笑月

 

 

 うっすらと月が笑っている。冷たくて優しい夜だった。

 いつものように,彼女は広場へやってきた。

 ここはこの街で一番月の光がよくあたる場所だ。ここで踊るのが,彼女は好きだった。

 月光を浴びて耳をすます。旋律を感じた瞬間に彼女のからだが動き出した。

 無音の世界に純白が舞う。ただ無心に,音と向き合う。その,一瞬。

 

 ふと。

 視線を感じた。

 冷たいくせに優しい。まるで,今しも沈もうとしているあの,笑う月のように。

 

────誰。

 

 動きを止め,広場を見わたす。瞬間,痛いほどの静寂が満ちる。と,かすかな旋律が耳に触れた。

 彼女の目が和んだ。

 ゴミの山の陰から,大きな影が近づいてきた。ゆっくりと歩み寄り,手をさしのべる。

 知った顔だ。大きな体と鮮やかな黄色の毛並みを持ちながら,彼の持つ音はまったくひそやかなものだった。古代の哲学者の名にふさわしく,穏やかな気配の猫だ。そのくせ,時にその銀灰色の瞳がするどくきらめくとぞくりとするほど危険な雰囲気になった。

 鋼の旋律。その,まとう空気。

 笑う月に,よく似ていた。彼女の唇に微笑が浮かぶ。

 

────今日もまた,月がおりてきたの?

 

 ふわりとその手をとる。ふたり,舞いはじめた。

 

 

 

 不思議な気分だった。他の誰とも違う感覚。

 

 ずっとこうして踊っていたい。

 けれど,今すぐ逃げてしまいたい。

 

 目を上げて,視線がからむと一瞬で外された。さもなければ,自分から外してしまった。

 相手もそうだと,その目でわかった。

 

 

 

 やがてふたりの手が離れる。

 今度はまっすぐ,彼の目を見つめた。鼓動だけが静かに響く。

 銀色が流れて彼の目がそらされる。その姿がそのまま闇に溶けた。淡い金の目がそのあとを追う。

 

────捕まった。

 

 それがわかった。

 彼の目に。鋼の旋律に。

 月が,笑いながら沈もうとしていた。

 

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四季のアンサンブルマキャ,どうみても犯罪王とは別猫だと思うので勝手にプラトーと呼んでいます。

彼とヴィクがはじめて踊った時のイメージ。

なんですが全然言葉に出来てないです(泣)。

要精進。 

 

ヴィクって基本的に,一緒に踊る人が好きな人だろうと思ってます。

というか,感情表現が言葉じゃなくてしぐさや踊りにあらわれていそうな気が。

…訳わからん事を並べてすみません(汗)。

 

 

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