想月

 

 

 十三夜の月が,教会の十字架にかかっていた。

 ねぐらにした廃屋の屋根の上で,カッサンドラはじっと月を見上げた。銀の月光が街を見下ろしている。見守るように,微笑むように。

 ―――と。

 

「!?」

 

 後ろから強く抱きしめられた。相手の顔に,上がりかけた声を呑み込む。ひどく真面目な顔をしていた。

 

「…どうしたの?」

「消えるかと,思った」

 

 応える顔に,いつもの笑みはない。腕をかかえて,頬を寄せると抱きしめる力が少し弛んだ。

 

 

*               *               *

 

 十三夜の月に照らされて,黒茶の毛並みが銀に輝く。そのまま空に舞い上がってしまいそうだった。

 いつか聞いた東の国の昔話を思い出す。月から下りてきた娘はいつか月へ帰る。天の娘は天に帰る。ならば,月に呼ばれて来たものもまた,いつか月に呼ばれて去るのだろうか。

 

 

「月が呼んでたから」

 

 初めて会ったとき,彼女はそう言ったのだ。

 

 

 ダウンタウンの暗い路地を,たったひとりで歩いていた子猫。成猫でもこんな真夜中に進んで出歩くようなものはいない。

 半ば気まぐれで声をかけてみた。どこへ行くのかと。

 

「…わからない」

 

 それが彼女の答えだった。

 ならば何故,こんなところへと,そうたずねると彼女は言った。月に呼ばれたのだと。

 

 

 ―――行ってしまうだろうか。彼女も,また。

 そう思ったら,思わず手をのばしていた。

 

 

 

 

「…どこへも行くな」

 

 彼女の耳元にささやく。

 

「行かせない」

 

 誓うように。祈るように。

 腕の中で,彼女が瞳をとじる。そのまま彼に身を預けてきた。

 

「…離さないで」

 

 返る言葉は,二人だけの約束。

 

     ―――ずっとあなたのそばにいる。

 

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タンブルとカッサンドラの話です。

舞台だといつも視線をからませてるこの2人が大好きなので…。

しかしこの2人の間にはお月さまでも入れないでしょう。

っていうかこの2人が離れたりするもんかい。

らぶらぶって難しいです。

…何か妙に恥ずかしいし…。

東の昔話に関しては多分ギルあたりが情報源。

さもなきゃスキンブルでしょうか,知ってそうなのは。

 

 

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