爆弾発言「米国公認会計士(USCPA)の地位と仕事」


はじめに

今、巷では米国公認会計士がブームとなっています。USCPAと 言っても知らない人はあまりいなくなりました。私が目指し始めた1994年にはUSCPAなどと言っても「あいつキチガイだ」なんて思われていたのですから恐ろしいものです。

ただUSCPAの知名度は高まっても依然として、USCPAの仕事内容、価値については日本で正しく理解されていないように思えます。そこで、アーサーアンダーセンのニューヨーク事務所の金融部門で働いていた私が、ずばりUSCPA の価値、仕事、キャリアについて書いてみます。

遠慮なしに、私の思っていることをズバズバ書いてあるので、「USCPAを目指しただ今勉強中という人」には悪影響が出ることが予想されます。 そんな方はこれから先を読まないことをお薦めします。




1. USCPA試験を合格したらビッグ5で働けるのか?

USCPA試験合格後どんなキャリアが待っているのか?疑問に思う人は多いのではないでしょうか。そこでこれから先に書いてみたいと思います。

まず最初に理解しなければならないことは、ビッグ5は程度の差はあれどこの事務所でも、その業界でやっていくだけの知識、経験がある人だけを雇うということです。これはビッグ5に新卒で入ろうと中途で入ろうと同じです。
ではビッグ5が欲しい人材というのは具体的に言うとどんな人材なのでしょうか?
欲しがられる人の条件を箇条書きにしてみました。

1.まず会計の知識がしっかりとある人です。
2.次にコミニュケーション能力が高い人です(特にAudit)。

これらの2つは必須スキルといってもよいでしょう。その他

3.英語能力がある人、過去に実務経験(業種は問わない)がある人
などが挙げられるでしょう。

では上の3つの欲しがられる人の条件を順に追って見てみましょう。 まず、上の「会計の知識がしっかりとしている人」。これにはどんな 人が当てはまるでしょうか? 日本の公認会計士(士補)、 USCPA試験をパスした人、日商簿記1級の合格者などが該当しそうです。 これらの中でビッグ5が最も欲しい人は誰かとズバリ言うと、日本の公認会計士(士補)です。まず、会計士2次試験を合格したということは、 例え実務経験がなかったとしても会計についての基本がみっちりできているということを意味します。会計に関する知識では文句なしでしょう。また、日本の会計士が欲しがられるその他の理由は、海外のビッグ5で実際に実務をする際、日本人ならば程度の差はあれ日系のクライアントを持つことになります。日系の クライアントを持つということは、日本人のクライアントと接することを意味し、そんな中で日本の公認会計士であったりすればクライアントからの信頼 が得られるからです。またアメリカの子会社であっても日本語の会計資料や 勘定科目を目にする機会もたまにあるので日本の会計を知っているとアメリカで実務をする上でも役に立つのです。

ではUSCPA試験の合格者はどうでしょうか? 残念ながら、USCPA試験を受かっているだけではビッグ5では雇われません。なぜならばUSCPA試験を受かってもそれは会計の知識がしっかりしていることの証明には ならないからです。会計だけの知識で言えば、日商簿記1級の人の方が恐らく 上でしょう。厳しい話をしますが、USCPA試験は、よっぽど馬鹿でない限り勉強すれば誰でも受かる試験です。事実、アンダーセンの日本人パートナーが「あんなのは誰でも受かる試験だ」と言っていました。やればいずれは誰でも受かる試験なのだから、 雇う側としては、日本の公認会計士・税理士などのプラスアルファの能力の方を 重視するのです。今、USCPAがブームの為か、前述のパートナーの所にも USCPA試験の合格証とともにレジュメが送られてくるらしいのですが、 「雇うにも雇えない」と苦笑いしていました。アメリカではビッグ5入社後はアメリカ人との競争を強いられます。他の事務所は知りませんが、少なくともAAではそうでした。そんな中で、アメリカ人と比べ語学にハンディがある日本人にとってアメリカ人と同等に勝負するには頭で勝負するしかありません。つまりUSCPA試験の問題を簡単と思えるくらいじゃないとアメリカでは通用しないのです。 ブームの中で誤解している人が多いように見えますが、USCPA試験はただの「通過点」にすぎません。ゴールではありません。このようにUSCPA試験を合格したことが直接ビッグ5での採用にはつながりませんが、ビッグ5によってカラーが大分異なるため、事務所によっては USCPA試験合格者を採用する所があるみたいなので、不可能ではありません(ただし、雇われた人はそれ以外のプラスアルファを持っているように思えますが…)。 あと参考までに、アメリカでは弁護士事務所であれ、会計事務所であれ採用時に CPA試験やBAR EXAMをパスしている必要は全くありません。働きながら合格するのが普通です。ここらへんはトム・クルーズ主演の「法律事務所」という映画を見ればよくわかるでしょう。

ではビッグ5で実際にどんな日本人が雇われているかといえば、大きく分けて 2種類にわかれ、一つが私のようなアメリカの大学(大学院)の留学者、もう一つが日本の提携監査法人から派遣されてきた日本の公認会計士です。これには、実力うんぬんの前に「ビザ」という技術的な問題もあるからです。アメリカで働くのはビザという問題があるため非常に困難です。アメリカで働きたくて面接を受けすぐ採用というわけにはいかないのです。これは留学をしたひとならよくわかることでしょう。まず、日本の公認会計士から話せば、日本の 監査法人で働いていたということは会計についての知識・経験があるということになり比較的簡単に「Lビザ」等のビザが降りることになります。
留学生は 学生のうちは働くことを禁じられている「F−1ビザ」ですが、学位をとれば プラクティカルトレーニングという最大1年の就労許可をもらうことができます。そのプラクティカルトレーニングを最初の1年使い、その後会社のサポートによって「H1−B」という就労ビザをとるのが一般的な方法です。 また、留学での勉強科目(メジャー)と関連ある会社でしか就労ビザが発行されない為、会計事務所で採用される(&欲しがられている)日本人は会計学専攻の留学生に限られます(MBAも一応ok)。

これらの条件を満たした人の中からまずGPA(平均成績)でふるいに落とされ、残った人が面接に招かれます。面接にくる人はすでに学力方面はパスしている人なので、面接では主に人物を見られます。上の、雇われる人物条件の2に書いたように「コミニュケーションスキル」は会計士にとっては非常に重要です。なぜならば、会計士の仕事は基本的に「営業」の仕事だからです。これはAUDITOR(監査人)については特にあてはまります。TAXの人は、クライアントのところに行く機会もあまりなく、ほとんどの時間をオフィスで過ごしていますが、監査の人はオフィスにいることはほとんどありません(マネージャーやパートナーになれば話は別ですが)。クライアントのところをぴょこぴょこと飛び回っているのが会計士の姿なのです。仕事上、クライアントからいろいろな資料をもらたり、質問ができなければ仕事になりません。暗い、人見知りするような性格の人では会計士の仕事は務まらないのです。そのため、面接でチェックされることは、英語力と共に、コミニュケーション能力、人と打ち解けられる能力があるかどうかなのです。

あと、3番目の条件「英語能力がある人、過去に実務経験がある人」はあれば尚可というもので1,2に比べたら重要な要素ではありません。
英語力のことですが、これはビッグ5によってかなり必要とされる英語力に開きがあります。最も英語力が要求される事務所はアーサーアンダーセンでしょう。AAは、雇った日本人を特に日本人として位置づけずアメリカ人と同様に扱うというファームポリシーのため、かなり高度な英語力が要求されます。そのため面接の時にアメリカ人と一緒に働けるであろう英語力がないと判断されれば容赦なく切られるので現実的には留学をしていた人でなければ採用はされないと思います(注:日本の会計士は別)。アーサーアンダーセン以外は程度の差はあれ、日本人には日本の仕事(つまり日系のクライアント)をしてもらうという考え方えをしているので、あまり英語力は要求されません。特に、 デロイトやKPMGは日本企業相手のビジネスを長年やっており、しっかりとした基盤が出来上がっているため、そこそこの英語力があれば大丈夫のような感じがします。(こんなことを書くと苦情が来るかもしれませんが、、)。よく、ビッグ5のどこの事務所、どこのローカルオフィスであれ、日本企業相手の仕事しかしていないという話を聞きますが、これは日本語を話せるという能力を会社の方が有効に活用しているということで、何も悲しむべきことではなくごくごく当たり前のことだと思います。私個人的は感想としては、日本企業だけでなくアメリカの会社も見ることによって色々な経験になったので、そういったチャンスを与えてくれたアーサーアンダーセンには非常に感謝をしています。

あと、実務経験ですが、これは全くと言って採用には関係ないでしょう。あればプラスといった程度です。会計士の卵として入ってくる人は、アメリカ人である何人であれ過去に実務経験がない人がほとんどです。ただ、実際に会計士として実際に実務をするにあたり、クライアントがどんなビジネスをしているのかなどをしっかり理解している必要があるので、実務経験は後に役に立ってくることは間違いありません。あと、一つ特記すべきことは、皮肉なことに実務経験ある人が会計事務所に入ってくると、大学卒業したばっかの下っ端の人達と、監査という非常に地味な仕事をします。会計士の仕事は世間一般で思われているほど面白く魅力的な仕事ではないので、過去に実務をつんだ人ほど会計士の仕事がすぐにつまらなく見えてしまうのです。それですぐに辞めることになります。(でもこれはいいことなんですよ、本当は。できる人ほどすぐに辞めていくのが会計士業界なのですから。)つまり会計士の仕事は、馬鹿には務まらないけど、一方で頭のキレル人にも務まらないということになりますか..(笑)





2. アメリカでの会計士の地位は?

まず最初に言いますが、USCPA試験を受かっただけでは本物の米国公認会計士にはなりません。日本ではこの点、見過ごされているのですが、日本の会計士と同様、USCPAになるためには実務経験が要求されています。中には、実務経験を要求していない州もありますが、それはどんな州だか皆さん考えたことがありますか? ビジネスが発達していないアメリカでも田舎の州なのです。実務経験がなくても正式な会計士にしている理由、おわかりいただけたでしょうか? そんな話はともかく、アメリカのビジネス実社会においては、USCPA試験をパスしただけで実務経験がない人は会計士として扱われません。ということで、ここでも「会計士とは、アメリカで実際に会計事務所に勤め監査業務をしている人である」と定義づけて話を進めることにします。

私がまだ日本で専門学校に通い、USCPA試験のための勉強をしていた頃、会計士はアメリカでは弁護士、医者とともに地位が高く非常にステイタスのある職業だと聞いていました。あれから5年経ち、ビッグ5のニューヨークで2年の実務をして知ったことは、それはとんでもない間違いだったということです。
正直言いましょう。アメリカでは会計士とは地位の低い職業です。地位の低い職業というのは語弊がありますが、「私は会計士です」と言うと、それは一流ではないことの証明になってしまいます。「一流の人間(つまり「できる人」)だったら会計士なんかやっていないだろ?」というのがアメリカ人の一般的な考え方です。これは何も一部のホワイトカラーだけに限らず、会計士に対するアメリカ人一般的な考え方のようです。つまりそれだけ会計士がどんなことをやっているのかよく知っているということなんですね。

皆さんの知り合いで恐らく監査法人に働く日本の公認会計士の人がいるでしょう。その人は監査業務について面白いと言っているでしょうか? 私はアメリカで監査業務をしましたが、アメリカであれ日本であれ、違う会計基準をベースに監査をしているだけで仕事内容は同じです。そういう意味では日本の会計士がどんなことをしているのかを理解することは、アメリカの会計士の仕事、しいては地位を理解する上で大きな手がかりになります。
一般的にアメリカで最も頭の良い(キレル)人は、ファイナンスを専攻します。アメリカを動かしているのはウォールストリートのインベストメントバンクで働く、ファイナンスを専攻した人々なのです。頭のキレル人、または野心に燃えた者は間違っても会計学などを専攻はしません。もちろん会計士というキャリアに進んだり興味を持ったりすることもありません。どうやらニューヨークでの2年の実務経験を通して感じたことは、会計士はファイナンスを理解する能力のない人、できない人というイメージがあるようです。これは、アメリカに行く前にもっていたUSCPAのイメージとはかけ離れていて大変ショックでした。
興味深い話の一つとして、私がサンフランシスコの大学でインベストメントというファイナンスの授業をとっていた時、たまたまそのクラスを教えていた教授と一緒に帰ることになり、これはいい機会と「僕は今年の秋からアーサーアンダーセンのニューヨーク事務所で会計士として働くことになているんだけど、ファイナンスがこれほど面白いものとは知らず、将来はファイナンスの分野で働きたいと考えている。会計事務所で経験を積んだ後、ファイナンスの方に移るチャンスはどれぐらいあるですか?」と尋ねてみた。すると、その教授は「君が本当にファイナンスの世界で働こうと思っているのなら、会計士事務所で働き、試験をパスし会計士という肩書きをつけることはマイナスになる。」と話してきた。 会計士になることがたとえプラスにならないことはあっても、マイナスになることはないであろうと、どうしてなのか理由を聞いてみた。すると教授曰く「世の中、すべて「評判」なんだ。もし君が会計事務所で経験を積み会計士となると、君は回りの人から会計士であると見られることになる。それは君のキャリアにとってマイナスになるんだ。」と答えた。その教授はUC BERKELEYでファイナンスのPh.Dを取った人で、今はコンサルタントとして働いていて夜にはMBAのクラスも教えている人だった。ファイナンスの業界については誰よりも詳しく知っている人のはずである。そんな彼のいう事だから嘘であるはずはないのだが、当時の私にはどうしても理解できない内容であったのを覚えている。しかし、あれから2年たった今、ニューヨークの金融部門で実務を積んた後、ようやくその時彼の言わんとしていたことを理解できたように感じている。

ビッグ5は人のどんどん辞めていく業界である。おそらくアメリカでの会計業界ほど人がどんどんすぐに辞めていく業界はないんじゃないだろうか(最初の2年で80%の人が辞める) 。辞めていく人を見送る中で気がついたのは、できると言われていた人ほど辞めてしまうということだった。できる人ほど会計士の仕事につまらなさを覚え、また転職先もすぐに見つけられるからであろう… 米国公認会計士の地位、そして仕事は、悲しいけれどこの程度なのである。



3. ビッグ5での経験を生かして将来どんなことができるのか?

会計士業界(特にビッグ5)は Turn-over(離職率)が極めて高い業界である。 2,3年経験するとこちらが見ていて驚くほどポンポンと辞めて行く。ボイスメールをチャックすると「今週の水曜日にはXXの Going-away Party(お別れ会)で、場所はXXの、、、」というメッセージが頻繁に入っている。それも、頭のキレルいい人ほど辞めてしまうのだからたまったものではない。あの人とは一緒に働きたかったのにぃと、惜しみながらメッセージを聞いたり、Partyに出るしかない。事実、ビッグ5の会計士事務所に長く残っている人ほど、「売れ残り」というかできない人であり、会計士事務所のパートナーたちもこの事実をよく認識している。2,3年目になると、ヘッドハンターからの電話が週に2,3回のペースでかかってきて(多い日には1日に2,3個のメッセージがある)、より良い給料・より面白い仕事を求めて去っていってしまう。ビッグ5で働くことはゴールでなく、あくまでも個人のキャリアのスタートにすぎない。良い人材をどうやって引き止めるかはビッグ5のパートナーが頭を悩めている問題なのである。

さて、ビッグ5を去った人達がどこに移るかについても少し書いてみたい。 彼らはクライアントに気に入られて引き抜かれたり、ヘッドハンターを利用して転職したりするが、どこに転職するかはその人がどんな経験を積んだかに大きく左右するので一概に言えない。ビッグ5は様々な業界のクライアントを持っている。製造業から、銀行、保険、不動産、テレコミニュケーション、アセットマネジメントなど挙げればきりがない。転職先は一言で言えば、「ビッグ5でどんなクライアントをもったか」によって決まります。製造業のクライアントしか持ったことない人が、投資銀行に行きたいと言ってもこれはなかなか難しい。何せ、経験がないのだから... この点、会計士(USCPA)であるというのは全く武器にはなりません。日本では恐らく話は違うでしょうが、アメリカでは会計士だなんて言っても、「あっそう」で終わってしまいます。だからアメリカの会計士が転職するにあたり採用側が評価した物は、会計士(USCPA)などという肩書き(資格)なのではなく、その人のビッグ5での経験とその人の人柄です。肩書き主義でなく、実力主義のアメリカでは転職の際も徹底して経験が求められます。

では具体的に、ビッグ5出身者がどんな会社のそんな仕事をしているのでしょう。これは上にも書いたように経験によるので一言では言えませんが、ニューヨークの金融部門を例にとって言えば、やはり金融関係の会社です(当たり前ですね)。大手インべストメントバンクとか銀行とか、保険会社だったりとか 資産運用会社だったりとか… で、転職先でどんな仕事をしているのでしょうか? これは非常にいい質問です。会計士といっても所詮会計士、転職がいくらヘッジファンド、投資銀行と言ってもやることは「経理」の仕事です。つまり、バックオフィスの仕事なのです。転職者の80、90%ぐらいはバックオフィス、うまくいってミドルオフィスの仕事です。これは会計事務所で働いた人の宿命でもあります。しかし、中にはフロントの方に移る人達もいます。しかしフロントに移った彼らは、頭もキレ、性格もよく、対人スキルにも優れ、 やる気のある人達のはずです。一握りのできる人達だけが、フロントの方に移るチャンスをもぎ取れるのです。まっ、採用側としても会計に詳しい人を経理部に置くのはごくごく当然のことですし、適材適所ということになりますか。




最後にビッグ5の会計士はどれくらいの給料をもらっているのか興味あるかもしれません。お答えしましょう。恐らく、アメリカで最も給料が高いであろうアーサーアンダーセンのニューヨークの金融部門を例にすると、1,2年目の新卒採用のアシスタントで45,000ドルくらい、3−6年目のシニアで大体 50,000-65,000ドル、マネジャーの1年目でも多くて80,000ドルだという話です。このように会計事務所は、日本人が思うほど給料はよくありません。これはニューヨークの金融部門の数字であり、他の都市ならばこれよりも低い数字となります。ビッグ5の離職率が高い理由の一つに給料もあるようです。ただ会計事務所の一つだけ魅力的なところはパートナーの給料がべらぼうに高いということです。マネーシャーからパートナーになるのは至難の技ですが、一端パートナーになったら日本企業の代取とは比べものにならないくらいの給料をもらえます。パートナーとは事務所の所有者ですから、まっ、当然と言えば当然ですが。このように考えますと、ビッグ5勤務者にとってベストなキャリアパスは「もしパートナーになる気がある人、もしくはそれだけの器量があると思う人は事務所にずっと残りパートナーを目指す。それ以外の人は2,3年で他の会社に移る」だと思います。 6、7年働いてマネージャーになってから移る方が、選択肢が多いなどと考えている人もいますが、これは誤りでマネージャーになればかなりの専門性がついてしまうため転職先もかなり絞られてしまいます。会計畑出身だということで経理の仕事をやらされるのは間違いないでしょう。ただし転職先の会社ではコントローラーになれる可能性はかなり高くなると考えられます。ただ本人がそれで満足するかは別問題ですが…





4. あとがき

以上、米国公認会計士(USCPA)について私がアメリカで体験し、見てきたままを遠慮なしに書きましたが、これを読んでショックを受けた人もいるかもしれません。ショックを受けるのは当然です。私もあなた同様、現実を見てショックを受けたのです。しかし、ここに書かれていることは事実であることには変わりはありません。その事実をどう受け止めるのかはあなた自身の問題なのです。

会計士とはアメリカでは地位の高くない職業だと書きましたが、一つだけビッグ5で働くことのメリットを挙げるとすれば、いろいろなクライアントを持つことによって多くのインダストリーで何が実際に起こっている(正確には起こって「いた」)のか、帳簿を通して理解することができる(正しくは理解するチャンスがある)ということです。会計士ほど、幅広い知識を得ることができる職業は他にはないでしょう。よく、「ビッグ5での1年の実務経験は他の会社での3年に相当する」と言われますが、それはまさにこういう事であり、それはまぎれもない事実だと私は思っています。アメリカで会計士の地位が高くない中、ビッグ5で働きたいと思っている人が未だにいるのは、そういった幅広い知識・経験を求め、将来それらを生かしてさらなる上の道を目指そうとしている人がいるからであります。アメリカでは会計士の仕事をずっとやろうなんて思ってビッグ5に入ってきている人はほとんどいません。みんな数年後経験をつんだらどっかに移ろうと思って入ってきているのです。ビッグ5で働くことはゴールではなく、あくまでも Starting Point なのです。そういった意味ではビッグ5での経験は限りない可能性を持っていると言えるかもしれません。(ただし、ここで理解して欲しいのは、将来武器になるのはあくまでのビッグ5での「経験」であって、会計士という「肩書き」ではありません。)

  最後に、いろいろな経験をさせてくれたアーサーアンダーセンのニューヨーク事務所に感謝して、筆を置きたいと思います。


1999年11月16日


メインに戻る


Counter activated on Dec 1, 1999