マルヒニッキ


11月7日

 なんとも珍妙怪奇な生物が発見されましたよね。
“鉄の脚”の軟体動物(Mainichi INTERACTIVE photoジャーナル)
 オウムガイ系らしく、「生きた化石」と言えるのかもしれません。イカやタコのごとき頭足類の系統ですが、イカにしても太古のむかしから変哲なく魚竜やなんかにパクパク喰われていた「生きた化石」と言ってよい。つまり化石で見つかるような古い時代(とはいえ中生代以前か)からあまり変わっていない連中を意味するので、シーラカンスとかカブトガニみたいな、いかにもプレヒストリックな風貌の怪物だけでなく、そこらへんにいるゴキブリなんかもそう。
 そして、じつは僭越ながら私もちょっとした「生きた化石」みたいなところがあるようです。きみは古いハンサムだ、と言われたことがあります。ホメられたのかケナされたのかわかりませんでした。



 さて、短編15期の予選から恒例のコンさんチェックによりフリータイムでのツーショットを経て告白タイムで「第一印象から決めてました」と主張すべき作品を発表したいと思います。

闇と田中/Shou
小麦粉/荒井マチ
シルエット/みかりん
 大瑕瑾/ツチダ
虫嫌い/Nishino Tatami
彼岸の花火/サトリ
反面教師/朽木花織
スクリーマーズ/るるるぶ☆どっぐちゃん

 今回は八作品しかチェックが入らず、『大瑕瑾』はけっこうおもしろかったんですけどここでおすすめしてもしょうがないと思われ、かくして自動的に決まった「七選」それぞれについて。
 『闇と田中』は、まず文章がヘンだ。文体がヘンだ。これが物語のヘンさにマッチしているからよいので、私にとってはツボ。結末も見事。これはテキストでしかえがけまい。いろいろ解釈をすることは可能だろうけれども、あえて「だからなんなんだ」という理解にとどめておきたい作品。
 『小麦粉』は、文章が悪い意味で荒っぽく、叙述が錯乱しているかんじもあるが、それも主人公の、言いたいことを言えないけれどやっぱ言う、みたいな気まぐれな若々しさと解釈すれば、その気まぐれな行動も映えてくる。陸上も恋愛もなにもかも、すべてが気まぐれなのだろう。といっても若者は必死で気まぐれをやるのであり、その果てにささやかな希望を拾ったりすることもある。ひねくれた青春のにおいに充溢した作品。
 『シルエット』は、事前にBBSでお話をうかがっていたのだけれども、やはり南極に翼竜が飛ぶという絵はいい。ありえなさ二乗だ。マニアに語らせれば長くなるが、短く言えば翼竜目撃の本場は北米南部とアフリカ中部で、いずれも翼竜化石を多く産して気候もふさわしく、たまには一匹ぐらい飛んでたっていいじゃないかと思わせる地勢なのが、南極となるとおよそありえない。が、そもそもそれが本当に翼竜かどうかは判然としない「シルエット」なのであり、ありえるかえぬか、その真実はラストにえがかれるような南極の圧倒的な自然におおいかくされている。そして厳しい環境に耐えながらさまざまな器材を駆使してこの南極という世界を知ろうとしてきた越冬隊員に、しかし南極はまだまだ人智の達せざる未知を秘めているのだという現実を翼竜のシルエットは突きつけた。大自然を前に、なんとも無常な寂寞の感ただよう一品。
 『虫嫌い』と『彼岸の花火』は、いずれもネタ的にショートショートの好作だった。ただ前者は物語に工夫が、後者は文章に配慮があったらよかったと、ネタがいいだけに残念。結果的にムダが多く感じられてオチへの収束がいまいち。もっとていねいにつくりこんでほしかった。いやネタがいいから九割いいんですけどね。
 『反面教師』は、つくりこんでいると思う。「めちゃんこ」とか「出血大サービス」とか、古い言葉が出てくるのが小技で、この前半の話者がだいぶ売れ残っているらしいことを示唆している。物語はいわば三ヒネリでありますが、さほどスマートではないので、ショートショート的な曲芸よりも、眼目はあくまで近親憎悪にあって、むやみやたらなそれが「イケてない」の連呼でたどたどしく光っている。どのくらいおさないのだろうかが気になってきますが。
 『スクリーマーズ』は、この作者のかたの作品では『孵化』以来の大ヒットだった。おもしろすぎる。すばらしすぎる。二段落目のもってゆきかたにヤラレタ。もってゆかれた。女性というものの順応力にひいでた特性(空からソフトクリームが降ってくれば喰うのだ)を、アメ(ソフトクリーム)とムチ(定規)によって隷属的な従順にまでデフォルメして愛でるという、しかしスパンキングにしても性愛的なサディズムではなく、たわいないイタズラの話です。いじわるでかわいいです。でも、けっこうイヤな皮肉がキいていると思います。私は女の従順を、いかにかわいくとも、いかに殊勝げに葬列に頭をさげようとも信用しない。断じて信用するものか。
 と、女性不信を決然とカミングアウトしたところで今回の七選はおひらき。

11月6日

(C) Eishi Kon, 2003



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