マルヒニッキ


12月12日

 各国で相次ぐテロ、混迷を深めるイラク情勢、先の見えない日本の不景気……世紀末をもしのぐ全地球的なカオスのなか、まるでなにかを警告するかのごとく、世界中でUFOやレイク・モンスターの目撃が続発し、また数々の神秘的な現象が報告された。まさに2003年は暗黒の年であった。
 いったい来年はどうなるのだろう? はたして地球人類は希望の光を見い出せるのか……だれもが不安に思っていることだろう。しかし、この日本には、未来を的確に知ることができる人物がいる。学会でも活躍する精神力学研究所所長、紺影視師だ。
 われわれ月刊『アトランチス』取材班は、マスコミぎらいで有名な紺師との独占インタビューに成功した。
「ようこそ。お待ちしていましたよ」
 埼玉県某所にある財団法人東京精神力学研究所の玄関で、紺師はこころよくわれわれを歓迎してくれた。思わず恐縮してしまう記者(このページ左下の写真)。
 なかへ通していただき、さっそくお話をうかがうことに。
「私の未来視は、いわゆる予言ではありますが、あやしげなものではありません。だれもが持っている潜在的な予知能力を精神力学により開発し、極限まで高めただけのことです。そう、エドガー・ケイシーの言った『アカシック・レコード』は、われわれのなかに存在するのです……」
 紺師の説明によると、あらゆる生物は予知能力を先天的に有しているという。たしかに野生動物が地震などを予知する行動を取ることはよく知られている。人間の場合、その能力はかなり退化しているが、それを覚醒させるのが、師の長年の研究成果である「精神力学」(Psychical Dynamics)なのだ。
 師の提唱する精神力学は、すでに数々の学会で高い評価を受け、しばしば警察の犯罪捜査にも協力するほどとなっているが、現代科学では完全には説明することができない。
「予知能力の分野は、五十年先の科学です」と紺師は言う。「いずれ世間一般に認知される日が必ず来ますが、そのとき世界は一変するでしょう。まだ人類社会は精神力学に対応する準備ができていないのです」
 現在のところ、社会に与える影響を考慮して、この精神力学は師の主宰する団体「インナー・プリディクション」の会員にのみ教授されている。毎年、春と秋とに開催されるセミナーでは、多くの会員が自己の予知能力に開眼し、それをもちいた社会奉仕への使命に目覚めるという。
「心配なのはこの能力が悪用されることです。ですから当会では入会に際して希望者に過剰とも言える調査をおこないます。肉体と精神の健康状態はもちろんのこと、経歴、家族構成、所有する財産にまでおよびます」
 会員がかなりの財産を同会および研究所に寄付することで、一部にカルト宗教だとの批判があるが、紺師は寄付を強制しない方針をつらぬいている。
「科学的な研究機関であって、宗教などと言われるのは心外です。また、あやしげな営利団体でもありません。とはいえ会員が、精神力学によって得た利益に見合う代価を寄付として提供してくれることは、運営の助けになりますし、個人的に、はげみにもなっています。ただ、そうした寄付――つまり自己の能力に対する誠意のない会員は、能力がしだいに減退する傾向があるようです。なぜかは調査中ですが……」
 そしてインタビューは核心へと至った。来年はどんな年になるか?
「鬼に笑われたくありませんが……」と紺師は冗談めかして語った。「ただ、ひとつだけ明かしますと、来年の二月に、ちょっといいことが起きるようです。くわしくは、まだ言うべき時期ではありません。注意していれば、そのときになって、ああこのことか、と納得することでしょう」
 予言が社会に与える影響を懸念してあえて多くを語らない紺師だったが、記者のしつこい追及に、とうとう折れた。
「私がこの予知を得たのは、今日とどいた一通の封書がきっかけでした。名前の漢字が微妙にまちがっていたのですが、ふしぎなことにとどいていました。その中味を読んだ瞬間、ハッとひらめくものがあったのです。それは、あるイメージです。二月ごろ書店に並ぶ本のひとつ……それを開いた私はそこになにかよろこばしい事実を発見するという一種の映像――ようするに未来視ですね。かなり鮮明なイメージでした。来週あたり私は封書の送り主に、同封のハガキを返信することになります。それにより未来が決定するとの確信があるのです。この予言は必ずや現実となるでしょう」
 われわれ取材班は紺師とかたい握手をかわして(前ページ右上の写真)精神力学研究所をあとにした。来年が人類にとってどんな年になるかは不明のままながら、少なくとも彼にとって「ちょっといいこと」が起きるにちがいない。

12月10日

(C) Eishi Kon, 2003



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