掛けるナンボそして合計何キロだけど今日は雨が降っているから20%引きと言ってドルを渡そうとするので友人は怒ってちゃんと数えろと文句を言えば、「誰がそんな面倒くさいことやるの?あんたやれば。」と言われムキになって数えるうちに時間は過ぎ飛行機は定刻より早く出てしまう不運も重なりもう一泊して結局その金はほとんどホテルとタクシー代金に消えて非常にアホらしい思いをしたと後悔したそうです。
現在南米どこもハイパーインフレはなくなったようで落ち着いたかと思えますが当時の水準から計算すると物価はかえって一般庶民には高くなってしまい生活は以前よりもっと厳しい状況となっているようです。底抜けに明るいラテンの人々が生活苦により険しい顔になるなんて事は私は想像したくもありません。しかし多くの人は又ハイパーインフレのほうがたくさんお金が使えたし15桁の計算機も買って使わねばならないくらいお金も動き楽しかったと懐かしがっており全く南米は懐が深く私のような日本生まれでは測りしれない所です。二十一世紀は南米の時代が来るのかもと期待しながら又のどかさは失わず他先進国のようにはならずにいてほしい等、欲深く考えているのは南米を愛する人なら同じでしょう。
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