>>TOP

悪夢!? 月欲香 (導入部のみ)






(注意)
 本編は大人向けですが、ここに載せている分はとりあえずお子様も読めます。









 自室(居候部屋)で暇を持て余しているのは、おさげの少年。早乙女乱馬である。あぐらをかき、抱えたゴミ箱の上でパチンパチンと爪を切っている。
 そこへ、開けっ放しのふすまから大きな蚤みたいな八宝斎が飛び入ってきた。
「乱馬ー。ええもん見せてやろうか」
「あん?」
 乱馬は手をとめずに爪を切っている。
「なーんちゃって、みせてやらんもんね〜♪ 新しいえっちな本じゃ♪」
 八宝斎はしわだらけの顔を本に寄せてほお擦りしている。
「誰がんなもん見たがるか」
 乱馬は表情を変えずに爪きりを続けた。
 自慢したいのか、八宝斎はその場に寝そべると本の封を破き、鼻歌をくちずさみながら開いた。だがすぐに鼻歌はやみ、数分して舌打ちしはじめた。
「なんじゃ、ちぃとも面白くないのう。ハズレじゃハズレ!」
 ハズレ、とは本のことらしい。八宝斎は本を畳に投げ捨てたまま部屋を出て行った。
 爪を切り終えた乱馬は、爪きりを居間へ返しに行こうとして、八宝斎の本が開かれているのを見た。片付けようと思ったが、八宝斎のところに届けてやるのも癪だ。
 …。
 乱馬はふすまを閉め、座って本を手にとった。少しくらいいいだろう。どうハズレなのか見てやろう。
 乱馬はパラパラとページをくった。八宝斎がよく眺めている写真集の類とは違うようだ。字が多い。ところどころに男女の絡み合う挿絵が入っていて、乱馬は挿絵のあるページになると心もち本をせばめた。マニュアル本のようである。
 性経験の浅い男子を対象にした、女性の扱い方の本らしい。八宝斎の好みの本でないわけだ。
 乱馬は知らない間に真面目になって読んでいた。水をかぶると女になる特殊体質のおかげで、そこらの男子高校生よりは女のことを知っているつもりだったが、正確なセックスの作法は知らなかった。
 女の子のパンティーを脱がせるタイミングについて、文字を追っているところへ、いきなり、ふすまが開いた。
 ぐわらっ
 あかねだった。
「ねー乱馬。英語の宿題の範囲…」
 本は乱馬の両手を右往左往し、わたわたと宙を舞った。
「? なにしてんの?」
「なっ、なんでもねえよ。わはは」
 なんとか背中に隠すことが出来た。
「何か隠したでしょ。あやしー」
 はやくどっか行け、という乱馬の祈りもむなしく、あかねはその場にひざをついた。
 乱馬は背中を畳にすりつけるような、自分でも奇妙な動きで後退すると、少年サンデーやら教科書やらが散乱している辺りまでたどり着いた。
「さあーっ! 宿題宿題っ」
 サンデー類を巻き上げるような動きでごっちゃにすると、その中に八宝斎の本をすべりこませた。それらを部屋の隅においやりつつ教科書をさぐりあて、すばやく開いた。
「変なの…」
 あかねは数秒乱馬を見ていたが、特別探る風もなく、
「英語の宿題の範囲教えてよ」
「範囲? えーと、…おれ、英語は寝てたから」
「宿題やるんじゃなかったの」
 あかねはあきらめて立った。「あんた、教科書の上下が逆よ」
 そういい残して出て行った。
 乱馬は息をつくと、手の甲で汗を拭う動作をする。
「危ないところだったぜ」
 また廊下から足音がした。あかねが戻ってきたのかと思ったが、そうではなかった。八宝斎だ。
「らーんま、乱馬!」
 ハズレの本を買った不機嫌からは立ち直ったようだ。右手にバケツ、左手に何か陶器のびんのようなものを持っている。
「ちょっと女になってくりー♪」
「嫌だっ。また妙なことたくらんでんだろ」
 乱馬はいつでも戦えるよう、立ち上がった。
「人聞きが悪いのう。言うこと聞いてくれんなら、わしにも考えがあるぞ」
 八宝斎は背を向けて茶の間のほうへ走り出した。
「あかねちゃぁ〜ん! 乱馬がわしからえっちな本を取り上げとるんじゃ!」
「てめーが勝手に置いてったんだろ!」
 実際その本を読んでいただけに、乱馬は必死で八宝斎を黙らせようと追いかけた。
「と油断させておいてっ」
 と八宝斎は逆走してきて、すばやい動きで陶器の中に火をともした。うっすら煙が立ち昇った。
「くらえ、月欲香!」
「早乙女流月欲香返しっ」
 乱馬は息をとめ、うちわで扇いだ。
 香の煙は八宝斎を超え、茶の間の方へ流れていく。
 茶の間からひょっこりあかねが顔を出した。
「なに騒いでんの?」
 乱馬は「あっ」と叫んだが遅かった。
 煙はあかねの頭部を包み、あかねはそれを吸い込んだようだ。
「なんということじゃ。乱馬ではなくあかねちゃんが、満月の夜、わしの思うままにっ」
 八宝斎はあかねに抱きつこうとしたが、あかねは高く足を上げて八宝斎を蹴り飛ばした。
「何のこっちゃいっ」
 あかねと乱馬は、八宝斎が遠く隣町まで飛んでいくのを見ていた。
「お前、なんともないのか?」
「うん。別に」
 あかねはグーを握ってみせた。
「じじいの失敗作かな」





 その件はそれで終わったかに見えた。しかし、そう甘くはなかったのである。次の満月の夜、八宝斎はパンスト太郎によって日本海に捨てられていた。下着泥棒がこの家に入ったはずだ、といきなり怒鳴り込んでくる女性も減って、天道家は比較的平和な夜をすごせるようになっていた。
 乱馬は歯を磨き終え、自室に戻る途中でふと空を見あげた。丸い月だった。
 そういえばじじいが、満月の夜にどうとか言ってたな。
 あれからあかねは普通に過ごしている。満月の夜だからって何か起こるとは思えないが、一応、声をかけておこう。乱馬は二階へあがって行った。
 天道家の二階は奥からかすみ、なびき、あかねの部屋になっている。今日はなびきが友達の家に泊まりに行っている。それだけで精神的にずいぶん静かに感じた。あかねに部屋に向かう自分の足音もよく聞こえた。ノックする。
 コン コン
「あかね、いるか?」
 内側で布がすれるような物音がして、間があった。弱いあかねの声が聞こえた。
「乱馬。…いま、だめっ…は…入ってこないで」
 あかねの声がいつもと違う。
「どうしたんだ? おいっ」
 さっきよりさらに小さな声で、
「お願い…どっか行って…」
「あかね、今日満月だって知ってるか? じじいが前、言ってたろ。月欲香がどうたらって」
「…大丈夫だから」
「とにかく、開けるぞ!」
 ドアを開けると、真っ暗だった。窓から満月が見えた。まだ11時だというのに部屋の灯りは消されている。ベッドがこんもり盛り上がっていて、あかねが入っているのがわかる。
「大丈夫か?」
 さっきのあかねの力ない声が気になって、乱馬はベッドのそばに寄った。あかねはもぞもぞと掛け布団を引き上げて頭までかぶった。ふっと甘酸っぱい匂いがした。何の匂いだろう?
「熱でもあんのか?」
 乱馬はあかねの掛け布団をはぐのをためらった。相手があかねとはいえ、この時刻、勝手に女の部屋に入って布団をとるのはためらわれた。
「顔、みせろよ」
 はぁっ、とため息のような息づかいがして、布団の下からそろそろとあかねが顔を見せた。
 あかねは眉を寄せ、困ったような、何かいいたげな顔をしている。
 乱馬は手を伸ばし、あかねの額に当てた。少し熱い。
「やっぱ、熱あんじゃねえのか」
 あかねは一瞬乱馬の手を払いのけようとしたが、のけた乱馬の手をそのまま握った。あかねの手は熱い。乱馬はどきりとした。
「あのね…怒らないでね」
 ゆっくり上半身を起こした。
「な、なんだよ」
「頼めるの、乱馬しかいなくて」
 あかねはうつむいた。
「あ、あのお香、なんか、…変な気分…になるやつだったみたい」
「うん?」
「乱馬、あたしと…その…するの、嫌?」
 何を? と聞こうとしたら、あかねは握っていた乱馬の手を、パジャマの上から、自分の胸に押し当てた。布越しに柔らかい肉の感触。乱馬は驚いて手を引こうとしたが、あかねは強い力でとどめた。次の瞬間、乱馬に抱きついた。
「なんとかしてぇ…」
「なっ、なっなっなっなっ」
 何とかって、何を? ―――そこまでとぼけることはできなかった。





 この先エロです。恥ずかしいのでここにはのせません。
要望があったので読めるようにします。
○×△□(昔使ってたアドレス)へメールくだされば、
自動返信ですぐさま小説が送られてきます。携帯には対応していません。


2003/7/9から9/29間で公開終了しました。

 

とりあえずおわり

>>TOP