マルヒニッキ


1月23日

短編七選

  ただいまおサルのかご屋えっさほいさっさ中/ツチダ
  天網昇降機/ラリッパ
  ジェルソミーナ ジェルソミオ/るるるぶ☆どっぐちゃん
  ゴーレム/逢澤透明
  年賀状/海坂他人
  墜落堕落短絡娯楽/西直
  なくした消しゴム/紺詠志

 投稿順。最後のは、まあオチみたようなものですが、いやいや、入らざるをえません。作者本人が入れなきゃウソだ。決して六つしか選べなかったからではないのです。とにかく、けっこうな熟慮をかさねて短編第6期からおすすめの作品を七つていねいにたんねんにピックアップしてみましたので、ぜひご一読あれ! もしつまらなかったら私が責任を取りますから。どう取るかは不明ながら。
 投稿数しだいですが、これから毎回(日記のネタがない日に)七選をやろうかと思っています。()内は無視してください。この種の投稿企画では、だいたい三分の一くらいは、感触のよい作品があるものです。ほか三分の一が、もの足りないかんじが強い残念賞で、あとの三分の一は、ただ立っているだけで森の小動物たちが集まってくるような奇跡的なやさしさをもつ私の口からは言えません。人にやさしく自分にやさしく、がモットーであります。この場合はとくに後者だ。うっかりしたことを言えば、てめえの首がしまるぞ。
 あえて首をしめるなら、しろうとの小説というのは、きわめてピンキリなんですね。うまいやつはすげえうまい。ヘタなやつはどうしようもない。ムカつくくらいつまらない。こういう企画全体を楽しめる読者は、そんな玉石混交ぶりを楽しめる読者でないとつらいと思う。おもしろい作品だけ読みたいかたには、それがふつうの趣味かと思いますが、すでに保証がついた決勝戦か、あるいはこのように、だれかの紹介によるものがヒントになる。問題は紹介者の信頼性。ちなみに私は長年さまざまなものをここでおすすめしてきたわりには、あまり、すすめてくれてありがとうみたいなことは言われたためしがありません。なんてこった。ひょっとして私は悪趣味に属する人なんだろうか。とびきりナウなヤングなのに。キャプテン・サンタのトレーナーとか着てるのに。
 それはともかく、今回の個人的な注目株は『墜落堕落短絡娯楽』。ほかの作品とくらべれば技術的にあまり評価は高くならないと思うけれども、文章がいささか荒っぽくてセンスだけで書いたかのようなかんじながら、それゆえにか言葉がとくに後半ににつれて活き活きしているのがよかった。展開にマッチして爽快だ。また、自殺の話なのに、パンツのくだりとか、そういうところに着目しているのが、おもしろく、くだらなく、かつヤケにリアルなかんじがした。こういう話は、ふつうに書いたら、もっとシメっぽくなって、シメっぽい設定にすっかりおぼれて読者の共感を超越してしまいがちであるのが、パンツのような枝葉に視点を向けることで、グッと読者――おそらくほとんどが投身自殺をはかったことなどないであろう人たちのこころを近づける。だれもがはいたことがあるであろうパンツにまつわる感覚なら、理解あるいは想像が容易だ。気がキいている。
 気がキいているという点からもう一作を挙げると『天網昇降機』で、これはショートショートの好作。オチの見せかたに気がキいている。ムリなく間接的にオチを見せることで、ベタがベタでなくなるお手本。いくらショートショートといっても、タネとシカケだけでは客はよろこばない。手品には演出が重要だ。
 逆に気がキいていないっぽいのがよいという作品もあって、『年賀状』がそれだ。作為の見えない書きかたのため、うっかり読み流しておしまいになりそうなところ、読後ちょっと振り返ってみないとこれのよさはわからない。ネタバレになりそうだが、最後の文面を書くに至る物語が展開していながら、それはすべてきっとあの文面からは相手に伝わらないだろう、ということである。物語の一部始終を知っている私たち読者は、その思いが伝わらない、というか伝えられないことのせつなさみたいなものを味わうことができる。先生からの賀状の背後にも、主人公が憶測して心配したような、あるいはぜんぜんちがうような、とにかく物語があるのだろう。そうして、およそ書簡のたぐいには、見えないその背後に人間がいて物語がある、という事実が観察される作品。これがあからさまに創作的に気がキきまくっていたら、事実の観察という印象にはならず、たんなるもっともらしい小さなウソに堕し、おもしろくない。
 以上、七つのなかから三つを挙げたけれども、これらが格別にすぐれていて投票するに決めているとかいうわけではありません。まあ、なにか読書の参考になればと。それにしても、おすすめ作品の賛辞しか並べていないのに、やっぱり首がしまっているような気がするのはなぜだ。

1月22日

(C) Eishi Kon, 2003



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